この記事では以下のテーマについて解説しています。
- 介護保険制度とは
- 要介護と要支援の違い
- 要介護認定の流れ
- 介護保険を使って利用できるサービス
介護保険領域に携わる理学療法士や作業療法士の皆さん、もしくはこれから介護保険の申請等を考えている方はぜひ最後までご覧ください。
【分かりやすい】介護保険制度の理解と利用できるサービス一覧
介護保険制度とは?
介護保険制度は、少子高齢化による要介護者の増加と家族介護機能の脆弱化などを背景に、2000年に制定された介護保障システムです。
介護保険の運営(保険者)を行なっているのは市区町村です。
つまり、民間企業が営利目的でサービス展開してるものではありません。
市区町村がその母体と考えた場合、こんな疑問が出てきます。
市区町村が保険者なら、運営のための財源はどこから出ているの?
答えは、「住民から徴収している」です。
介護保険の財源は、基本的に40歳以上の成人から徴収されるようになっています。
徴収の仕方は、会社員の方であれば給料から天引きされていると思いますし、個人事業主の方であれば国民健康保険等と同様に支払い通知が自宅に届いていると思います。
20代や30代の人はまだまだまピンとこないかもしれんな。
介護保険はどんな人が利用できるのか?
介護保険サービスを利用する人のことを『被保険者』といいます。
被保険者は大きく2つに分けられ、それぞれ第一号被保険者と第二号被保険者といいます。
第一号被保険者と第二号被保険者の違いは以下です。
- 第一号被保険者
・65歳以上の者 - 第二号被保険者
・40歳以上65歳未満で医療保険加入者
加えて、第一号被保険者と第二号被保険者の人が介護保険サービスを受ける時の違いとして、もう一つ特徴的なのは『特定疾病の有無』です。
第一号被保険者は、原因を問わず要介護認定を受けた時に介護保険サービスを受けることができます。
要介護認定についてはこの後話すゾ。
一方で、第二号被保険者については、老化に伴う16種類の疾病(特定疾病)が原因で要介護認定を受けた時に介護保険サービスを受けることができます。
では、ここでいう特定疾病とは一体何が含まれるのでしょうか?
- がん
- 関節リウマチ
- 筋萎縮性側索硬化症
- 後縦靱帯骨化症
- 骨折を伴う骨粗鬆症
- 初老期における認知症
- 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症およびパーキンソン病
- 脊髄小脳変性症
- 脊柱管狭窄症
- 早老症
- 多系統萎縮症
- 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症および糖尿病性網膜症
- 脳血管疾患
- 閉塞性動脈硬化症
- 慢性閉塞性肺疾患
- 両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う関節症
厚生労働省 特定疾病の選定基準の考え方.より引用
介護保険制度を利用するために必要な『要介護認定』とは?
介護保険を使って様々なサービスを利用するためには、要介護認定というのを受ける必要があります。
要介護認定とは介護の度合いを客観的に判断し数値化したものです。要するに、日常生活の中でどれくらいの介護(介助)を必要とするかを表します。
そして、その介護度によって『要介護』もしくは『要支援』に区分されるのですが、これもそれぞれ受けられるサービスが異なります。
要介護と要支援の違い
要介護状態 | 要支援状態 |
入浴、排せつ、食事等の日常生活における基本的な動作の全部又は一部について、常時介護が必要な状態。 介護が必要な程度によって1〜5の区分に分類される。(5になるほど介護が必要な状態) 受けられるサービスは『介護給付』 | 基本的には1人で生活が行える状態であるが、部分的な介護が必要な状態。 介護が必要な程度によって1〜2に分類される。(要支援2の方が介護度としては高いが要介護よりは低い) 受けられるサービスは『予防給付』 |
では、上記にあるような要介護1〜5、要支援はどのように区分されるのか?
