【評価用紙あり】変形性膝関節症患者のQOL評価であるJapan Knee Osteoarthritis Measure(JKOM)を徹底解説

近年、痛みのリハビリテーションを進めていく上で、“痛みそのもの”に加えて、対象者の社会背景や生活の質(Quality of life:QOL)にも着目することの重要性が高まってきています。

その理由としては、多くの療法士が改善させたいその『痛み』自体が、単純な侵害刺激によるもので形作られているとは限らないからです。

これは、痛みの3つの側面で説明できるのですが、痛みは単に「この部位がこれくらい痛い」と感じる感覚的側面だけではなく、情動認知的側面といった要素に修飾されるんですね。

そのため、痛身を伴う患者様の評価を行う際はその強度を評価するNumerical Rating Scale:NRSVisual Analogue Scale:VAS、痛みの質を評価するマクギル疼痛疼痛質問表:SF-MPQ-2だけでは足りないのです。(これらは必要とした前提で)

そこで今回は、疾患特異的なQOL評価をのうち膝関節疾患のQOL評価にフォーカスした『日本版膝関節症機能評価尺度Measure Osteoarthritis Knee Japanese:JKOM』をご紹介していきます。

目次

【評価用紙あり】変形性膝関節症患者のQOL評価であるJapan Knee Osteoarthritis Measure(JKOM)を徹底解説

Measure Osteoarthritis Knee Japanese:JKOMとは

Measure Osteoarthritis Knee Japanese:JKOMは日本版膝関節症機能評価尺度という名前の通り開発は国内で行われています。

この評価は、主に変形性膝関節症患者のためにつくられた患者立脚型QOL評価法です。

ちなみに、理学療法ガイドラインにてJKOMは推奨グレードがAとなっており、その妥当性や信頼性が認められている評価スケールとなっています。

一般的なQOL評価スケールじゃダメな理由

包括的なQOLの評価方法として、おそらく国内で最も活用されているのがSF-36ではないかと思います。

ただ、SF-36は質問項目が全部で36項目とかなり多く回答に時間を要してしまうというデメリットがあります。

その点、疾患特異的な評価であればその病態に特化した質問に変えられたり、質問の量も限られるのでこうしたデメリットを改善することができるんです。

ちなみに補足ですが…

股関節もしくは膝関節の特異的なQOL評価として、Western Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Index:WOMACという欧米で作られた評価方法があります。

セラピスト

え、なになにあるじゃん。疾患特異的なQOL評価法。JKOMじゃなくてこれ使えばよくない?

と、思うじゃないですか?

ただ、日本と欧米では当然生活様式が異なる部分があって、その国の文化や価値観の要素が強い『生活の質』を評価する上では日本人の生活様式に適応したQOL評価が必要だったんですね。

だからこそJKOMは国内で作成され、かつ変形性膝関節症特化型のQOL評価方法となっているわけです。

JKOMの評価詳細

JKOMは大きく4つの項目にいついて問う質問紙評価です。

  1. 膝の痛みの程度
  2. 膝の痛みやこわばり
  3. 日常生活の状態
  4. 普段の活動など

まず最初に、この数日間の痛みの程度を「痛みなし」から,「これまでに経験した最も激しい痛み」の範囲である10cmの線上にチェックした後、膝の痛みとこわばり、日常生活の状態や健康状態について自記式で回答していきます。

JKOMは全5段階で回答するようになっていて、1(痛みがまったくない,困難がないなど)が最も良く、5(ひどく痛い,非常に困難など)が最も悪いスコアとなります。

加えて、JKOMの評価項目は全25項目(5点×25項目)なので125点が最も悪い状態を指します。

JKOMの評価項目一覧

それでは、以下にJKOMの評価項目を一覧で示します。評価用紙のダウンロードページは評価一覧の下にございます。

設問Ⅰは「膝の痛みの強さ」を表記するものなので割愛します

設問Ⅱ
この数日間のあなたの膝の状態についてお聞きします。以下の質問について、当てはまる回答を1つ選び、数字に○をつけてください。(全て5段階評価)

  1. この数日間、朝、起きて動き出す時に膝がこわばりますか。
  2. この数日間、朝、起きて動き出す時に膝が痛みますか。
  3. この数日間、夜間、睡眠中に膝が痛くて目が覚めることがありますか。
  4. この数日間、平らなところを歩くとき膝が痛みますか。
  5. この数日間、階段を昇る時に膝が痛みますか。
  6. この数日間、階段を下りる時に膝が痛みますか。
  7. この数日間、しゃがみこみや立ち上がりの時に膝が痛みますか。
  8. この数日間、ずっと立っているとき膝が痛みますか。

設問III 
この数日間のあなたの日常生活の状態についてお聞きします。(全て5段階評価)

  1. この数日間、階段の昇り降りはどの程度困難ですか。
  2. この数日間、しゃがみこみや立ち上がりはどの程度困難ですか。
  3. この数日間、洋式トイレからの立ち上がりはどの程度困難ですか。
  4. この数日間、ズボン、スカート、パンツなどの着替えはどの程度困難ですか。
  5. この数日間、靴下をはいたり脱いだりすることはどの程度困難ですか。
  6. この数日間、平らなところを休まずにどれくらい歩けますか。
  7. この数日間、杖を使っていますか。
  8. この数日間、日用品などの買い物はどの程度困難ですか。
  9. この数日間、簡単な家事(食卓の後片付けや部屋の整理など)はどの程度困難ですか。
  10. この数日間、負担のかかる家事(掃除機の使用、布団の上げ下ろしなど)はどの程度困難ですか。

設問IV
この1カ月、あなたのふだんしていることや外出などについてお聞きします。(全て5段階評価)

  1. この1カ月、催し物やデパートなどにはいきましたか。
  2. この1カ月、膝の痛みのため、ふだんしていること(おけいこごと、お友達とのつきあいなど)が困難でしたか。
  3. この1カ月、膝の痛みのため、ふだんしていること(おけいこごと、お友達とのつきあいなど)を制限しましたか。
  4. この1カ月、膝の痛みのため、近所への外出をあきらめたことがありますか。
  5. この1カ月、膝の痛みのため、遠くへの外出をあきらめたことがありますか。

設問V
この1カ月のあなたの健康状態についてお聞きします。(全て5段階評価)

  1. この1カ月、ご自分の健康状態は人並みに良いと思いますか。
  2. この1カ月、膝の状態はあなたの健康状態に悪く影響していると思いますか。

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きんたろー

主に『臨床推論』と『痛み』、『脳卒中』に関する内容について講義してるよー!

参考文献

1) 日本版膝関節症機能評価尺度を用いた両側同時TKA患者のQOL評価.神田ら,2012

2) 一般社団法人日本運動器学会ホームページ.関連情報欄

3) 厚生労働省.膝の状態についての質問表

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