前回までは2回にわたり、診療報酬シリーズをお届けしてきました。
今回は、その第三弾ということでこれがラストになります。
どうぞ、最後までご覧ください!
第3回となった今回のテーマは…
『訪問看護ステーションにおける理学療法士の働き方』です。
なぜ、今回の部分にスポットを当てたかというと…
以前から、訪問看護ステーションにおける理学療法士の働き方に様々な問題(後述します)が浮上していたのですが、今回(2020年)の診療報酬改定でついにそれら問題にメスが入ったからです。
リハビリテーションセラピストにとっては結構注目度の高い案件だったんじゃないかなと思い、今回このテーマにしました。
【分かりやすい診療報酬制度③】訪問看護ステーションにおける理学療法士の働き方
さて、先ほども述べましたが以前からこの訪問看護ステーションにおける理学療法士の働き方についてはらちらほら問題が挙がっていました。
どの様な問題が浮上していたのか。まずは、それを以下で述べていきますね。
①訪問看護ステーションにPTが多すぎる問題
これまでの訪問看護STにおける理学療法士の働き方の争点となっていた一番の問題はこれです。
昨年(2019年)、中医協が発表した内容によると、『現在、訪問看護ステーションであるにも関わらず実際は理学療法士の割合が多すぎる施設が増加している』ということが分かりました。
要は、『訪問看護ステーションではなく、実質的にはただの訪問リハビリテーションなんじゃない?』というわけです。
また、理学療法士が8割以上占めている訪問看護ステーションが存在しており、結果それらの施設では『24時間対応体制加算の届け出割合が少ない』という現状があることも指摘されました。
これは言い換えると、PTが8割を超える施設はあえて重症度の低い患者を選択することによって24時間対応をしていないと見ることもでき、これは果たして健全な姿なの?という問題提議がなされました。
中医協とは、厚生労働省の央社会保険医療協議会の事で診療報酬改定に携わっている組織である。
②理学療法士の介入が多すぎる問題
さてこれは前提ですが、訪問看護というのは原則週3回までと決まっています。
ところが、それには例外があって“医師から指示を受けている医療や看護の必要性がある人”に限っては週4回以上実施できるのです。
しかも、週4日以上からは算定できる点数が上がるという条件付きです。
ただ、この制度によって判明したのがこれ。
医療ニーズがそこまで高くない患者にリハ職が繰り返しサービスに入る事例がある
引用サイト:https://www.joint-kaigo.com/articles/2020-01-30.html
詳しく説明すると…
看護師とリハ職における週4日目以降の訪問看護の内容を比較すると、リハ職が行った訪問看護の方が、『医療的な関りが必要とされる患者(褥瘡、カテーテル、末期がん等)』への介入割合が少ないということが分かったのです。
これらの問題に対し中医協は、今回の診療報酬改定によって、訪問看護ステーションにおけるリハビリ職の働き方に大きく制限を設けました。
訪問看護ステーションにおける診療報酬改定内容(一部抜粋)
では、ここからはこれまで述べた課題に対して行われた改訂内容をお伝えします。
①訪問看護ステーションにおける看護師の割合を6割以上に
これまで、訪問看護ステーションにおける看護師の人員基準は2.5人でした。
ところが今回の改訂によって、訪問看護ステーションの看護師の割合は6割以上必要となりました。(機能強化型訪問看護療養費1.2.3において)
これは、看護師以外の職種が増えすぎることを防止する意図があるのではないかと思います。
②週4日以降の介入において看護師とリハ職では得られる点数に差がつく
続いては、“週4日以降医療ニーズの高くない患者へリハ職が訪問看護を行っている実情がある”という問題です。
この問題のポイントとして挙げられるのが、実は以前の制度において、週4日以降に看護師もしくはリハ職が訪問看護を行ったとしても両者とも同じ点数が算定できたというのがあります。
今回の改訂で大きく変わるのはこの部分で、週4日目から訪問看護を行う場合、看護師とリハ職では点数に差が付けられることになりました。
これは事実上、週4日目からリハ職が訪問看護を行うと減算させられるということです。
でも、これって正直どっちが行ったかなんて誰も見てないしばれないんじゃないの…?
実は、それが通用しないんです。
なぜなら、今回の改訂によって、看護師もしくはリハ職どちらが介入したかを明記するという決まりになったからです。
なので、誤魔化しは効きません。
終わりに
さて、以上が『訪問看護ステーションにおける今後の理学療法士の働き方』になります。
ちょっと前まで、理学療法士が訪問看護ステーションを立ち上げるというのが少しブームになっていただけに、今回の指摘に当てはまる施設は大きな痛手となりそうです。
診療報酬に関するオススメ書籍
医療業界は、飲食やアパレルなど一般的なサービス形態とは異なり、「このサービスは一つ何円」というように患者様に直接請求するわけではありません。
そこで、重要となってくるのがこの診療報酬シリーズでお話ししてきた診療報酬制度です。
診療報酬制度によって、MRIは何点…点滴は何点…脳卒中のリハビリは何点…という感じでそれぞれ点数化されているわけですが、実はこのそれぞれの点数を一覧で調べることが可能な書籍というものがあります。
それが、診療点数早見表という書籍です。
この書籍を見れば、どの医療サービスが何点か(いくらか)サクッと調べることができるので、自分自身もしくはその他の医療行為が一体どのくらいの価値を生み出しているのかを知りたい方は、ぜひ手に取ってみてください!
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