「ブリッジ運動は大殿筋の筋力訓練ではない!?」その秘密を解説

きんたろー
こんにちは!理学療法士のきんたろーです。

さて、股関節伸展筋群の一つである“大殿筋”。これは、姿勢制御や基本動作を行っていく際に非常に重要な筋肉の一つとして存在しています。

そのため、リハビリテーション場面においても多くのセラピストのみなさんが大殿筋をターゲットとした運動療法を実施しているのではないでしょうか?

では臨床上、この大殿筋の筋力訓練として広く用いられている方法といえば何が真っ先に思いつきますか?

おそらく、多くの方がパッと頭に思い浮かぶ方法。それはブリッジ運動ではないかと思います。よくリハビリテーション室のプラットフォーム上で患者様が背臥位になり両脚を立てて、お尻を挙上するアレです。

 

ただ一方で…このブリッジ運動、臨床上は“大殿筋”の筋力訓練として認知度が比較的高いように感じますが、実は「本当に大殿筋の筋力増強訓練になっているか?」というと、「意外とそうでもないんじゃない?」という声を最近ちらほら耳にします。

そこで、本記事では「果たしてブリッジ運動は大殿筋の筋力トレーニングになっているのか?」という点について科学的根拠を基に解説して行こうと思います。

この記事でわかること

・ブリッジ運動によって得られる大殿筋の筋活動量
・大殿筋の筋活動を高めるために効果的とされる運動

「ブリッジ運動は大殿筋の筋力訓練ではない!?」その秘密を解説

両脚ブリッジ運動では大殿筋が働かない

参考文献紹介

さて、今回は市橋先生らの以下の論文を参考に解説していこうと思います。

【各種ブリッジ動作中の股関節周囲筋の筋活動量~MMT3との比較~】

※図はこちらの論文を引用させて頂いています。

この研究では、ブリッジ運動の方法をいくつかに分けて行い、その際の股関節周囲筋の筋活動を測定しています。

※研究上の語句に合わせて表記します。

B1:両側ブリッジ(いわゆる普通のやつ)

B2:片脚ブリッジ

B3:両脚ボールブリッジ(足をボールにのせてブリッジ)

B4:片脚ボールブリッジ

B5:最大両脚ブリッジ

このように、ブリッジの方法をB1~B5まで分けています。

※B5の最大両脚ブリッジというのは、検査者が徒手で最大抵抗を加えた場合のことです。

各種ブリッジ運動における筋活動結果

各種ブリッジ運動を行いその際の筋活動を測定したところ…

いわゆる“普通のブリッジ運動(B1)”では股関節周囲筋の筋活動が圧倒的に低いことが分かりました。これは大殿筋に限らず、そのほかの筋肉においても同様です。

 

 

セラピスト
それってどのくらい低いの?

『低い』とは一体何を基準に述べられているのか?というのが気になると思いますが、今回その基準として設けられたのが『MMTの3レベル』です。

MMT3を基準として、各ブリッジ運動における筋活動を見ていくとこのようになりました。

 

大殿筋のみを出していますが、お分かりでしょうか?

普通のブリッジ運動(B1)とボールに脚を乗せたブリッジ運動(B3.B4)に関しては、MMT3に満たないという結果になったのです。

 

MMT3が重力に抗することができるレベルであると考えると、MMT3以下のブリッジ運動で果たして『筋力増強』が行えるでしょうか?

 

また、徒手における“最大”抵抗(B5)だと大殿筋の働きは有意に向上するようですが、これは臨床上に置き換えると患者様はフルパワーでブリッジ運動をしなければなりません。

ですが、実際臨床でブリッジ運動をするときってほとんどの人が…

 

セラピスト
1,2…10

という感じで作業のようにこなす人もいれば、患者様もとりあえずお尻を挙げるといったような感じになっていないでしょうか?

これだと、到底筋力の増強は難しいのではないかと考えられます。

“普通の”ブリッジ運動では代償が強く働く

両側ブリッジ運動の際、松本らの研究ではこのように結論づけています。

ブリッジ運動中には、大殿筋よりもハムストリングスや脊柱起立筋が働き、ブリッジ運動は大殿筋の積極的な運動肢位というよりも臥床しかとれない患者の全身調整運動として用いることが適切である。(松本.1981)

臨床においてもブリッジ運動の際に大殿筋以外の筋を用いて代償しているケースってないでしょうか?

このように両側でのブリッジ運動は、大殿筋自体の筋活動も乏しく、かつ両側ブリッジ運動自体、大殿筋以外の筋の代償的な参加が関与しているため、『両脚ブリッジ運動=大殿筋の筋力向上』というのは難しいと思われます。

大殿筋の筋力向上を図るなら“片脚ブリッジ運動”

ここまで、ブリッジ運動は大殿筋の筋力増強に関与しないという風に述べてきましたが、それは“両脚ブリッジ運動”に関しての話しです。

実は、この研究の中で大殿筋の筋力向上を示唆できる方法も見つかっています。

それが『片脚ブリッジ運動』です。

臨床で行っている方もいらっしゃると思いますが、この研究のなかで片脚ブリッジ運動は最大両側ブリッジ運動と筋活動自体は大きく変わらないことが分かりました。

最大徒手抵抗は、負荷の調節が難しい側面があったり、そもそも自主訓練として一人で行うことが出来ないですが、片脚ブリッジ運動であれば一人でも可能でなおかつ大殿筋の十分な筋活動も得られる事が研究より分かっています。

まとめると…

ブリッジ運動で大殿筋の筋力増強を図るのであれば『片脚ブリッジ運動』であれば可能である。

ということが言えるのではないかと思います。

まとめ

今回、ブリッジ運動が大殿筋の筋力増強に関与しない可能性があるとして、市橋先生らの論文を元に書いてきたのですが、今回書いていく中で僕がゾッとしたのはこの論文が発行されている年が1998年ということです。

いまが2022年なので、約20年前には“両側下肢でのブリッジ運動で筋力増強は得られない可能性がある”というのが研究上明らかにされていたわけです。

それにも関わらず、今日に至るまで臨床上は『ブリッジ運動=大殿筋の筋力増強訓練』と称して行われているし、学生の頃も当たり前のようにレポートに書いてきました。

この事実からの学び。それは『無知は怖い』ということです。

今回はブリッジ運動を例に挙げましたが、実は僕たちが日頃疑いもせず当たり前のように行っている評価や治療など、それらは全て本当かどうかきちんと疑いの目を持ち吟味することが大事だということに改めて気づかされました。

一見すると、「すごい」と感じる手技や評価技術も、実はきちんと検証してみると案外信憑性のないものだということが判明するかもしれません。

すごいものに惹かれ、ただ教えられたものをやるのは楽だし簡単なことですが、思考することをやめ既存の知識を疑わず、作業のようにこなす人が圧倒的に多い職業が将来安泰なんて、そんなことあるでしょうか?

進化しない職業は淘汰されていく。

これはごく普通でごく当たり前の流れです。という事実があるにも関わらず、「給料上げろー」とか「開業権よこせー」とか「専門性を…」と言っているのが僕らの職業です。(あくまで一部)

患者様にきちんとした理学療法・作業療法を提供するためにも、僕らは日々知識を更新しないといけないのかなと…

そのためには、日頃から論文等を読み“情報”をチェックする必要があるのかな?なんて思います。