さて、いきなりですが2年に一度、私たち理学療法士に大きく影響する制度の改定といえばなんでしょうか?
そう、診療報酬の改訂です。
これは、私たちの働き方を大きく左右するべきファクトになるため、療法士のみなさんも一度は必ず聞いたことがあると思います。
もし、「全然知らない」という方は、せめて僕らの職域であるリハ関連の改正部分について必ず一度は目を通しておいた方が良いです。
ただ…とはいえ診療報酬改定に関する内容の文言を見ると、言葉が堅苦しくて理解しにくかったりする部分も多少あるのではないかと思います。
そこで、今回から少し連載で『診療報酬』についてできる限り分かりやすくお伝えしていきます。
今後自分たちがどのように立ち回っていくかを考えるためには、まずは決められている制度や仕組みを理解することがとても大事になってきます。
第一回目の今回は『疾患別リハビリテーション』という切り口で自分たちが日頃提供しているリハビリテーションの価値を考えてみようと思います。
【分かりやすい診療報酬制度①】あなたのリハビリの値段っていくら?
そもそも診療報酬とは?
すいません。診療報酬について教えてくれるのはありがたいのですが…僕そもそも診療報酬自体が一体何なのか分からないんです…
そうじゃな。では、まず診療報酬の中身を具体的に話していく前に、そもそも診療報酬って何なのかという部分を説明しようかの。
診療報酬とは、ざっくりいうと「この医療サービス(治療や検査など)はいくらなのか?」ということを表しています。
例えば、皆さんが洋服を購入したり食事をする時それらには必ず値段がついていますよね?
実は医療現場にもこれと同様の仕組みが存在しています。
というのは、一口に医療といってもその中には沢山の種類があります。
僕らが属している『リハビリテーション』をはじめ、MRIやCTといった『検査』、お医者さんによる『手術』も当然医療サービスの一部なわけです。
とすると、同じ医療だからといってこれらが全て同じ値段するなんてことはあり得ません。
一般的な買い物のように、商品が違えば値段が変わるのと一緒で、医療分野における各サービスもそれぞれ異なる金額設定になっています。
では、この金額はどうやって決められるのか?
それが“診療報酬制度”です。
つまり、診療報酬というのは多岐にわたる医療サービス一つ一つが一体何円なのかというのを2年に1度、国(中央社会保険医療協議会:中医協)が見直しを行っているのです。
リハ専門職の人がリハビリテーションの診療報酬を知らないということは、八百屋さんが自分で売っている野菜の値段を把握していないというのと同じです。
疾患別リハビリテーションにおける診療報酬
『疾患別リハビリテーション』とは
昔のリハビリテーションの報酬制度は主に実施時間に基いて決められていましたが、平成18年(2006年)の診療報酬改定によって、『疾患別リハビリテーション』という仕組みが生まれました。
これは、その名の通り疾患別にリハビリテーション料を算定することで、対象となる疾患は以下のようなものが挙げられます。
- 脳血管疾患等
- 運動器疾患
- 廃用症候群
- 心大血管疾患
- 呼吸器疾患
上記に該当する疾患においては、皆さんご存知の『20分1単位』というくくりで算定できるようになっていて、かつ1単位ごとに点数が定められていています。(今回は3疾患を抜粋)
例えば、脳血管疾患(Ⅰ)であれば、1単位245点みたいな感じですね。
ちなみに、この疾患別リハビリテーションは各疾患別に上限日数が決められていて、それを超えると記載されている点数での算定は原則不可能になります。
例)脳血管疾患等であれば180日
ん?項目『Ⅰ.Ⅱ.Ⅲ』ごとに点数が違いますけど、これってどういうことですか?
