さてさて、2018年度もいよいよ始まろうとしており今年からPTとして一年目を迎える方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
一方で、PTの養成校の最高学年になる方々も多くいらっしゃり、いよいよ秋くらいは“就職”も考えなければなりません。
そこで今日は、今後自分が働く職場を一体どのような基準の元考えるのか。
はたまた、これから理学療法士という職業はどのような未来が待っているのか。
こういった部分をお話しし、そしてこれから就職を探す方や、理学療法士の今の現状と将来を少し知っていただければと思います。
※あくまでも僕の主観です。ご了承ください。
理学療法士の今の現状と将来像
増えすぎる理学療法士
さていきなりですが日本の1年間で、理学療法士ってどのくらい輩出されてるか分かりますか?
答え. 約10000人です。
※今年度の合格総数:9885人
おそらくこれからも毎年この人数が理学療法士になると思われます。
※むしろ、現在理学療法士の養成校はどんどん創られていて、そのうちこの人数も大きく超える人数がさらに出てくる事は容易に想像できますね。
さらに言えば、日本に理学療法士が初めて誕生した時の人数が183人。
それから約10年間で2000名弱まで増えています。
この世代の先輩方がそろそろ定年を迎えられてくるのに対し、新しく出てくる理学療法士は毎年10000人となると、完全に出ていく人数と入ってくる人数の割合が合わない。
といったようなことが今の現状です。
その結果、PTの総数は増えていく一方で、病院の数というのはこんなに急激に増えていくなんてことはありません。
そうすると、「医療保険」の分野だけではPTの働き口がなくなっちゃうわけです。
だから、ここ数年でどういう対策をPT協会がとったかっていうと、「介護保険」の分野に職域を広げたわけです。
そのため今は、PTが「訪問介護事業」や「リハ特化型デイサービス」を立ち上げるなんて話しはすごく多いですよね。
どれも「介護保険」の分野の仕事になります。
診療報酬と理学療法士
これから、超高齢化社会になってセラピストが必要になってくるのは間違いないです。
ただ、必要だからって多過ぎるセラピストに均等に高いお金を国が私達にくれると思いますか?
それでなくても国のお金は沢山分配しないといけないとなると、医療ばかりに財源を振り分けてたら国は破産します。となるとそもそもの「医療保険のお金を下げるしかない」ということになるんですね。
これからも診療報酬改訂が行われますが、はっきり言って確実に理学療法士の給料が上がることはないと思います。
もう一点。
診療報酬が下がる理由があります。
それが「専門性」です。
先ほど、増えすぎるPTに国はお金を与えられない。といいましたが、それでもPTにしかできない仕事というのが確立していれば、こんなことにはならないのだと思うんです。
しかし現在、多く言われているのが
「理学療法士にしかできないかなその仕事?」
ということなんです。要は「専門性」を強く問われているんです。
当たり前ですが、多くの人が
これは理学療法士にしか出来ない!
と思ってくれなければ、専門性なんてものはありませんし、誰でもできる仕事に高い収入を与えますなんてことはまず出来ないですよね。
ロボット産業の進出によってより問われる専門性
今、ロボット産業ってどのくらい発達してるか皆さんご存知ですか?
最近だと、将棋のプロ棋士をコンピュータが倒したなどの話がありますね。
あとリハビリ業界でいうと筋電義手やHALなど現在ロボットリハビリはトピックスとしても上がってきています。
僕が個人的に思うことなのですが
今後いつ来るかは分かりませんが、ロボットが理学療法士の代わりになる日が来るんじゃないかと思っています。
既に、片麻痺の機能再建にはロボットスーツHALや筋電義手など、これらは汎用し始めています。
そのうえ今後、急性期から転倒を必ず防げるロボットなんかがもし出始めたらどうなるでしょうか。
現在、専門性がうやむやになってる理学療法士が果たして生きていけるでしょうか。
僕は将来、ロボットのコンピュータ制御のためのスイッチを押す係に理学療法士がなっているところが鮮明にイメージでき、非現実とは思いません。
「理学療法士にしかできないこと」
これを見つけ出さない限り、私たちの生活は苦しくなる一方です。
回復期病院における機能回復の限界
最後に、これから就職先を選んでいく上で、一つ僕が最もこれからきちんと考えなければならないなと思うことがあります。
皆さんも就職を選ぶ際に、一度は先生や先輩から
「まずは回復期病院に行ってた方がいいよ」
「とりあえず回復期は機能回復に一番携われるから、そこら辺で考えなさい」
「生活期や維持期は難しいからまずは回復期がいいよ」
といわれたことはないでしょうか。
これについて、僕は少し疑問を感じています。というのは
回復期が機能回復病院として機能していたのはもう昔の事だからです。
昔は、特に入院期間などの縛りも緩くとことん機能回復をしていくといった風潮があったので、回復期病院は最も機能を見れる施設。
といった印象でした。
しかし実際のところ、現在はその考え方はもう無くなってきているのが現状です。
FIMアウトカム評価の開始
その理由としては、2017年度より回復期病院に導入された「FIMアウトカム評価」が関係しています。
2017年度はこのFIMアウトカム指数の運動項目が27点を下回らないこと。
というのが全国の回復期病院の「良い病院」としての判定基準でした。
しかし、今回の診療報酬の改訂でこのアウトカムの点数が37点に引き上がることになりました。
これが何を意味しているか分かりますか?
