さて本日は、「オステオパシーの効果をちゃんと科学的に検証してみようぜシリーズ」でございます。
オステオパシーにも色々種類がありますがそんな中、今回検証していくのは『頭蓋仙骨療法(クラニオセイクラルセラピー)』です。
これは、あくまで僕の肌感ですが、最近『頭蓋仙骨療法』を用いている人がめちゃめちゃ多いなと感じています。
周りを見渡すと誰かしら頭部に対して介入している、そんな光景を見かけます。
多くの人が用いる手技だからこそ、きっちりその効果については抑えておく必要があると思いますので、この記事では科学的にオステオパシーを紐解いていきます!
慢性疼痛に対する頭蓋仙骨療法の効果を検証してみた
この研究は、2016年に行われた頭蓋仙骨療法に対するシステマティック・レビューになります。
頭蓋仙骨療法に対するシステマティック・レビューってかなりレアといいますか、ほとんどないのでこれはとても貴重な論文です。
ご興味ある方は、ぜひ上記から原著の方もご覧ください。
医療制度にオステオパシーを導入するには、安全性、有効性、品質保証について、証拠に基づく証明が必要です。これらの基準を達成するためには診断の方法が信頼でき、提案された治療法が有効であることが示されていなければならない。(Guillaud A,2016)
【頭蓋仙骨療法のレビュー】検証内容がこちら
今回の研究で調べられたテーマは大きく2つです。
- 診断プロセスの信頼性に関して
- 診断プロセスで用いられるテクニックや治療戦略の臨床的有効性
この2点に関して、調べた結果を述べていきたいと思います。
頭蓋仙骨療法の信頼性について
結論から言うと、頭蓋仙骨療法を実施する検査者間の信頼性は現状ありません。
理由としては、頭蓋仙骨療法の方法論云々よりも、その研究方法に大きな誤りがあったからです。
その一つが、参加者グループを盲検化していないということですね。
盲検化とは、「臨床試験における検査者が、参加者がどの治療群に割り当てられたかを把握できなくするための処理」です。
要は、結果にバイアスが含まれないようにするための手続きですね。
実は、この盲検化の問題は以前書いた『内臓ステオパシーの信頼性と効果』のところでも課題として挙がっていました。
つまり、今回のシステマティック・レビューにおいても、バイアスリスクの高さと言うのが信頼性の欠如を加速していたという結果になったのです。
頭蓋仙骨療法の効果について
こちらも結論から言うと…現状、頭蓋仙骨療法の効果はあるとはいえません。
理由は、先ほど同様研究手法に誤りがあるからです。
具体的に言うと、今回14件の研究がレビューの対象となったのですが、そのうちバイアスリスクが低かったのは3件のみで、残り11件はバイアスリスクが高かったりという問題が見つかりました。
なお、今回バイアスリスクが高かったポイントとして主にひっかかったのは以下4点です。
- 主要な評価基準が存在していなかったこと
- 結果に対する臨床的解釈が欠如していたこと
- 頭蓋仙骨療法と比較する方法が設定されていなかったこと
- アウトカムが主観的なものだけだったこと
【結論】頭蓋仙骨療法のエビデンスは現状ない
以上の結果から、『慢性疼痛に対する頭蓋仙骨療法の信頼性やその効果』に関するエビデンスは現状ないことが明らかになりました。
これまでも何度かオステオパシー関連のエビデンスについて言及してきましたが、総じて言えるのは…
「研究デザインがもう少し」と言うことです。
比較対象が設けられて無かったり、対象者グループが盲検化されてなかったりとバイアスリスクが高い研究がそこそこ多いのが現状です。
よって、今後はこの辺りの研究デザインが整えられた状態でデータが積み上がっていけば、結果も変わってくるのではないかと思います。
今後の研究結果を待ちたいところですね。
参考文献とオステオパシーに関するオススメ書籍
1)Reliability of Diagnosis and Clinical Efficacy of Cranial Osteopathy: A Systematic Review.Guillaud A,2016
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