【10m歩行テスト入門】リハビリテーションの基本評価ツールをマスターしよう

理学療法の現場でよく用いられる評価の一つ『10m歩行テスト』は、対象者の歩行速度を測定するシンプルで効果的な方法です。

この記事では、10m歩行の理論的背景や実施方法、結果の解釈について詳しく解説します。

目次

【10m歩行テスト入門】リハビリテーションの基本評価ツールをマスターしよう

はじめに

10m歩行テストの目的と重要性

10m歩行テストは、対象者の歩行速度を評価するための簡便な方法です。

海外の研究(主にランダム化比較試験やシステマティック・レビュー)を見ると歩行速度の評価は、ほとんどと言って良いほど10m歩行が採用されていることから、高齢者や脳卒中患者などのリハビリテーションにおける重要なアウトカムの一つとなっています。

先生

『歩行距離』だと6分間歩行テストが採用されていることが多いの

この記事でカバーする内容

この記事では、10m歩行テストの理論的根拠、実施方法、結果の解釈について詳しく解説します。

10m歩行テストの基本知識

何を測定するのか?

10m歩行テストは、対象者の方が10mの距離を歩くのに要する時間を測定します。

これにより歩行速度が算出され、対象者の歩行能力を評価することができます。

先生

まぁ、そんな深く考えることはないの。

どのような患者に適用されるのか?

10m歩行テストは、脳卒中をはじめとする神経疾患はもちろん、整形外科疾患、廃用症候群など、さまざまな疾患や状態の患者様に対して適用できます。(Graham,2008)

他の歩行テストとの違い

『歩行テスト』という括りで見ると、10m歩行テスト以外にも幾つかあります。

6分間歩行テスト

このテストは、対象者が6分間で歩ける最大距離を測定します。よって『歩行速度』というよりは、主に心肺機能や持久力の評価に使われます。

Timed Up and Go Test:TUG

このテストでは、対象者が椅子から立ち上がり、3メートル先の目印を回って元の椅子に戻って座るまでの時間を測定します。

これにより、歩行速度はもちろん、そのほかバランス能力や立ち上がり能力なども評価することが可能です。

この評価方法も使用頻度が高い評価の一つです。

Dynamic gait index(DGI)

Dynamic gait index(DGI)は、歩行中に速度や方向の変化、上下左右への視線移動、障害物回避などを要求する8つの課題から構成され、各課題時に生じた変化に対する修正能力や適応能力を観察に基づき得点化し評価するものです。(inoue,2012)

10m歩行テストの実施方法

必要な道具と設備

ストップウォッチと直線で10m歩ける空間があればどこでもできます。
※平地に限る

歩くコースは、開始地点と終了地点が明確になるように設定し、対象者の方が歩くスペースに障害物などがないか確認しておきましょう。

対象者への説明と指示

対象者の方には、10m歩行テストの目的と手順を説明し、ご自身の通常の歩行速度で歩くパターンとできる限り速く歩くパターン、2回計測することを指示します。

測定方法と注意点

ストップウォッチを使って、対象者が開始地点から終了地点まで歩くのに要する時間を測定します。

測定は2回(通常歩行と最速歩行)行います。

また、10m歩行テストを行っていく上で注意点として頭に入れておきたいことは『転倒』です。

特に速く歩いてもらう際は、足がもつれたりバランスを崩しやすく転倒に繋がってしまう可能性があるため必要であれば近位監視を行い、可能な限り転倒リスクを減らしましょう。

10m歩行テストの結果の解釈

カットオフ値

回復期脳卒中患者を対象とした歩行自立度のカットオフ値
  • 10m 歩行:12.2 秒

歩行自立に必要な歩行能力とバランス能力の関係.中村ら,2015

回復期脳卒中患者様においては、10mの距離を約12秒以内に歩ければ大方歩行が自立できるというふうに解釈することができます。

高齢入院患者を対象とした歩行自立度のカットオフ値
(平均年齢:77歳)

“最大歩行速度が速いほど独歩自立例は多く、歩行速度が1.20m/sec以上では全例が独歩自立していた。一方で最大歩行速度が1.20m/secを下回る場合、歩行速度の低下にしたがって独歩自立例の割合が減少した。”

  • →1.20m/secは10mに換算すると『8.33秒』となる

カットオフ値:9.63秒(感度85.7%,特異度96.0%)

高齢入院患者における最大歩行速度と独歩自立の関係.加嶋ら,2017

何らか基礎疾患を抱えた高齢者の場合は、10mを約9〜10秒で歩けるというのが一つのボーダーラインになってくるようです。

10m歩行テストと相関関係にある評価

10m歩行テストはいくつか別の評価方法と相関関係があるとされており、以下はその代表的な評価です。

  1. Berg Balance Scale:BBS
  2. 下肢筋力
  3. Timed Up and Go Test:TUG
  4. functional reach test:FRT

10m歩行まとめ

10m歩行テストは、リハビリテーション業界で広く使われる歩行速度の評価ツールです。

テスト自体は簡単で、ストップウォッチと(直線で)10m歩ける空間さえあればどこでも実施可能です。

歩行速度は、高齢者の運動機能低下リスクや歩行の自立度を評価するための重要な指標となることから、適切な手順に従って実施し正確な結果を得ることで、リハビリテーションの進捗や効果を評価することができます。

また、その他の身体機能評価とも相関があり総合的な運動機能の把握に役立つので、ぜひ日々の臨床に活用して頂けたらと思います。

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参考文献

1)Assessing walking speed in clinical research: a systematic review.Graham,2008

2)脳卒中患者のDynamic gait indexによる 二重課題処理能力評価の妥当性の検証.井上ら,2012

3)高齢入院患者における最大歩行速度と独歩自立の関係.加嶋ら,2017

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