この記事では、主に整形外科領域において用いられる疼痛誘発テスト(整形外科テスト)を一覧でご紹介しています。
実技動画も添付しているので解説と合わせて参考にされてください。
それぞれの部位のテスト一覧の最後には、確認問題もご用意しています。
きちんと理解できているかのチェックも併せて、ぜひチャレンジしてみてください。
【頸部・上肢・腰部・下肢】整形外科領域で用いられる疼痛誘発テスト一覧
頸部疾患の疼痛誘発テスト
頸部に関連する疾患にはいくつかあって、代表的なものを挙げると『頚椎症性神経根症』、『頚椎椎間板ヘルニア』、『椎間孔狭窄症候群』、『頚椎後縦靱帯骨化症』、『胸郭出口症候群』、『頚椎捻挫(むち打ち)』などがあります。
この中で特に重要なのが『胸郭出口症候群』です。というのが胸郭出口症候群というのは総称であり、その中には問題が生じている部分によってそれぞれ名称があるからです。
- 前斜角筋症候群
- 頚肋症候群
- 肋鎖症候群
- 過外転症候群
一番上に前斜角筋症候群と書いていますが、実際はその他の斜角筋も関わっていることが多いので、臨床では「斜角筋症候群」として取り扱うことが多いです。
このように頸部疾患は種類も豊富な分、それらを鑑別・評価する際に行うテストの難点は「方法が似ているところ」です。
例えば、以下に紹介しているスパーリングテストとジャクソンテストは頭部を側屈させるか後方へ反らせるかの違いがあるんですが、臨床現場でよく起こりがちなのは…
あ…どっちがどっちだったけ?
というもの。
良くないですよ。もちろん良くないし、ちゃんと熟知してからやれって言ったらそれまでなんですが、実際問題時々こういうことがあるので、しっかり以下のテストを確認してやり方を押さえておきましょう。
①スパーリングテスト(spurling test)
方法と陽性反応
対象者に座ってもらい、頭部を傾ける。セラピストは、対象者の頭部に手を乗せ肩に向かって圧迫すると、障害側では上肢に放散痛が生じる。この場合がこのテストにおける陽性反応である。
陽性反応の解釈
頸部の神経根障害を疑う
(例)頚椎症性神経根症や頚椎捻挫など
②ジャクソンテスト(Jackson test)
対象者に座ってもらい、頭部は後方に反らしてもらう。セラピストは頭部を下へ圧迫しこの時に肩や腕、指などに放散痛が生じればこのテストにおける陽性反応となる。(動画では頭部は反らさず圧迫のみ実施している)
ジャクソンテストでは、頭部を後方へ反らしただけでも放散痛が生じることがあるため、スパーリングテストよりもジャクソンテスト陽性の方が重症度が高いと言える。
陽性反応の解釈
頸部の神経根障害を疑う
(例)頚椎症性神経根症や頚椎捻挫など
ちなみに…
上記のスパーリングテストとジャクソンテストは交通事故後の『後遺障害等級』を決定する上で非常に重要なテストになることをご存知でしょうか?
交通事故後はその障害の程度によって1〜14級の等級、そして140種類、35系列の後遺障害に細かく分類されています。
そのうち、12級13号の後遺障害が認定されるためには、スパーリングテストとジャクソンテストが陽性であることが示されていることから、この2つのテストは特に交通事故後等においては非常に重要なポジショニングとなっています。
それでは次に、胸郭出口症候群に関連するテストを見ていきたいと思います。
胸郭出口症候群に関連するテストはそこそこ数が多いんですが、この時よくありがちなのは
「このテスト、首どっちに向けるんだっけ?」
という超絶シンプルな間違いです。テストの名前と方法がごっちゃになりやすいんです。
その辺りにもきちんと気を配りながら覚えていきましょう!
③モーリーテスト(morley test)
方法と陽性反応
鎖骨上窩で胸鎖乳突筋の外側(腕神経叢)を圧迫する。障害側に圧痛と上肢や手に放散痛が見られた場合に陽性となる。
陽性反応の解釈
斜角筋症候群が疑われる(胸郭出口症候群)
④アドソンテスト(adson test)
方法と陽性反応
対象者は座った状態で、両手を膝の上に軽く置いた状態にしておく。セラピストは対象者の橈骨動脈の拍動を触知する。
次に対象者は頭をできる限り後に反らせ、橈骨動脈を触知している方へ顔を傾けその状態で深呼吸を行う。
これにより、橈骨動脈の拍動が減弱もしくは消失、腕や手に疼痛が出現すれば陽性となる。
陽性反応の解釈
斜角筋症候群が疑われる(胸郭出口症候群)
⑤アレンテスト(allen test)
方法と陽性反応
対象者は上肢を外転・外旋した状態で保持する。そして頭は挙げた上肢とは反対側へ向ける。
この時セラピストは橈骨動脈を触知し、拍動が減弱もしくは消失したら上肢を挙げた側が陽性となる。
陽性反応の解釈
斜角筋症候群が疑われる(胸郭出口症候群)
⑥ライトテスト(wright test)
方法と陽性反応
対象者は座位で上肢を下垂する。セラピストは、後方から検査側の橈骨動脈を触知し、その状態で腕を外転させながら持ち上げる。
外転していく中で拍動が消失すれば陽性となる。
ライトテストの動画を見ると片手で行っておるが、両手同時に実施する場合もあるぞ。
陽性反応の解釈
過外転症候群が疑われる
⑦ルーステスト(roos test)
方法と陽性反応
ライトテストと同じ体勢でかつこれは両手で行う。3分間、手指の握って開いてを繰り返し実施する。
実施している最中に、手指が痺れたり、腕がだるくなるといった症状の出現によって遂行不可能となった場合に陽性となる。
陽性反応の解釈
胸郭出口症候群を疑う(どこが絞扼されているかまでは分からない)
胸郭出口症候群の疼痛誘発テスト【確認問題】
問題を読んで答えが分かったら下にスクロールしましょう!
胸郭出口症候群の整形外科テストの中で、橈骨動脈の拍動を触知しないのはどれ?
A.モーリーテスト、ルーステスト
対象者は腕を楽にした状態で頭を後方に反らし、橈骨動脈触知側へ顔を傾けるテストはどれ?
A.アドソンテスト
対象者は頭部を動かすことなく、セラピストに上肢を挙上してもらうことによって橈骨動脈の拍動をチェックするテストはどれ?
A.ライトテスト
上肢疾患の疼痛誘発テスト
次は、上肢疾患においてよく用いられる評価方法について一つずつ紹介していきます。
①ペインフルアーク徴候(painful arc sing)
方法と陽性反応
上肢の外転60〜120°間でのみ疼痛があれば陽性となる
陽性反応の解釈
腱板損傷、インピンジメント症候が疑われる
②ヤーガソンテスト(yergason test)
方法と陽性反応
対象者は、肘関節屈曲90°で前腕回内位とし、対象者は上腕骨の結節間溝部で上腕二頭筋を触知する。
次に対象者は前腕を回外し、セラピストは手関節回内方向に抵抗をかける。
上腕骨の結節間溝部に限局する疼痛があれば陽性となる。
陽性反応の解釈
上腕二頭筋長頭炎が疑われる
③チェアテスト(chair test)
方法と陽性反
対象者は椅子などを持ち上げ、上腕骨外側上顆に疼痛が起これば陽性となる。
陽性反応の解釈
上腕骨外側上顆炎(テニス肘)が疑われる
コメント