【腰痛の新常識】動きが悪くなるから痛いのか?痛くなるから動きが悪くなるのか?正解はこっち
腰痛患者さんの身体運動時における筋活動の特徴
腰痛のリハビリテーションを進めていく上で、よく目の当たりにする一つの特徴。それは…
なんか体幹の動き硬いんだよなぁ…
という患者さんが示す、なんとも言語化が難しいあの「動きの狭小化感」
#伝われ
とはいえ、この感覚は実際に研究で証明されていて2014年にFallaらは腰痛患者さんの身体運動時における脊柱起立筋の筋活動を記録しています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24502841/
これをみてみると、結果はこんな感じ。
みてわかるように、慢性腰痛の患者さんって動作時に、『特定の筋肉』を一極集中で使う癖があって、これによって効率的な身体活動が乏しくなっちゃう。みたいな特徴があるんです。
腰痛の患者さんって腰の筋肉使ってないっぽい
デデデ
次に気になるのが、「じゃあ具体的にどこら辺の筋肉は使ってどこの筋肉は使ってないの?」という疑問。
それについても研究が行われていて、Sandersonらが2019年に発表した論文で説明されてました。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6422810/
結論から言うと
腰痛の人って背中でも下のほう、つまり腰の筋肉はあまり使ってなくて、どちらかというと上の方の筋肉を使ってる傾向にあるみたい!
ということだったみたいです。(下図)
(物を持ち上げる際の)体幹伸展時における脊柱起立筋の筋活動を記録しているものなんですが、腰痛患者グループは顕著に筋活動が頭側(上部)に寄っているのが分かります。
で、確かにそう言われてみると、さっきの研究ですね。
さっきの研究でも筋活動が上の方に寄ってる気がしませんか?
ほら、これ。
一旦まとめると…
要するに、腰痛患者さんの病態って「身体運動における筋活動のバリエーションが少なくなってるよね」というのが1つ目。
そして、腰痛がある場所の筋肉ってあんまり使ってなくてむしろ上の方の筋肉を使ってる傾向にあるよね。というのが2つ目。
この辺がポイントになってくるかなと思います。
特に2つ目に関しては臨床推論を行なっていく際に重要な反証可能性として挙げられますよね。
特に、これまで腰痛の原因として
「腰部の筋肉が過度に働きすぎているせいで腰が痛いんですよ」
と考察していたセラピストの皆さん。
多分違います。それ、腰痛の原因になってません。
#言い切っちゃうと怒られそうだけど構わん
実際、今年発表された「The Role of Back Muscle Dysfunctions in Chronic Low Back Pain: State-of-the-Art and Clinical Implications」という論文を見ると
週に7日間痛みを感じる慢性腰痛患者では、週に3-4日間だけ痛みを感じる患者や再発性腰痛を持つ患者と比較して、多裂筋と脊柱起立筋の萎縮&多くの脂肪が蓄積している。
The Role of Back Muscle Dysfunctions in Chronic Low Back Pain: State-of-the-Art and Clinical Implications.2023
と述べられていたり、また別の論文「Multifidus Atrophy Is Localized and Bilateral in Active Persons With Chronic Unilateral Low Back Pain.George J. Beneck PhD,2012」の中では
腰痛グループに多裂筋の筋萎縮を両側に認め、両側を平均するとL5-S1レベルで筋肉容量が18.1%減少していた。
Multifidus Atrophy Is Localized and Bilateral in Active Persons With Chronic Unilateral Low Back Pain.George J. Beneck PhD,2012
なんてことが明らかになっていたりします。
つまり、繰り返しですが腰痛患者さんって痛みがある腰の筋肉をまーーーー
「使ってない」
そういうバイオメカニクス的な特徴があるんですね。
で、そうなると次に気なってくるのが…
「脊柱起立筋や多裂筋の機能障害が生じるから結果として腰痛が起きるのか、それとも痛みが起きるから脊柱起立筋や多裂筋(下部の方)の機能障害が生じるのか。どっちが先なん?」
という。要は、鶏が先か卵が先か問題ですね。
次のセクションでは、この問いの答えを解説していきたいと思います。
続きは『はじまりのまち』で
- 痛みに対する運動の適応理論って知ってる?
・2011年に提唱された疼痛-運動制御理論を解説 - 痛みにおける不活動状態とはどんな現象か?
・負荷の増大
・動きの減少
・変動の減少 - 慢性腰痛の人は腰に負荷がかかってるわけじゃない
・生物医学モデルの推論は限界がある
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