「人に何か思いを伝えるときには『何』を伝えるかよりも『誰』が伝えるか。が結局大事になってくるのだと思う。」
この言葉は、先日僕が勝手に『師匠』と呼ばせていただいている先生とお話ししていた時に、先生がおっしゃられていた一言です。
僕は、この言葉がすごく印象深く残っているのですが、その理由は2つ。
①現代の『モノの価値』の捉え方にすごく似ている
②本当に『誰が』の方が大事なのか??
僕が今回の記事でお伝えしたいメッセージはほとんど②についてです。
なぜなら、僕は『誰』よりも『何』の方が圧倒的に大事だと思っている派だからです。
実は今回僕がこのテーマでブログを書いた理由は、よくよく考えると、この『誰』VS『何』話しってリハビリテーション業界にめちゃめちゃよくあるケースだったからです。
だからこそ、中々興味を引きづらいテーマにはなっていますけど、リハ職の方には是非最後まで見ていただけると凄く嬉しいです。
では、いきましょう。
モノの価値はどこにあるのか
モノ自体よりも“情報”に価値がつくという現実
『何』を伝えるかよりも『誰』が伝えるか
の本質をお伝えする前に、少しだけお金にまつわる話しをさせてください。(これを話した方が伝わりやすいので)
さて、私達が基本的にお金を払う対象というのは『価値』があるものになります。
『価値』には明確な基準はなく、人それぞれの感性や価値観などのに従って、それをもとに個人が価値があると判断すれば、対価(お金)を払うと思います。
しかし、この『価値』自体を少し分解してみると、実は『価値』には2つの側面があることが分かります。
それが、『物理的な要素』と『情報の要素』です。
この2つを少し具体的に解説していきますね。
物理的な要素
『物理的な要素』とはモノ自体が、実際に数値化出来たり、可視化できるものをさします。
例えば、牛肉100gを食べると、タンパク質がどのくらい摂取できるとか、ビタミンがどのくらい摂取できるとかというように、価値そのものが数値化出来ることが特徴です。
情報の要素
一方『情報の要素』とは、逆に数値化や可視化ができない価値のことです。
例えば、草野球をやっているおいちゃんが書いたサインボールとメジャーリーガーの大谷翔平選手が書いたサインボールが仮にオークションに出展されたとして。(サインを書いた野球ボールは同じもの)
当たり前ですが、値段は大谷選手のサインボールの方が遥かに高いことが予想されます。
逆に、草野球をやっているおいちゃんのサインボールは、もしかすると値段すらつかない可能性もあります。
つまり『無価値』です。(おいちゃんごめん)
ただ、ここで大事な1つの事実。
それは、草野球おいちゃんもメジャーリーガー大谷選手もサインを書いた野球ボールは同じものだという点です。
同じモノを売りに出したにも関わらず、ふたを開けて値段を見ると雲泥の差が生じている…
これこそが物理的な要素とは違う、もう一つの価値の側面である『情報の要素』です。
つまり、同じ『モノ』(物理的な要素)に対して『大谷翔平選手』(情報の要素)という情報の付加価値がついたことによって、モノ自体の価値が飛躍的に高くなったというわけです。
このような、情報空間において付加価値がつくことを『バーチャル・バリュー』と言います。
実は現代においては、このバーチャルバリューに溢れているのです。
その代表的なものを一つ挙げるとすると
『Instagram』がこれにあたります。
例えば…
Instagram上で、芸能人や有名モデルがとあるアイスクリーム屋さんで写真を撮りInstagramに載せたとします。
すると、それを見たファンや一般人はこぞってそのアイスクリーム屋さんに行って写真を撮り、Instagramにアップします。
ただ、ここで見誤ってはいけないことは、アイスクリーム自体はどこかの有名な牛乳に変えたとか何ら改良したわけではありません。
つまり、商品自体の価値(アイスクリーム)を高めたわけではないのです。
ファンや一般人の方がアイスクリーム屋さんに行く目的は決して“味”を求めているわけではありません。
彼ら彼女らがアイスクリーム屋さんに行く目的は、『好きな芸能人が行った場所』という情報に惹かれて行っているのです。
ただ、アイスクリーム屋さん自体はお客さんが増えていることに変わりはないので、結果アイスクリームはバカ売れするというシステムになるわけです。
また、Instagramに絡めた話しだと2017年に流行語大賞にもなった『インスタ映え』もバーチャル・バリューが働いている典型例です。
商品やサービス自体に大きな価値があるかというとそうではなく、『映える』という情報がInstagram上で拡散され、そのバーチャル・バリューに多くの人が惹かれているのです。
さて、だいぶ長くなってしまいましたが、ここまででモノの価値に関する話はおしまいです。
ではいよここから、先生がおっしゃっていたことの本質に近づいていきます。
名もないPTが書いた本と有名な『あの人』が書いた本
さあ、1つ質問です。
『名もない一人の理学療法士』が書いた本と、『有名な理学療法士が書いた本』では、果たしてどちらが多くの人に手に届くでしょうか?
