痛みの強度を評価するとき、皆さんはどのような評価スケールを用いていますか?
Visual Analogue Scale(VAS)を用いる人もいれば、Numerical Rating Scale(NRS)を用いる人もいるかと思います。
では、それを踏まえた上でもう一つ質問。
「なんか、痛みの強さを数値で表すことに対していまいちピンときてない患者さんっていません?」
痛みの強さ?んー7くらい?
みたいな。
セラピスト側からすると『7』と聞いたら「あ、そんな痛いの!?」と一瞬なっちゃいますよね。
要は、医療者サイドが認識している数値の解釈と患者様側が認識している数値の解釈がそこそこずれていることがあるんです。
その結果として、患者様が感じている痛みの強さというのが今ひとつ理解しきれない。そういうことが臨床を行っていると時々遭遇することがあります。
というわけで、今回は患者様サイドも医療者サイドも「あぁ、このくらい痛いのね」と痛みの強さが共通認識できる、そんなツールをご紹介していきたいと思います。
【2022年コクランレビュー】痛みの「強さ」を共通認識できるツールは○○
痛みの強さを評価するツール一覧
まずはじめに、痛みの強さを評価することができるツールを一覧でまとめます。
visual analogue scale:VAS
紙に長さ10cmの黒い線を引きそれを患者様に見せる。そして、現在の痛みがどの程度かを患者様に指し示してもらう視覚的なスケールです。
アウトカムは0〜100とめっちゃ細かく評価することが可能になっています。
numerical rating scale:NRS
0が「痛みなし」、10が「想像できる最大の痛み」として0~10までの11段階に分けて、現在の痛みがどの程度かを患者様本人に口頭で指し示してもらう評価スケール。
VASに比べるとアウトカムの抽象度が高い評価スケールになっていますが、VASのように紙や定規などを用意しなくても良い(質問するだけ)ので、より簡易的に痛みの強さを評価することができます。
VASとNRSの課題感ってここだよね
冒頭で少しお伝えしましたが、臨床でVASとNRSを活用しているといくつか課題も見えていて、代表的なものを挙げるとこの辺りかなと思います。
①痛みの強さを示す数字が人によってズレる
痛みの強さというのはどこまで行っても主観的な体験であり、その人が以前に経験した痛みやその人が痛みをどのように認識するかにまぁまぁ依存します。
したがって、VASないしはNRSを用いて痛みの強さを評価するときでも、その数字が持つ意味が必ずしも万人にとって同じとは限りません。
例えば、ある人にとっては「5」が中程度の痛みを示すかもしれないけれど、他の人にとってはそれがより大きな痛みを示すこともあれば、そうでもないという可能性もあります。
要は、数字だと本人が「どれくらい痛いのか」ここをセラピスト側がグリップしずらい側面というのがあります。
②直感的ではなく論理的な思考が介入することがある
VASやNRSはその評価の特性上、「痛み」という情動的な体験を「数字に変換する」というプロセスを踏みます。
そのため、直感的に痛みの体験を表現するというよりは、「論理的に考えた末」というノイズが入りやすい状態でアウトプットが出てくる可能性があります。
ここでいう“論理的に”というのは例えば…
- めっちゃ痛いけどこれって8かな?でも8だったらもっと痛いかも
- 他の人だったらもっと痛いはずだし、大体これくらいかな?
こんな感じで、要は「リアルに体験している痛みの感覚をある種合理的に考えた結果として表に出てくる」みたいなことが起こります。
加えて、一旦思考を介すと何が問題として生じるかというと、「問われていることの意味が分からない」人が少なからずいるということです。
皆さんも臨床を少し思い浮かべてほしいんですが、VASやNRSを実施するときに
0〜10?何それ、そんなの分かんないよ…
と、言われることってありません?
僕、めっちゃあるんですよね。(聞き方がまずい説はある)
と思って昨日インスタでアンケートとったら90%以上の方がその経験があるようで、そう考えると「NRSで示す数字にピンときてない方」ってそこそこな割合でいそうな感じがしますよね。
このように、VASやNRSは痛みの強さを半定量的に評価する点においてとても有用である一方、「痛みの表現のリアルさに欠ける」というデメリットがあるなと個人的には考えています。
じゃあ、この課題をどうやって乗り越えるか、というわけでここからはこれをブレイクスルーできるツールをご紹介したいと思います。
続きは『はじまりのまち』で
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