【研究】運動イメージとfunkutional reach testを用いた転倒リスクの評価

きんたろー
こんにちわ!きんたろーブログ(@kintaroblog)です

 

『転倒』

 

これは、多くのリハビリテーションセラピストが意識し、かつ防ぎたい1つのテーマではないでしょうか。

 

そして、そのために日々何らかの評価ツールを用いて、転倒リスクを数値化し、そこから得られるデータを活用してリハビリテーションの内容に落とし込んでいるのではないかと思います。

 

『何らかの評価ツール』と書きましたが、転倒に関する評価ツールは多岐にわたっており、例えばその1つに『functional reach test(以下:FRT)』というものがあります。

 

この評価は、立位で前方へリーチできる最大距離を測ることによって、支持基底面の中でどれだけ姿勢制御を行うことができるかという『立位バランス能力』を評価するテストです。

 

この評価にはカットオフ値が定められており、15.2㎝(理学療法診療ガイドラインより)といわれています。

 

そのため、多くのセラピストの皆さんはこのカットオフ値をボーダーラインとし、転倒リスク軽減の指標の1つにされているのではないでしょうか。

 

ところが、実際にはこのカットオフ値を上回っている人でも転倒するという報告が多々あり、カットオフ値を超えているからといって『転倒しない』とは言えないのが現状となっています。

 

では、カットオフ値を超えているにも関わらず、転倒してしまう原因って一体なんでしょうか。

 

恐らく、これもまた多岐に渡ると思いますが、今回はその要因の1つになるであろう『運動イメージと運動機能の解離』という側面から、この転倒リスクについて論じていきたいと思います。

 

目次

運動イメージとfunkutional reach testを用いた転倒リスクの評価

 

はじめに、今回この記事を書くにあたり参考にさせていただいた論文はこちらです。

『脳内イメージと運動評価における誤差の考察~ファンクショナルリーチテストに予測値を加えた取り組み~.山中雄大』

 

では、まずこの論文の『はじめに』の部分で述べられている一文をご紹介させてください。

 

転倒時の様子を経験者やそのご家族から聴取すると、「届くと思っていたが届かなかった」という声が聞かれる

 

『届くと思っていたが届かなかった』

 

果たして、これは何を意味しているのか。

 

今回の転倒リスクに関する論点というのは、この発言の原因が何なのかということです。

 

それでは、実際の研究報告を見ながらこの原因を探っていきましょう。

 

研究概要

 

✔16名の男女(男性7名、女性9名)

✔過去の転倒経験の有無によって、転倒群と非転倒群に分ける(転倒群10名、非転倒群6名)

対象者16名のFRTの予測値実測値を測定した。

予測値:FRTを行う前に実施。目視にて対象者が判断する限界距離の位置を本人にイメージしてもらい口頭で確認する。

実測値:実際のERTを実施

予測=実測 予測>実測 予測<実測
転倒群 0名 6名 4名
非転倒群 4名 0名 2名

転倒群では、予測値が実測値を上回る

 

この研究のポイントとしては、FRTの実測値のみではなく、予測値と実測値の誤差に注目した点です。

 

なぜ、予測値と実測値に注目したのか。

 

それは仮説として、カットオフ値を上回っているが、転倒が生じている原因の一つに、運動の予測(運動イメージ)である予測値と実際の運動(実測値)に解離が生じているのではないかと考えたからです。

 

そこで、転倒歴のある人と転倒歴のない人の運動イメージ(予測値)と実際のFRT(実測値)を測定することによって、その要因が本当であるかを検証しました。

 

これを踏まえて結果をみてみると、非転倒群では、予測値と実測値が同等、もしくは予測値の方が実測値に比べて低いのに対し、転倒群ではやはり多くの人が、予測値が実測値を上回る結果となっています。

 

つまり仮説の通り、転倒群においては運動イメージと実際の運動に解離が見られ、なおかつ自身の運動能力を過大認知していることが明らかになりました。

 

その結果、「届くと思ったのに届かなかった」、つまり『イメージは出来ていたが、実際にはできなかった』という現象が生じてしまうのです。

 

まとめ

 

今回伝えたいメッセージは、FRTという運動の結果だけを観察するのではなく、その発現に至るまでの過程である運動イメージ(予測)や、その予測と実際の運動の誤差というのも評価することによって、その方の転倒リスクの程度を予想する1つの指標になるという点です。

 

これまで、運動機能に関する評価というのは最終的に表出されたアウトカムのみが点数化され、カットオフ値が定められていました。

 

しかし、FRTのようにカットオフ値は超えているが、転倒するケースがある様に、出されたアウトカムが安全圏だからと、リスクがないとは限りません。

 

そのような時に、表出されたアウトカムに加え、本人の『予測』といった部分も考慮して評価するのも1つ重要な視点であると思います。

 

また今回は、FRTと運動イメージの関連性をご紹介しましたが、その他にもTUGや10m歩行と運動イメージの関連性についても論文が発表されているので、もしよければこちらもご覧になってみてください。

 

※こちらにリンクを貼っておきます。

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