多くの方が『後者』と答えると思いますが、さて、それは一体なぜでしょうか?
勘のいい方なら、先程の『モノの価値』の話しで何となくピンときているかもしれません。
そう。
つまり、内容が仮に同じであったとしても『有名な理学療法士が書いた本』には【~先生が書いた本】というバーチャルバリューが付加価値としてつくからです。
名もない人がどれだけ素晴らしい内容を書こうが、手に取ってもらえなければその良さは誰にも広まりません。
しかし、有名な先生が書いた本であれば、内容はさておきその人自身のブランドが付加価値として乗っかっているので、手に取ってくれる人は大勢います。つまり、多くの人の手に届くのです。
『何』を伝えるかよりも『誰』が伝えるかの真実
『何』を伝えるかというよりも、『誰』が伝えるか
これに関しても、モノの価値で話したバーチャル・バリューの概念が大いに働きます。
つまり、無名の理学療法士と有名な理学療法士が仮に全く同じこと(物理的な価値)を伝えていたとしても、やはり心に響いたり印象に残りやすいのは後者になってしまうのです。
なぜならば、『有名なあの先生』というバーチャルバリューが付加価値として乗っているからです。
『誰』というバーチャルバリューに騙されない必要がある
『話す内容よりも、誰が伝えたか』が印象に残りやすい。
これは実際に生じてしまう真実かもしれません。
ただ、この真実は注意しなければならないこともあります。
その注意する点を1つのケースを通して紹介します。
機長症候群
『機長症候群』というのを聞いたことがありますか?
これは、航空会社の職員が名付けた造語ですがその由来がこちらです。
多くの航空機事故は、機長が犯した明白なミスを他の乗員が正さなかったために発生していることが報告された。(アメリカ連邦航空局調べ)
これに隠されている意味がお分かりでしょうか??
つまり、こういうことです。
航空機に搭乗している乗員は、機長がミスを犯しているにも関わらず『機長が言うなら、正しいに違いない』と解釈してしまい、その結果大事故につながっているのです。
このケースから僕が伝えたいこと。
それは…
『誰(有名なあの先生)』が言っていることが本当に正しいの??
実は、リハビリテーション業界はこの機長症候群と似たことがよくあります。
典型的な例は…
『~先生が〇〇って言っていたから…』
という言葉。
~先生というバーチャルバリューで自分の判断軸が引っ張られてしまい、『何』に値する本当の価値に対して疑いを持たなくなってしまうのです。
正しい情報であればまだしも、もしこれがとんでも情報だったらどうしますか?
気づいたら、皆一緒に間違った方向に進んでしまっている可能性があります。
『誰』が伝えるか
というのは、確かに凄く重要な事ではあるのですが、本質的な部分はその『内容(何)』です。
私たちは、そのあたりをきちんと吟味できる目を持っておくことと、『情報』を自分自身の中で一度フィルターにかける癖をつける必要があるのではないかと思います。
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