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『エビデンス』の正しい使い方を考える

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きんたろー
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『エビデンス』の正しい使い方を考える

エビデンスとは

Evidence based medicine:EBM

エビデンスとは、『根拠』という意味であり私達セラピストがリハビリテーション分野で用いる際には『科学的に根拠のある評価やアプローチ方法』というような意味で主に用いられます。

 

【理学療法介入の推奨グレード】

理学療法ガイドライン第一版より引用

 

よって、多くのリハビリテーションセラピストは出来るだけエビデンスの高い方法を実施していくことが推奨されており、特にSNSを中心に現在こういった声が大きくなってきています。

観察~治療に至るまでの流れ

さて、次に臨床の中でエビデンスをどのように活用していくかというのを考えていきたいと思います。

 

以下にリハビリテーションを行う際の、観察から治療に至るまでのプロセスを図式化してみました。

 

 

まず、①にあるように最初に行うのは、対象者を観察し症状などありのままの“現象”を把握することです。この時大切なのは、“事実”をきちんと把握し、自分の解釈は含まないことです。

 

なぜならば、この段階で自身の解釈を混同させてしまうと、事実が歪みバイアスがかかってしまうことが多くなるからです。

 

そして、その次に行うのが『病態解釈』です。これは様々な現象が生じている原因を論文等を用いながら、メカニズムを考えます。(②)

 

この①と②の過程を踏むことによって、導き出されるものが『仮説』です。

 

仮説を導き出すと、次の“検証(治療)”のステップに進んで行くわけですが、実はこの仮説を導き出す過程こそが『臨床推論(③)』であると僕は考えています。

 

そして、導き出された仮説を何らかの方法を用いて検証していくのですが、その際に用いる方法というのが『治療法』であり、今回のテーマでもある『エビデンス』といったものはこれに該当します。(④)

 

つまり、エビデンスがある方法論というのは、本来この過程を経て意思決定されていきます。

 

以上が観察から治療に至るまでの過程ですが、このように本来臨床を進めていく上では①→④の順序に沿って思考し、最終的に『何が最も最適か』という形で方法論の意思決定がなされるべきではないかと僕は考えています。

 

ところが、いまリハビリテーションにおける治療方法の意思決定の行い方に時折疑問を感じることがあります。(もちろん一部です)

 

それは、このような臨床推論のシステムモデルが破綻し現象からそのまま方法論(エビデンス)に意思決定がなされていることです。(①から②.③を経由せず④へ)

 

 

つまり、どのような患者様がきても、『とりあえず○○』というように、何かの方法論(エビデンス)ありきでリハビリテーションを実施するということが起きているのではないかと感じています。

エビデンスを用いる際の誤った解釈

では、方法論ありきで臨床を展開することの何がまずいのか。

 

それは、いわゆる病態を解釈せずに方法論を意思決定をしてしまうと、個別性に対応出来ないからです。

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例えるならば、いくら性能の良い刀があったとしても、切る対象が硬い石であればその効果は発揮できません。

 

同様に、治療すべき対象がどのような病態であるかを見極めなくては、いくらエビデンスの高い主義手法を用いたとしても通用しないのではないかということです。

 

よく、SNSなんかを見ていると『エビデンスあるの?』とか『エビデンスのある治療をしなさい』といった内容を頻繁に見かけます。

 

この言葉自体はなんら問題はないですが、“エビデンスが高いから良い治療法である”と解釈してしまうのは少しマズいです。

 

なぜならば、先程述べたように疾患は同じでもその中にある病態は対象者によって異なるからです。

 

だからこそ、『この疾患にはこの治療』というような思考が癖になっていると、改善した場合は良いですが、仮に改善しなかったとなると、思考がフリーズし次に何をすれば良いか分からなくなることがあります。(考える癖がついていないから)

 

ただ、もっと言うなら以前Twitterにこのような内容を書きましたが、仮に改善したとしてもその根拠が示せないというのは問題なので、やはり治療に至るまでの過程のロジックは持っておく必要があると思います。

 

さて、『現象から推論の過程を踏まず方法論に飛びつく』という話しをここまでしてきましたが、具体例を出すとしたら例えばこんな感じです。

 

✅脳卒中に促通反復療法(グレードB)

✅脳卒中には装具療法(グレードA)

 

脳卒中に対する方法論として装具や促通反復療法はエビデンスのグレードとしては高い評価をされていますが、ここで考えなければならないのは、全ての脳卒中患者にこれらの方法論が著効するのか?という問いです。

 

前提として押さえておきたい事として、今話していることは決して方法論が悪いという話しではありません。

 

考えていただきたいのは、どのような解釈を経てこの方法論に至ったのかというところです。

 

方法論の選択というのは究極、入念な病態解釈を行った結果最も適している方法を選択すれば良いと僕は思っています。

 

こう考えると、エビデンス云々や手技手法の各団体がお互いを罵りあっている場合ではないのです。

 

対象者に『何をやるか』ではなく、『何が最も適しているか』です。

 

だからこそ、方法を意思決定する場合に私達が自分自身に問いかけなければならないこととして

 

Q.なぜ『装具療法』を選択したのか

Q.なぜ『電気刺激療法』を選択したのか

Q.なぜ『反復促通療法』を選択したのか

 

と、選択した方法論に対するこのような『問い』に明確に答えられなければならないと思います。

おわりに

今回、エビデンスの正しい使い方というテーマでお話ししてきましたが、今一度確認しておきたいことは、僕自身エビデンスを否定するつもりは全くありません。

 

より高いエビデンスを用いることは対象者の回復に大きく貢献する事は科学的に証明されているからです。

 

しかし、私たちがリハビリテーションを実施する対象者というのは人です。

 

人である以上、疾患が同じだとしても個別性というのは必ず存在しているため、病態は個々で異なります。

 

だからこそ、エビデンスの高い方法論に飛びつく前に、そこに至るまでの解釈をきちんと分析する必要があると思っています。

 

逆にいえば病態が万人共通でない以上、疾患別の方法論が一元化されていいわけがありません。

 

『やりたいこと』ではなく、『やるべきこと』を対象者に提供出来るようにするために、きちんと②と③のステップを吟味する思考力(考える力)が今の私たちには必要ではないかと思っています。

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