運動項目の点数が上がるということは、それだけ動作遂行能力を上げなければならない。
ということで、病院全体としては動作遂行能力が上がるよう頑張りましょう!
と、一見聞こえはいいですが実は1つ落とし穴があって、動作遂行能力が上がれば良いので、そこに質に対しては重きが置かれていないんです。
要は脳血管の回復期病棟であれば片麻痺患者様が、どんだけぶん回しで歩いていようが、どんだけ廃用手になろうが、非麻痺側でどうにか動作遂行能力が保てており、尚且つFIMの点数が上がればそれでOKなんです。
地域包括ケアシステムの存在
現在、日本の医療の形としては
「回復期を早期に退院させて、地域で包括的に患者様を見ていこう」
という風になっていて、それにより病院での在院日数というのは極端に短くなり、退院後の生活の中で、継続してリハビリしていきましょうね。
といった方針になっています。
今回、FIMの運動項目の点数が37点に引き上がるということは、とにかく早く1人でトイレが出来て、1人で歩いて、1人で着替えが出来てといったように、量を重視するため、セラピスト自体も機能回復というよりも、少し代償出ても出来る様にしましょうね。
といった考え方になっているのが現状です。
機能回復を目指したいならどこにすればいいの?
僕は、今後本当の意味で機能回復に携わりたいのであれば介護分野または外来&クリニックだと思います。
というのは、回復期で入院していた患者様というのは、これからどんどん在院日数がこれから短くなっていくので、退院後のリハビリというのはほぼ間違いなく必要です。
そのため、老健やリハ特化型デイサービス、訪問リハ、外来施設といった所では、回復期でまだまだやり残している人というのが溢れるほどいます。
むしろ、片麻痺患者様であれば回復期の1番大事な時期に、むりやり難易度の高い動作遂行を要求されるので、片麻痺のパターンをつくって退院する人が多いです。
※病院によって違いがあるとは思いますが…
そのため、それからの機能回復というのは、退院後の施設に委託されるので、凄くその施設でのリハビリテーションというのは重要になってきます。
最後に
いかがでしたでしょうか。
あくまで僕の主観ではありますが、間違いなく言えることは、入院期間というのはこれから100%短くなってきます。
それは超高齢社会が進んでいる国なので、早期退院を図っていかなければ、沢山の入院待ちの患者様がいるからです。
これらが進んだ時、益々私たちの専門性は強く問われます。
そして追い討ちをかけるようにロボット産業も身近に来ています。
言ってみれば、前からも後からも攻められてる状態です。
そんな中で私たち理学療法士は戦っていかなければならないわけです。
さて、いま危機感を持つ人が果たしてどのくらいいるでしょうか。
おそらくまだ少ないと思います。
なぜなら、大多数の人が「誰かがなんとかしてくれる」「大丈夫だろう」
と考えているからです。
世の中どうしてもマイノリティよりもマジョリティな方に傾いてしまう傾向があり、大丈夫だろうと考えてる人が多いと、全体としてやはり危機感は薄れます。
これからの理学療法士の職域を守っていくのは、PT協会の偉い人ではありません。
私たちです。
どうにかこの大きな波を超えて、自分の仕事に誇りを持て、さらに沢山の人に知ってもらえる認知度の高い職業にしていこうではありませんか。