
多裂筋って確か体幹の中でも深部にある筋肉ですよね?
確かにそう思うのも分からんでもないの。
多裂筋は触診できるのか
さて、今回『多裂筋は触診できるのか』ということをテーマに書いていきますが最初に結論からいうと…
多裂筋の触診は可能です!
触診の仕方云々は色々あると思いますが、ただ今回そこには触れず、『触れるか触れないか』という事実だけを解剖学的な知見からお伝えさせていただこうと思います。
多裂筋の解剖学
多裂筋は本来、頚椎から腰椎にかけて存在していますが、特に腰椎で発達しています。
今回は、腰部多裂筋だけにフォーカスしてみていきますが、腰部多裂筋には筋線維が二種類存在します。
それが浅層線維(long fiber)と深層線維(short fiber)です。
浅層線維(long fiber):2~4つの椎間関節ごとと、仙骨へ走行する
深層線維(short fiber):1つの椎間関節ごとに走行する
『腰椎の機能障害と運動療法ガイドブック 赤羽根 良和』より引用
臨床における多裂筋の関与
多裂筋が臨床において最も関わってくる疾患と言えば恐らく『腰痛』ではないでしょうか。
論文などを探してみても
☑慢性腰痛の80%に腰部多裂筋の萎縮がある(Kader.2005)
☑腰痛症患者では多裂筋の萎縮や脂肪組織への置換が起こっている(Mayer.1989)
こんな感じで、正直‟多裂筋”が腰痛に関与しているという内容の論文はこれ以外にもすごく沢山あります。
ただ、腰痛などの整形疾患だけでなく姿勢制御においても大変重要な筋の一つですから、中枢神経系の疾患でも注目されている筋の一つでもありますので、現在多裂筋の重要性というのはかなり広く周知されてきています。
多裂筋の筋断面積
『健常若年男性における腰部多裂筋横断面積の腰椎各レベルでの左右差 遠藤ら』より引用
さて、次に示すのは『多裂筋の筋断面積』です。
健常若年男性55名を対象に、超音波にて多裂筋の横断面積を測定しました。
結果、この研究により明らかになったことの一つとして、腰部多裂筋の横断面積は下位腰椎になるほど大きくなるというものでした。
多裂筋と脊柱起立筋
冒頭で、生徒がこんなことを言っていました。
さて、この問題を解決するために下の図をご覧ください。
これは赤羽根先生の著書から引用させていただいた写真で、腰部のMRIを写しています。
赤い線で囲まれた部分は多裂筋を表しています。
『腰椎の機能障害と運動療法ガイドブック 赤羽根 良和』より引用
上位腰椎(L1-L2)に比べ、下位腰椎(L3-L4)では赤い線が大きくなっているのがお分かりでしょうか?
これはつまり、下位腰椎になるほど多裂筋の筋ボリュームが大きくなっていることを表しています。(先ほどの研究結果を支持していますね。)
このように上位腰椎と下位腰椎では多裂筋の占拠率に違いがあり、これは脊柱起立筋との関係性においても言えます。
上位腰椎L1-L2では多裂筋に対して脊柱起立筋の方が筋断面積は大きく、L3になるとこの両者の割合が均等(1:1)になります。
一方で、下位腰椎(L4-L5)では脊柱起立筋はほとんどが腱膜に移行していることから、筋として存在するのはほとんどが多裂筋であることが分かっています。
つまりまとめると…
☑上位腰椎では脊柱起立筋に覆われているため触診が困難
☑しかし下位腰椎では先ほど述べた研究(下位腰椎ほど多裂筋のボリュームが大きい)の知見に合わせて、MRIによる多裂筋の占拠率の違いから触診が出来る
という結論になりそうです。
また筋-筋膜性腰痛においても以下の事が言えそうです。
L3を基準にL4以遠の棘突起周囲の筋肉の圧痛は多裂筋であることが多く、L1レベルでは脊柱起立筋の圧痛であることが多い。
『腰椎の機能障害と運動療法ガイドブック.赤羽根 良和』
腰痛だけにフォーカスしたこちらの本、ちょっとお高いですが内容はとてもシンプルで分かりやすいのと、赤羽根先生の講義DVDも二枚ついているのでこれから腰痛に関わっていくというセラピストの方には是非お勧めの一冊ですよ😊
※この記事の中にも図を多く使用させていただきました。
最後に