『バイアス(思考の偏り)』
これは、臨床を行っていると必ず誰しも(一度と言わず)経験するものだと思います。
バイアス?なんだそれ?
平たくいうと、『臨床推論を行う際に真実を歪ませてしまう要因になる偏った思考のこと』これがバイアスです。
『バイアス』という言葉だけ聞いてピンとこない方でも、実際の例などを知ると「あー!ある!」と多分なるんじゃないかと思います。
それほどまでに臨床におけるバイアスの存在って身近なものなんです。
ちなみに、臨床においてバイアスが発生した時どのような問題が生じるのか?
というと、一番よくあるケースは『自分の興味関心のある分野に思考が引っ張られる』ですね。
その結果、「患者様に必要なリハビリテーションではなく、自分のやりたいリハビリテーションが展開される」そんな状況になってしまうわけです。
ほら、何となく「あぁ…あるかも」と思ってきたんじゃないですか?
というわけで、今回は『臨床でよく生じがちなバイアス』についてご紹介していきます。
最も良くある例は4つあるんですが、全部を一気に話していくとかなり長くなっちゃうので、今回から4回に分けて解説していきたいと思います。
この記事で紹介するのは『早まった一般化』と言われるバイアスの一つを紹介します。
正直、今回分含めこれから紹介する代表的なバイアスは、僕自身もまだまだ当てはまる部分があります。
ただ、大事なのは「知っていること」そしてその上で「意識すること」であり、『バイアスがかかっている自分』に気づく事ができると自分自身の臨床に真摯に向き合うことができるので、ぜひこの機会に触れていただけると嬉しいです。
【バイアスシリーズ①】早まった一般化によって推論が偏る人っているよね
『早まった一般化』とは
『早まった一般化』とは、「少ないサンプルにも関わらず、それがまるで一般的かのように結論づけること」です。
実例があった方がしっくりくると思うので、一つ例を挙げると…
みなさん、ちょっと前に元プロ野球選手の清原和博さんが日ハムの新庄監督に対してYouTubeで色々言って炎上してたの覚えてますか?
で、何があったかまぁ簡単に要約すると、新庄監督の身なりに対して清原氏が苦言を呈したと。
具体的には、YouTube内で「(新庄監督の身なりに対して)OBはみんな嫌な気分になっている」と述べていたんですね。
これが、まさに早まった一般化の典型例です。
というのも、もし清原氏が多くのOBにリサーチしてその上で「OBの大半は新庄監督の身なりを嫌がっている」という事実があったのだとすればこの主張は何ら問題ありません。
ただ、この時自分自身が新庄監督を批判したいがために「OBみんな」というまるでその主張が大衆の声であるかのようにいっちゃうと、これは論理が大きく飛躍してしまうんですね。
つまり、少数の声がまるで一般的であるかのように振舞っちゃったわけです。
臨床でよくある『早まった一般化』
じゃあ、これを踏まえた上でリハビリテーションの臨床現場において良くある『早まった一般化』について触れていこうと思います。
臨床でよくある早まった一般化はこういうケースです。
- 療法士Aさんは腰痛の患者様を担当しました
- その患者様は『ハムストリングスが硬い』という事実がありました
- 療法士Aさんは後輩に対して「〇〇くん、腰痛の患者さんって“全員”ハムストリングスが硬いから、しっかりストレッチすると良くなるよ。」と言いました
さて、これ『早まった一般化』であることがわかりますか?
要は、療法士Aさんは1人の腰痛患者様から『ハムストリングスが硬い』という事実を見つけたまでは良かったのですが、問題はその次ですね。
事実はn=1にも関わらず、解釈が『全員』にすり替わっちゃってるんですね。
臨床において、“その患者様は”ハムストリングスが硬かったかもしれないが、必ずしもそれが全ての腰痛患者様に当てはまるとは限りません。
このように少ないサンプル情報にも関わらず、それがまるで一般的であるかのように解釈してしまうと、次回以降の腰痛患者様を見るときにそれがバイアスになり、本来見るべき視点(病態)に抜け漏れが生じるのです。
『早まった一般化』を防ぐ方法
では、このような『早まった一般化』はどのようにすれば防ぐことができるのか?
それは、「きちんと事実(ファクト)を抑える癖をつける」です。
病態解釈を行う際に『早まった一般化』に陥りやすい人の傾向として…
まだまだ少ない情報しか手元にない、もしくは限られた部分しか評価していないにも関わらず、それだけでまるでその患者様の病態の特徴を網羅した気になっているところです。
そうすると、「この疾患の人はこうなってるものだろう」という思い込みが入った状態で患者様を見るようになるので、本来見るべきファクトを見落としてしまう。もしくは目に入っているが異なった解釈をしてしまうことがあるわけです。
だからこそ、推論を行っていく上で大事なこと。
それは、「変な思い込みを捨てて、目の前の患者さんのファクト(事実)情報を拾う」ここを強く意識すると、患者様特有の個別性に問題があることが見えてきたりするので、一般化できない状態であることが理解できてくると思います。
『早まった一般化』まとめ
それでは、本日のまとめに入ります。
- 『早まった一般化』とは、少ないサンプルにも関わらずそれがまるで一般的かのように結論づけることである。
- 『早まった一般化』のバイアスがかかりやすい人の特徴は、1人の患者様に見られた病態が全ての患者様に当てはまるという強い思い込みを持っている場合がある。
- 『早まった一般化』を防ぐためには、「思い込みを捨て、目の前で生じているファクト(事実)情報を丁寧に拾う癖を身につける。」事が大切である。
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