新人セラピスト(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士)とリハビリ学生を応援するためのブログ

感覚フィードバックのホント①

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臨床で「体性感覚フィードバック」というワードを聞いたことがあるという方は多くいらっしゃるのではないでしょうか?

 

この体性感覚フィードバックですが、皆さんはどのように認識しているでしょうか。

もしかしたら

・物理的に触れば感覚が入る。

・動かせば感覚が入る。

・足底を着いて立位姿勢をとれば荷重感覚フィードバックが入る。

 

といったようなニュアンスで捉えている方もいらっしゃるのではないでしょうか?

 

これらが正解か不正解かというのはここでは議論しませんが今回お話しするのは、そもそも感覚が入るというのは何をもってそのようにいうのか。

と言ったところを含め、感覚が入力されるメカニズムを神経学的知見を元に解いていこうと思います。

 

私たちを取り巻く感覚だらけの世界

意識化されない感覚

私たちは常に無限ともいっていいほどのあらゆる感覚情報に晒されて生きています。

 

道を歩くだけで、身体には股関節や膝、足関節など受容器(メカノレセプター)は個別的にではなく、時間的に同時に動きますし、関節情報だけでなく道の傾きや硬さといったものも、足底の表在感覚を通して常に入り続けているものです。

 

またさらに、体性感覚だけでなく歩く度に感じるオプティカルフローも常に変化し続けており、視覚から入力される情報も1秒1秒変化し続けていることが分かると思います。

 

このように、私たちの身体というのは常にあらゆる感覚情報を多面的に沢山受け取るため、各末梢部にあるメカノレセプターは刺激が入る度に発火し続けていることになります。

 

さて、ただここで1つ疑問が生まれます。

 

常に感覚情報が入り続けているにも関わらず

すべてが「意識化」されないのは何故か。

 

どういうこと??

と思われる方もいらっしゃるかもしれませんので少し説明をします。

 

教科書的には末梢部から感覚刺激が入れば脊髄視床路や後索路を通して大脳皮質の体性感覚野に投射されて「感じる」はずです。

 

しかし、歩いている時に

「あ、股関節が動いてる」
「膝と股関節が同時に動いてる」

などそんなのいちいち意識しないですよね?

 

でも歩行を行うと、それに関連する筋肉や関節などは必ず働かなければならないため、そうなると筋紡錘や関節受容器というのは必ず発火しています。

これは神経学的に分かっている事実です。

 

では、なぜ神経学的には体性感覚野に投射されているかもしれないのに普段意識に上らないのでしょうか?

 

そのひとつの答えが

「上位中枢からのシナプス前抑制」

と言われるものです。

これはどういうことかと言いますと、関和彦先生の論文から引用させて頂いたものでご少し説明します。

 

シナプス前抑制(PAD)

少しこの図の内容を説明します。

左図(運動を行っていない場合)

 

サルが運動を行っていない時に皮膚の表面へ刺激したものを表しているのですが

まず、脊髄後根に皮膚刺激による感覚入力が行われます。

それにより、その刺激情報というのは大脳皮質に伝達されて「痛い」や「痒い」「触られた」といったような感覚を惹起することになります。

 

そしてさらに、上位中枢に上るだけでなくその後根から入った感覚ニューロンは同時に脊髄全角細胞にある運動神経に伝わり筋肉が動きます。

これがつまり「反射」というものです。

 

右図(運動を行っている場合)

しかし一方で運動を行っている場合どのようになるかと言いますと

前頭葉から送られた運動指令が下降性に投射されると、脊髄後根から入力された皮膚刺激による感覚というものに抑制がかかるのです。

 

これがつまりシナプス前抑制(PAD)と言われるものです。

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これが生じるとどうなるかというと

 

「必要のない皮膚感覚入力を抑制する」

ことが出来るのです。

 

わかり易く言うと感覚刺激は入っているんだけれども、上位中枢に立ち上げない。

 

つまり、レセプターの発火そして末梢神経レベルまでは反応しているが、PADにより上位中枢(体性感覚野)には感覚入力が上らせないようにするのです。

 

体性感覚野(大脳皮質)に感覚入力が上らないということは・・・・・?

 

そうです!

「意識化されない」ということです。

 

これが、あらゆる多感覚が入り続けているにも関わらず意識化されない理由です。

さらにもう一点。

上位中枢から下降性に投射された運動指令は反射によって生じるであろう運動ニューロンにも抑制をかけます。

 

これがあるので随意運動中に反射が生じない秘密です。

 

で、本題なのがここからなんですが。。。

上位中枢からの指令の正体

では、この上位中枢から下降性に降りてかる運動指令とありますが、これの正体を明かします。

これは実は「遠心性コピー」だと最近言われ始めています。

 

遠心性コピー???

さあ。覚えていますか??

以前一度お話ししたことがあるのですが、その際には遠心性コピーは頭頂葉や小脳に投射されると述べられていましたが、実はこの遠心性コピー。。

 

脊髄にも投射されるらしいです。

 

つまり、先程の図で脊髄に投射していた運動指令というのは遠心性コピーということになります。

 

この事実を肯定するものとして、神経心理学辞典に記載されている一文にこのようなものがあります。

 

後索核への投射は、後索-内側毛帯系に作用し、運動指令が運動自体によって生み出された感覚入力を相殺する。

という文章があります。

 

後索核というのは脊髄に存在するものですが、つまり、その後索核へ投射される運動指令自体がその感覚フィードバックを相殺する(上位中枢に上らせない)ということです。

運動が感覚を調整している事実

以前までは運動と感覚というのは割と切り離されて考えられていましたが、実は神経学的にみるとそうではない事がこの知見から分かります。

というのも、末梢部にあるメカノレセプターや末梢神経系には感覚刺激が伝達されているにも関わらず、運動指令自体によって上位中枢に上げるか上げないかというのが、PADによって調整されているのです。

 

ですから、「感覚フィードバック」というものをいうにあたっては、少しこの辺りは考慮しなければならないかもしれませんね。

 

要は、何か運動を行ってもらい知覚してもらうにあたって、物理的にいかにも視覚的には感覚が入ってそうな訓練に見えても、実は大脳皮質までは上がってきていないことが考えられます。

 

ただ、一方的で脊髄レベルでの感覚フィードバックというものを求めたいのであれば、患者様の運動などを含まずに得る事が可能なので(神経学的な知見をもとに)、自分(セラピスト)はどのレベルで感覚フィードバックを獲得せたいのかをきちんと神経学などを勉強して考えていければ良いかと思います。

問題提議

さて、最後にここまでシナプス前抑制についてお話ししてきましたがここで1つ問題提議をしようと思います。

 

運動指令(遠心性コピー)が不要な感覚をシャットアウトする。

 

とありますが、ではこの「不要」と判断するための基準は一体なんでしょうか??

 

さらに相殺するというのもありますが、この相殺する基準も果たして何なのか。

 

・何をもって不要とするのか。

・どんな感覚を相殺するのか。

 

ここが分からなければ全ての感覚をシャットアウトしてり相殺してしまいますよね。

 

そうなると随意運動中、感覚情報が上位中枢に上ってこないということになりかねません。

 

何を基準に「不要」「相殺」という価値判断をしているのか。

 

次回はこの問題を解決していこうと思います。

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