とうと、「どのくらい介護に時間を要しているか?」ということを一つの判断軸にしています。
これを要介護認定等基準時間といい、この要介護認定等基準時間の長さに応じて要介護度(要介護&要支援)が決まります。
ちなみに要介護認定等基準時間は、被保険者に対して行われる以下の行為に要する一日あたりの時間として、厚生労働省が定めています。
- 入浴、排せつ、食事等の介護
- 洗濯、掃除等の家事援助等
- 徘徊に対する探索、不潔な行為に対する後始末等
- 歩行訓練、日常生活訓練等の機能訓練
- 輸液の管理、褥瘡の処置等の診療の補助等
- 要支援
要介護認定等基準時間が25分以上32分未満又はこれに相当する状態 - 要介護1
要介護認定等基準時間が32分以上50分未満又はこれに相当する状態 - 要介護2
要介護認定等基準時間が50分以上70分未満又はこれに相当する状態 - 要介護3
要介護認定等基準時間が70分以上90分未満又はこれに相当する状態 - 要介護4
要介護認定等基準時間が90分以上110分未満又はこれに相当する状態 - 要介護5
要介護認定等基準時間が110分以上又はこれに相当する状態
要介護認定を受けるまでの手続き流れ
①要介護認定の申請は市区町村
要介護認定を受ける場合、その窓口となるのは市区町村です。
よく、病院やクリニックで要介護認定を受けられると勘違いされるケースがありますが、ここではそうした手続きは行なっていません。
要介護認定の申請を受ける場合は、お住まいの地域における市役所や区役所に行く必要があります。
自分で申請が行えない時は依頼する
要介護認定をしようにも、例えば被保険者となる方が入院していたり、施設に入所していたりと市区町村の窓口に赴けない場合もあるかと思います。
そんな時に、そうした手続きを代行してくれる業者があり、それが『地域包括支援センター』、『居宅介護支援事業所』、『介護保険施設』です。
これら施設には、介護支援専門員という方がいるのですが彼(彼女)らが介護認定の申請を行なってくれます。
介護支援専門員と聞くと馴染みがないかもしれんが、別名ケアマネージャーといわれる人たちじゃ。
②訪問調査の実施
申請を終えると、介護支援専門員(ケアマネージャー)などが自宅や施設に赴き訪問調査が行われます。
訪問調査では、被保険者となる方の自宅(施設)内での動きや日常生活の介護状態を実際に見たり、聴取したりしながら行われます。
③医師の意見書をもらう
訪問調査が終わると、主治医による意見書を作成します。
これは、市区町村が主治医に作成を依頼するのですが、仮にかかりつけの医師がいない場合は、市区町村が指定する医師による診察が必要になります。
④一次判定
訪問調査、医師の意見書をもらった後に行われるのが、一次判定です。
一次判定は、訪問調査で得られた情報と医師の意見書をもとにコンピューターにて全国一律の判定方法で行われます。
⑤ニ次判定(介護認定審査会)
一次判定を終えると、最後は二次判定へと進みます。
一次判定の結果と主治医意見書に基づき、介護認定審査会による最終的な要介護度の判定が行なわれます。
ここではコンピューターではなく、専門家立ち会いのもと議論がなされ決定されます。
介護保険サービス一覧
要介護認定の審査が終わり、要支援または要介護の認定が下りたあとはそれぞれサービスを受けることができます。
要支援者が受けるサービスのことを『予防給付』、要介護者が受けるサービスのことを『介護給付』といいます。
要介護者が受けることのできるサービス一覧(介護給付)
- 居宅介護サービス
【訪問サービス】
・訪問介護
・訪問入浴介護
・訪問看護
・訪問リハビリテーション
・居宅療養管理指導
【通所サービス】
・通所介護(デイサービス)
・通所リハビリテーション
【短期入所サービス】
・短期入所生活介護(ショートステイ)
・短期入所療養介護 - 居宅介護支援
- 施設サービス
・介護老人福祉施設
・介護老人保健施設
・介護療養型医療施設 - 地域密着型介護サービス
・定期巡回随時対応型訪問介護看護
・夜間対応型訪問介護
・認知症対応型通所介護
・小規模多機能型居宅介護
・看護小規模多機能型居宅介護
・認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
・地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
・複合型サービス
このうち①〜③は都道府県や政令都市、中核市が指定・監督を行うサービスですが、④の地域密着型介護サービスは市町村が指定・監督を行うサービスになっています。
要支援者が受けることのできるサービス一覧(予防給付)
- 介護予防サービス
【訪問サービス】
・介護予防訪問介護
・介護予防訪問入浴介護
・介護予防訪問介護
・介護予防訪問リハビリテーション
・介護予防居宅療養管理指導
【通所サービス】
・介護予防通所介護(デイサービス)
・介護予防通所リハビリテーション
【短期入所サービス】
・介護予防短期入所生活介護(ショートステイ)
・介護予防短期入所療養介護
【その他】
・介護予防特定施設入居者生活介護
・介護予防福祉用具貸与 - 地域密着型介護予防サービス
・介護予防認知症対応型通所介護
・介護予防小規模多機能型居宅介護
・介護予防認知症対応型共同生活(グループホーム) - 居宅介護支援
このうち①の介護予防サービスは都道府県や政令都市、中核市が指定・監督を行うサービスですが、②〜③におけるサービスは市町村が指定・監督を行うサービスになっています。
介護保険サービスと報酬の関係
最後に、介護保険サービスを提供することによって事業所が得られる対価について解説したいと思います。
介護事業所がサービスに対する対価として保険者から受け取る報酬を『介護報酬』といいます。
介護報酬は全てのサービスにより額が決まっており、1単位10円で計算が行われます。
介護保険における“単位”と医療保険領域で用いられる“単位”の意味合いは異なるので混同しないように注意しよう。
以上、介護保険サービスについてのまとめでした。
この記事が、少しでも皆様にとって参考になれば幸いです。
最後までご覧頂きありがとうございました。
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