これは、施設基準というものじゃ。例えば、脳血管疾患リハビリテーション料(Ⅰ)と脳血管疾患リハビリテーション料(Ⅱ)では、(Ⅰ)の方が点数が高いので、それだけ沢山の利益を生むことができるんじゃ
このように、各疾患それぞれにもさらに段階があって、それに応じて振り分けられる点数が異なっています。
疾患別リハで用いられる施設基準とは
施設基準とは、医療法で定める医療機関および医師等の基準の他に、健康保険法等の規定に基づき厚生労働大臣が定めた保険診療の一部について、医療機関の機能や設備、診療体制、安全面やサービス面等を評価するための基準になります。
上記のように、疾患別リハビリテーションであれば、施設基準は『Ⅰ.Ⅱ.Ⅲ』と区分されていて、それぞれはどのように決定されているかというと、常勤する医者の数や、理学療法士もしくは作業療法士の人数、あとは施設の規模ですね。
こうした、それぞれの条件によって得られる施設基準は変わります。
以下にその例として、運動期リハビリテーションの施設基準Ⅰ・Ⅱの違いを示していますので参考にされてみてください。
診療報酬は1点いくらなのか?
ここからが今回一番お伝えしたい部分になります。
ここまで、「療法士の仕事には診療報酬というものが関わっていて、それは点数化されてるよ。」という話しをしてきました。
で、その上で知りたいのは「理学療法士(作業療法士)が一回介入したら一体どれだけの価値が生まれているの?」という金額ベースの話しです。
これを紐解くには、「1点がいくらなのか?」を知らないと答えは出てきません。
早速答えを言うと、現在の診療報酬制度において、この1点というのは10円で設定されています。
これは、理学療法を提供しようが、作業療法を提供しようが、薬を処方しようが一緒です。
医療保険という枠組みの中で各種サービスを提供すると、漏れなく1点は10円です。違うのは、これがそれぞれのサービスで何点振り分けられているかということです。
これによって、金額は変わってきます。
脳血管リハであれば一回7,350円発生している
この話しを踏まえた上で、理学療法士が一回介入すると一体いくら発生するのか?
これは、各疾患別リハビリテーション料によって異なるので、今回は脳血管疾患リハビリテーションでその答えを見ていきます。
例えば、あなたが脳血管リハビリテーション(Ⅰ)を持っている医療機関に就職したとして、そこで3単位(60分間)理学療法を提供したとします。
脳血管疾患リハビリテーション(Ⅰ)の場合、1単位は245点であり、それを3単位行うので単純計算で7,350円発生していることになります。
ただし、これはあくまで総額であり実際に患者様が支払う金額はこれの3割もしくは1割です。(残りの差額は保険者から徴収)
対価に見合ったサービスが提供できてる?
最後に、この話しをお伝えした上で考えて頂きたいこと。
それは、日々リハビリテーションのお仕事を行っていく中で「対価に見合ったサービスが提供できていますか?」という問いです。
先ほど見たように、脳血管リハビリテーション(Ⅰ)で3単位サービスを提供すれば、そこには必ず7,350円というお金が発生しています。
しかも、これは理学療法だけでこの金額なので、これに作業療法、言語療法が加わればさらにこの金額は増えます。
そして、この事実は1年目のセラピストがやろうと、10年目のセラピストがやろうと、やる気があるなしは全く関係ありません。
私たち療法士は、直接患者様から対価を頂くことがないので、あまりこの金額の重さみたいなものがピンときにくい部分がありますが、仮に皆さんが1時間で7,000円ちょっと払うサービスを利用する時って、おそらく多くの人が「たけぇ…」と感じると思います。
だからこそ、時々こうして「自分が提供したサービスにどれくらいのお金が発生しているのか?」というのを考える機会というのは持っておいてもいいんじゃないかと思います。
この記事が、皆さんにとって明日から挑む臨床の姿勢に少しでもポジティブに働くことを祈っています。
良い仕事しましょう!
診療報酬に関するオススメ書籍
医療業界は、飲食やアパレルなど一般的なサービス形態とは異なり、「このサービスは一つ何円」というように患者様に直接請求するわけではありません。
そこで、重要となってくるのが今回でお話ししてきた診療報酬です。
診療報酬制度によって、MRIは何点…点滴は何点…脳卒中のリハビリは何点…という感じでそれぞれ点数化されているわけですが、実はこのそれぞれの点数を一覧で調べることが可能な書籍というものがあります。
それが、診療点数早見表という書籍です。
この書籍を見れば、どの医療サービスが何点か(いくらか)サクッと調べることができるので、自分自身もしくはその他の医療行為が一体どのくらいの価値を生み出しているのかを知りたい方は、ぜひ手に取ってみてください!
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