この記事では、痛み(特に慢性腰痛)に対するリハビリテーションを進めていく上で必ず抑えておきたいポイントについて解説しています。
日々痛みを伴う患者様のリハビリテーションないしは施術に携わっている一定数のセラピストの皆さんにとっては、価値観がガラッと変わる話しになっているかもしれないので、ぜひ最後までご覧ください。
【2023年版】慢性腰痛の病態解釈を再考する
従来の慢性腰痛に対するリハビリの考え
これまで、慢性腰痛に対するリハビリテーションといえば皆さんはどういったものが思い浮かびますか?
人によって思い浮かぶものは様々だと思いますが、一旦ここでは僕の独断と偏見で列挙させていただきますね。
ひとまず、僕が実習生の頃からここ最近まで頻繁にみかけた介入方法がこちら。
- ストレッチ(9割ハムストリングス)
- 徒手療法(AKA、SJF、脊椎マニュピレーション、筋膜リリース…etc)
- 体幹トレーニング(腹式呼吸、プランク…etc)
どうでしょう、なんとなくピンときますか?
で、ここで抑えておきたいのはこの3つの共通点なんです。
あるんです、共通点。それはもうギッチギチに共通していてそれは何かというと…
身体の物理的側面のみしか考慮されていないという点です。
いつもこういう話しをすると
どうせまた情動とか認知的側面の話しばっかりするんだろ?もうええて。
と、ご指摘頂くような気がするんですが…
まーーーーーーー、そうですね。おっしゃる通りです。
ただし、ここで勘違いして頂きたくないのは、身体の物理的側面への介入が「まじでセンスない」って言いたいわけじゃないんです。
「“そこだけ”に振り切った介入に問題あるかもね。だってその他の要素あるじゃない?」
と伝えたいわけです。
“他の要素”って何なの?
ここでいう他の要素とは、痛みの3つの側面がその代表例ですね。
先ほど少し出ましたが、3つの側面とは『感覚的側面』、『情動的側面』、『認知的側面』から構成されていて、痛みというのはこの3つが複雑に絡み合った状態で病態が作られているケースがほとんどです。(慢性化すればするほど)
“複雑に絡み合った”というのが非常に大切で、臨床において「この人は感覚的側面だけが問題だ!」や、「この人は情動的側面だけが問題だ!」というように病態が完全に切り離されているケースはむしろ稀です。
少なからずこれにはグラデーションがあるケースが多いので、だからこそ臨床において痛みを伴っている患者様のリハビリテーションを行っていく際は、この3つの要素をしっかり踏まえた上で病態解釈を進めることが大切です。
【これからの臨床の常識】痛みに関連する因子を網羅的に抑えよう
身体の物理的側面に対する介入のみに振り切った介入ではなく、もっと色んな要素を洗い出したほうがいいよ。
というわけで、そのことを証明する根拠として以下の研究で示されたデータを少しご覧ください。
これは2020年に発表されたそこそこ新しい論文なんですが、この中で伝えているメッセージ。
それは、特に非特異的慢性腰痛においては痛みに関連する変数(因子)が少なくとも5つ以上はある。ということです。
英語だけだとピンときにくいかと思うので、分かりやすくまとめたものがこちらです。
- 個別要素
年齢や性別など - 文脈的要素
痛みに対して抱く信念など - 社会的要素
文化や価値観、経済的状況など - 心理的要素
恐怖心や不安など - 生体力学的要素
運動制御や姿勢の状態など - 神経科学的要素
末梢・中枢性感作など - 組織損傷や病理
患部の器質的な問題 - 行動/生活習慣
運動野食生活など
このように、痛みに関連する因子が多面的である以上、それに挑むセラピストもできる限り広い視点で臨床ができたら良いと僕は考えています。
で、もう少しこれの解像度を上げるためにこれら因子を痛みの3つの側面(感覚・情動・認知)と掛け合わせてまとめてみました。
それがこちらです。
先ほど論文から引用した痛みの関連因子というのは、痛みの3つの側面に綺麗に区分されるわけです。
そしてここにもう一つ、新たに『社会的側面』というのが加わるとおおよそ腰痛の病態を考えるときのフレームワークとしては網羅できるかと思います。
では、これを踏まえた上で従来のリハビリテーションないしは施術の限界点と今後どのように臨床を進めていけば良いのか?
その点について、それはもうすんごい分かりやすく解説していきます。
続きは『はじまりのまち』で
この続きで書かれていること
- 従来のリハビリテーション&施術の限界点
- バイオメカニクスのみの視点だと効果が出せない理由
- 【知見あり】一撃必殺を狙うと成功確率はめちゃめちゃ下がる
- 「この手技一本で全ての腰痛治したるかかってこい」的なスタンスは結構サムいかも
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