【2024年版】痛みや関節可動域に効くの?ストレッチの効果を科学的に解説

ストレッチに治療効果ってあるんだろうか?

この疑問を抱いたことがある方、一人二人じゃないと思う。

ちなみに僕もその一人だ。

臨床でよく目にする光景の一つに「ストレッチ」はあり、自分自身もPTになりたての頃は先輩のを見よう見まねで一生懸命ストレッチを行なっていた。

ただ、その時も正直感じてはいた。

「これ、本当に効果あるのかな…緩んでる感じが、ぶっちゃけしない…」

その後、チラホラとストレッチの効果を示すような知見が出始めたが、見ると「効果があった」という研究もあれば「効果はなかった」という知見もあった。

結局どっちなのか分からない

それが、ストレッチに対して感じていたことだった。

そんな折、一本の雑誌に出会った。

理学療法士なら誰もが知っているであろう『理学療法学』だ。

2023年に発行された理学療法40巻9号に掲載の論文、目次に目をやるとそこに「他動的ストレッチングにおける技術を科学する」というタイトルを見つけた。

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僕は、「科学する」という文言に目がない。

特に徒手療法だったり、ストレッチだったり、人の手を介して行うような治療手技に対して

「しっかり検証していこうぜ」というスタンスをとっている論文には脊髄反射で手が伸びてしまう。

ゆえに、「他動的ストレッチングにおける技術を科学する」というタイトルの論文も当たり前に読んだ。

読んだ感想はというと…

すっごく面白かった

前半はさまざまなストレッチの方法論の解説があり、後半はストレッチを科学的に検証した研究をもとに、その効果を解説する内容となっていた。

今回その中から、ストレッチを方法論として現場でよく用いている理学療法士や作業療法士はもちろん、柔道整復師やスポーツトレーナーの皆さんにもぜひ知っておいてほしい部分を、一部引用させていただく形で共有したいと思う。

特に、屋号に「ストレッチ」が入るほどストレッチをサービスの核としているド○ターストレッチの皆さんには、ぜひ原著の方にも目を通していただきたい。

それでは、本題に入ろう。

目次

【痛み・痙縮・ROMに効くの?】ストレッチを科学しその効果を示す

ストレッチとは

ストレッチとは何かを定義するために、本論文の一文を引用する。

ストレッチングとは、伸展性が低下した軟部組織を伸張させて柔軟性を改善するために、他動的あるいは自己で筋を引き伸ばす、つまり筋を伸張する技術である

他動的ストレッチングにおける技術を科学する.隈元庸夫,2023

「ストレッチとは何か?」

上記の文章を読んで「思ったのと違った」と感じた人はあまり多くないだろう。

「ストレッチとは筋肉を伸張すること」まさにこれである。

ストレッチの種類

ストレッチには大きく分けると3種類存在するが、実はそれぞれにメリットとデメリットが存在する。

以下にその一覧を示すが、各種方法論のやり方等についてはここでは割愛する。

  1. 静的ストレッチ(static)
  2. 動的ストレッチ(dynamic)
  3. 直接的ストレッチ(direct)
スクロールできます
ストレッチの種類代表的な技術メリットデメリット
静的
static
静的stretch簡単で安全ウォームアップ要検討
ID stretch筋個別に実施可能技術を要する
PNF stretch効果が大きい技術を要する
動的
dynamic
バリスティックstretch伸張反射を引き出せる怪我のリスクがある
動的 stretchウォームアップに効果的怪我のリスクがある
PNF stretch効果が大きい技術を要する
直接的
direct
ダイレクト stretch該当筋に直接実施可能伸張しやすい部位が過度に伸張する可能性がある
他動的ストレッチングにおける技術を科学する.隈元庸夫,2023

この表を見てわかることは、恐らくストレッチと聞いて多くの方が想像するであろう「スタティックストレッチ」の最大の特徴は、最も安全に行える手技であるというのがその一つだろう。

逆に、伸ばす際にわりと強めに反動をつけて行うバリスティック・ストレッチなんかは、表にもあるように怪我のリスクを孕んでいることが注意すべき点として挙げられている。

そして、恐らく最もイメージしにくいのが「ダイレクト・ストレッチ」だと思うが、これは特定の筋肉を直接伸張する手技である。

例えば、腰椎に付着する小さな多裂筋なんかはその筋肉の走行上スタティック・ストレッチで伸ばしていくのは難易度が高い。 

そういった場合に直接多裂筋を触り伸張をかけていくといった手段を用いることがあるが、これがダイレクト・ストレッチである。

ストレッチのエビデンス(効果)

それでは、この記事の最大のテーマである「ストレッチの効果」について解説していく。

今回アウトカムになっているのは、以下の6つである。

  • 関節可動域(ROM)
  • 生活の質(QOL)
  • 痛み
  • 痙縮
  • 活動制限
  • 参加制約

ストレッチを行なった1週間以内それ以降という2つの時間軸で、この6つのアウトカムに対してどのくらいの効果があるのかを以下の表に示す。

スクロールできます
アウトカム神経疾患(脳卒中等)非神経疾患
ストレッチ1週間以内ストレッチ1週間以降ストレッチ1週間以内ストレッチ1週間以降
ROM効果なし効果なし効果なし効果なし
QOL資料なし資料なし効果なし資料なし
痛み効果不明効果不明効果なし効果不明
痙縮効果不明効果不明該当しない該当しない
活動制限効果不明効果不明効果不明効果不明
参加制約資料なし資料なし効果不明効果不明
他動的ストレッチングにおける技術を科学する.隈元庸夫,2023

いかがだろうか?

神経疾患と非神経疾患、ストレッチ実施後1週間以内とそれ以降という変数が複数あって、表が見にくいためなんだかスッと入ってきにくいかもしれないが、書かれていることをもうかなりギュッとまとめると

ほぼほぼ効果なし

という結果になった。

ストレッチを行うと超わずかな変化は出る

ちなみに、この表はあくまで「他動的ストレッチングにおける技術を科学する.隈元庸夫,2023」から引用した図だが、この表の元になった原著論文も実際に読んでみた。

その論文がこちらである。

この論文は、被験者を複数集めてストレッチ介入群と非介入群とで効果を比較するような研究ではなく、ストレッチに関連する49件の研究(2135人)分のデータを一つにまとめたシステマティック・レビューとなっている。

これを見ると、具体的な数値が書かれていたので補足程度に紹介する。

なお、ここでは臨床上特に気になる人が多いであろう『関節可動域』と『痛み』のみ触れる。

関節可動域制限に対するストレッチの効果

神経疾患の場合:
関節可動域を平均2°改善した(臨床的に重要な効果はなし)

非神経学的状態:
関節可動域を平均0.2°改善した(臨床的に重要な効果はなし)

0.2°って逆によく出せたよな…

痛みに対するストレッチの効果

神経疾患の場合:
ストレッチにより痛みが2%増加した(おい)

非神経学的状態:
ストレッチは痛みを1%減少させた(臨床的に重要な効果はなし)

ストレッチの効果まとめ

今回の結果から、ひとまず現時点においてストレッチ(主にスタティック・ストレッチ)の効果はさほど大きくないと言える。

ただし、留意点としては今回は「治療の効果」という点にフォーカスしていることである。

ストレッチが現場においてよく用いられるもう一つの側面である「予防」に対しては論じていない。

つまり、分からない

もしかしたらストレッチには怪我を予防する効果があるかもしれないし、ないかもしれない。

これについては、またどこかのタイミングで解説できればと思っている。

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きんたろー

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