新人セラピスト(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士)とリハビリ学生を応援するためのブログ

空間の表象~自己と空間~

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私達は、自分の身体に対して意識しなくても指先がどこにあるか、足先がどこにあるかというのは見なくても分かると思います。

これは、「身体図式」により構築された身体の表象であり、赤ちゃんの時から時間をかけて構築されているため、私達は巧みな運動や華麗な動きが出来るのです。

 

また、それに加えて正常であればこの「身体図式」を基準に、自己の身体の表象がきちんと成されている場合それは自分の身体にとどまらず、空間に波及します。

 

これを「空間の表象」と言ったりします。

今日は、この空間の表象について少しお話ししていこうと思います。

 

空間の表象

空間の表象とは

空間の表象には二段階あって

手を伸ばして届く距離までの空間の表象:近位空間(peripersonal space)
近位空間より遠位における空間の表象:遠位空間(extrapersonal space)

とされています。

 

ちょっとよくわからないと思う方は、例えばよく

「私のパーソナルスペースに入ってこないで。」

などといった言葉を聞いたことはないでしょうか?

 

これが、まさに上記の言葉を説明してくれるようなもので、ヒトは自分のパーソナルスペースに他者が侵入すると不快感を覚えます。

 

というのは心理学ではパーソナルスペースの事を

「他人に侵害されたくない自分の空間、縄張り」の事を意味するからです。

 

最近はこういったパーソナルスペースを利用して、好意を持った相手がどのくらい自分に近い距離にいるかや、相手と話す適切な距離といったように恋愛心理学などに応用されてきていますよね。

 

また、皆さんは「ハンターハンター」という漫画はご存知でしょうか?

 

見たことがある人は分かると思うのですが、ハンターハンターの念能力の一つに「円」と言われるものがありますよね。

 

あれはまさに、自分のパーソナルスペースを意図的に広げることが出来るぶっとんだ技です。

 

この後話しますが、パーソナルスペースは本来無意識化で構築されていくものなので、意図して広げるなんてすごすぎますね(笑)

 

話しが脱線してすみません(笑)

近位空間(peripersonal space)とその役割

では少し話を戻しますが、空間の表象の中でも今回は近位空間(peripersonal space)についてお話ししようと思うのですが、そもそも近位空間(peripersonal spac)とは一体何でしょうか。

 

一般的には近位空間は「手を伸ばして届く距離」とされています。

 

例えば、私達は物や人にあふれた狭い空間であってもそれらにぶつからずに通り抜けることができますよね?

 

これは、一見単純に見えますが神経科学で考えると結構すごいことだなと僕は思うのですが

というのも、周囲の空間(手を伸ばして届く距離)には体性感覚の受容器なんて存在していませんよね?

にもかかわらず、見てもいないのに自己に対して周囲の物に対して寸分違わずきれいにぶつからずに通行できるからです。

 

時々、机の角で小趾をぶつけたなんて話を聞きますが、あれは近位空間(peripersonal space)に解離がある良い例です。

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近位空間(peripersonal space)の構築

ではこの近位空間は一体どのように構築されるのでしょうか。

 

近位空間の構築は冒頭で述べた通り、「身体図式」を元にして構築されます。

 

この時重要なこととしては

空間内の表象は網膜(視覚)による座標ではなく、身体(体性感覚)座標で構築されるということです。

 

つまり、自己身体に対しての感覚の重みづけを視覚優位ではなくやはり体性感覚にベースを置くことがとても大事になってくるということなんです。

 

臨床における空間表象の障害

これらを踏まえて少し臨床における患者様を考えてみたいのですが

例えば、車椅子を自走したり歩行を行っている患者様がやたら片方を物にぶつけたり、距離がスレスレで通っている方を見かけたことはないでしょうか?

 

脳卒中患者様だと、こういった場合

「半側空間無視がある」

「注意障害がある」

 

といった解釈を安易にされがちですが、しかし検査バッテリーで評価をしてもそれらを確定づける結果が出ない・・・

 

そのような場合、実は脳卒中によって自己身体の図式が変容し、それに伴って自己身体周辺におけるperipersonal spaceが変質してしまった可能性があり、その結果周囲の物との関係性が保てないためにぶつかったり、やたら距離が近かったりといった現象が生じるのではないかと考えています。

 

そのためこのような場合の訓練は、麻痺側に注意を向けましょうなんて言う訓練ではなく、感覚の統合訓練を行っていき、自己身体の再組織化を図っていくような手続きが必要なのではないかと思います。

 

パーソナルスペースに不快感のある症例

 

以上で、空間の表象における話を終わろうと思うのですが、今日なぜこのようなお話しをしたかというと、今日のリハビリでこの空間の表象に対して大きく影響を及ぼしていた患者様を拝見したからです。

 

その患者様は右片麻痺で痙性麻痺が著明な方でした。

 

この患者様に自己身体について問うと、

「右半分の身体はつくりものつくりものみたいな感じ。」

「目を閉じると半分消えてしまうから怖い。」

 

などといったことが聞かれ、その後に空間に対して問うと

 

「左側はなんとなく安心するけど、右側は別世界な感じ。

なんだか常に右側は高速道路の真横にいて車が猛スピードで走っているような気がして怖い。あと、崖になっている感じもするかも・・・」

 

と言ったような事を言われました。

 

また、この患者様は入院直後よりなぜか右から話しかけられることを嫌っており、前はそれがなぜなのか分からなかったのですが、このように空間に対しての不快感が極度に強いためにこういったことがあったのではないかと今日少し理解できた気がしました。

 

今日の出来事をふまえ改めて、私達が当たり前のように感じているこの世界観は患者様とは全く違うのだということを再認識しました。

 

私達が不快と感じない接し方、態度、言葉遣いも患者様にとってみたらすごく嫌な感じがしてるかもしれません。

 

それを理解するためにはやはり知識が必要です。

だから私達は惜しまず勉強し少しでも患者様の生きる世界に寄り添う姿勢が必要なのかなと感じました。

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