【痛みの評価】侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛の鑑別の仕方を徹底解説!

痛みには大きく3つ種類があり、それが以下です。

  1. 侵害受容性疼痛
  2. 神経障害性疼痛
  3. 痛覚変調性疼痛

このうち、よく質問としていただくことが多いのは…

侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛はどうやって鑑別するのですか?

というもの。そこで今回は、理学療法士や作業療法士をはじめとするリハビリテーションセラピストの皆さんが、この2種類の痛みを鑑別する際に役立つ知識をお伝えしていきたいと思います。

目次

【痛みの評価】侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛の鑑別の仕方を徹底解説!

侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛の定義おさらい

はじめに、侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛について簡単におさらいをしておきましょう

侵害受容性疼痛とは

侵害受容性疼痛とは、組織の損傷や潜在的な損傷によって引き起こされる痛みです。

具体的には、皮膚、筋肉、骨、関節、内臓など“神経系以外”の組織に存在する侵害受容器が、物理的、化学的、または熱的な刺激によって活性化され、痛みとして感じられるものを指します。

神経障害性疼痛とは

神経障害性疼痛は、体の一部にある神経系の損傷や疾患によって引き起こされる痛みです。

具体的には、末梢神経系(末梢神経)または中枢神経系(脳や脊髄)のどちらか、あるいはその両方に損傷や機能障害が生じることによって発生します。

このように病態だけ見ると、侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛は全く異なるものではありますが問題はその症状。

臨床現場ではこの鑑別が非常に難しいと感じるセラピストの方、結構多いと思います。

それではここからは、その鑑別方法について解説していきます。

侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛の鑑別①-主観-

リハビリテーションセラピストが、両者の痛みを鑑別するときにキーワードになるのが…

「患者様が発する言葉」です。

これは、2023年に発表された論文「Low-back related leg pain: is the nerve guilty? How to differentiate the underlying pain mechanism.」の中でも推奨されている評価方法です。

患者が訴える症状は主な痛みのメカニズムを理論化するための第一歩である。 神経障害性疼痛と侵害受容性疼痛の患者では、痛みを表現するときに使う言葉が異なるため、患者の話を聞くことは鑑別のプロセスにおいて重要である。

Low-back related leg pain: is the nerve guilty? How to differentiate the underlying pain mechanism.

以下の図は、この論文の中で述べられている侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛における症状の違いを一覧でまとめているものです。

Mistry et al.,2020とSmart et al.,2011に基づく神経障害性疼痛と侵害受容性疼痛の臨床記述コンセンサス

和訳すると以下のようになります。

赤が『神経障害性疼痛』の特徴を示し、青が『侵害受容性疼痛』の特徴を示しています。

侵害受容性疼痛の特徴

  1. 痛みは断続的に感じられる
  2. 特定の動きや姿勢で痛みが悪化したり和らいだりする機械的な痛み
  3. 痛みは問題のある部位に集中している(場合によっては他の場所にも痛みが広がることがある)
  4. 痛みを軽減する特定の姿勢や動きがある
  5. 痛みは通常すぐに治まるか、組織が治るのに伴って和らぐ

神経障害性疼痛の特徴

  1. 燃えるような、疼くような、電気が走るといった痛みとして記述されることが多い
  2. 他の神経学的症状(感覚障害や伸張反射の減弱)を伴う
  3. 自発性疼痛(何もしていなくても突然現れる痛み)
    ・誘発性疼痛(普通なら痛くないような刺激に対して強い痛みを感じる)
    ・発作性疼痛(急に痛みが再発したり急に痛みが強くなる)
  4. 神経の根元や他の神経の部分で、過去に損傷または物理的な圧迫があったことがある

侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛のケース例

以下は、上記論文の中で紹介されている侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛の違いにおける具体例を示したものです。

神経障害性疼痛の可能性が高いケース

患者1に症状の詳細を尋ねると、患者は、ふくらはぎに焼けるような感覚チクチクする感覚、ピンや針で刺すような感覚があり、これらが脚に広がる臀部の痛みと関連していると述べました。患者はさらに、臀部の痛みが強くなると、これらの感覚も増す傾向があると言っています。

悪化要因や緩和要因については、患者は首を曲げて車から降りると痛みが悪化すると説明しました。また、痛みが簡単に誘発されやすく、和らぐのに時間がかかることにも気づいています。痛みは「予測不可能」と表現され、自然に再発することもあるそうです。

上記のような症状の説明、および痛みが予測不可能であるという事実から、このケースは神経障害性疼痛の要素が強いと推論することができます。

侵害受容性疼痛の可能性が高いケース

患者2に症状の詳細を尋ねると、主に臀部に集中している痛みがあるが、下肢からふくらはぎにかけて広がる痛みもあると述べました。痛みの種類は鋭く、時には鈍い感じです。

悪化要因と緩和要因については、腰を曲げる姿勢(特に座っているとき)で痛みが悪化します。また、座っている状態から立ち上がるときや立っている状態から座るときにも痛みが増します。特に腰を曲げるのを避けると、痛みがすぐに和らぐことに気づきました(例えば、横になってソファで休むときなど)。

痛みが悪化する要因と緩和する要因が明確であり、神経学的な異常を訴えていないという事実から侵害受容性の痛みが主であると考えられます。

侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛の鑑別②-自己記入式質問票-

患者様の発する言葉や症状からある程度ざっくり鑑別できた後、さらにこの推論を精緻化するために有用なのが『自己記入式質問票』です。

以下に有効な評価方法をご紹介します。

Neuropathique en 4 questions (DN4)質問票

DN4は、神経障害性疼痛と侵害受容性疼痛を鑑別するために開発されたもので、腰痛に特異的な鑑別機能を持っている評価スケールです。

質問は10項目から構成されていて、合計4点以上であれば神経障害性疼痛の可能性が高いと評価できるようです。

なお、感度は0,83、特異度は0.9となっています。

侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛の鑑別③-客観的評価-

先の主観的検査で神経障害性疼痛が疑われる場合、実施するのが好ましいとされているのが客観的評価です。

上記で紹介したDN4もその一つになります。

その他客観的な評価方法としては、『反射テスト』『筋力テスト』『感覚テスト』などが挙げられます。

神経障害性疼痛の可能性が高い場合は、「反射が減弱する、筋力が低下する、感覚障害が生じる」といったことが起きます。

また、痛覚過敏アロディニア(触れるだけで痛む)などの症状を示している際にも神経障害性疼痛を示す可能性が高まります。

そのほかで臨床現場で活用できる客観的な評価方法としては受動的下肢挙上テスト(SLR)等があります。

ここがポイント

SLRをはじめとする神経力学的検査は感度は高い一方、特異度が低く単独で用いるべきではないことに注意すべきとの指摘があります。そのため重要なことは、いくつかの検査を組み合わせることによって評価精度を高めることになります。

 鑑別方法まとめ

以上が、リハビリテーションの現場において侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛を鑑別するために知っておきたいことでした。

後半の客観的な評価の部分は意外と教わることが多い一方、患者様が発する言葉などの違いについては棲み分けができていなかった部分も多少あったのではないかと思います。

ぜひ、明日からの臨床に活かしていただけると幸いです。

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きんたろー

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