論文を読んでいる際に、「この論文の質って高いのかな?」というふうに感じたことはありませんか?
実は、世の中にでている論文には掲載雑誌によってレベルがあり、そのレベルを見ることで「この雑誌に掲載されている論文ということは、そこそこ精度高いかも」というように解釈することができます。
今回は、その論文雑誌の『レベル』にフォーカスし解説していこうと思います。
論文を探すときのポイントにもなりますので、ぜひ最後までご覧ください。
論文を探す時のポイント~impact factor~
impact factorとは
さて、さっそくですが皆さんは、『理学療法学』や『理学療法ジャーナル』、『クリニカルニューロサイエンス』などといった、多数の論文が掲載される雑誌を読んだことがありますか?
さらに実は、このように論文が掲載されている雑誌にそれぞれ『ランク』がついているのですが、ご存知でしたか?
もちろん、世界共通です。このランクというのが今回のタイトルにもなっている『impact factor(IF)』と言われるものです。
世の中にある数多くの論文雑誌には、それぞれimpact factorが決められており、その数値が高い程いわゆる‟評価の高い雑誌”であるといえ、日頃から論文を書いている研究者は、impact factorの高い雑誌に自分の論文が掲載されることを目標にしているという人も中にはいます。
impact factorはどのようにランクが付けられるのか
IFの点数が付けられる基準。それは、”雑誌に掲載された論文が一年間でどれくらい他の論文に引用されているか”で決められます。
つまり、ある雑誌に掲載された論文が、他者が書いた論文に引用される数が多くなればなるほど、それを掲載した雑誌の評価(IF)は高くなる仕組みになっています。
impact factorの実例
では、IFに関して少し親近感を持っていただくために、私達の身近な論文雑誌を取り上げてそれらのIFを見てみましょう。リハビリテーション業界でよく見かけるこれらの論文雑誌のIFは以下のようになっています。
この数値が高いのか低いのかはこのあとお話ししますので、とりあえず、今は「なるほど。このくらいね」と覚えておいてください。
impact factorの目安は?
私達が日頃よく見る論文雑誌のIFが分かったところで、次にお待ちかね、IFの基準についてお話しします。じつは、IFの基準というのは明確に「この点数だと素晴らしい!」というのが決まっていません。
なぜならば、IFの点数というのは雑誌の種類(臨床or研究、学問の種類)によって、その基準値が変わるからです。よって、IFの点数で良い悪いを判断する場合は、約束事として『同じカテゴリーで比較する』というのが重要になります。
今回は、私が勤務しているクリニックの脳神経外科医にそれぞれが思うIFの目安についてリサーチしてみましたのでそれをご紹介します。
先生、IFの目安って大体どのくらいでしょうか。どのくらいあれば良いと感じますか?
雑誌の種類によって異なるから何とも言えなけれど…脳外科に関するものなら3~5点あれば素晴らしいと思うよ
3点くらいの雑誌に自分の論文が掲載されたらかなり嬉しいですね。nature(ネイチャー)なんかは、もう次元が違います(笑)
リサーチの数が少ないので何とも言えませんが、このお話しだけ聞くと医学に関する論文雑誌であれば、おおよそ3~5点というのがレベルの高い論文雑誌といえそうです。
世界的に有名な論文雑誌のimpact factor
では次に、世界的に有名な論文雑誌のIFが一体どのくらいなのか、それを見ていこうと思います。この数値を1つの上限の目安としていただいて、今後論文雑誌を見ていく際の参考にしてもらえたらと思います。
それでは、以下に有名な論文雑誌のIFを示します。
科学雑誌の代表格ともいえる『nature(ネイチャー)』のIFは24.36と、先ほど脳神経外科医の先生方がおっしゃられていた3~5点をはるかに上回っている数値です。(次元が違うといわれていた意味がなんとなく分かりますね笑)
個人的にこの一覧で最も驚きなのは、『journal of physiotherapy』のIFが5.41であるという事実です。というのもこの雑誌は、オーストラリア版の『理学療法学』であり、日本の『理学療法学』のIF:0.18に比べると遥かに高い評価がなされていますね。
つまり、それだけオーストラリアの理学療法士が書いた論文は引用されやすいということが言えます。
Impact factorを見る際の注意点
それでは次に、IFをみていく際の注意点をお話ししておきます。
①IFは一年ごとに変わる
IFは、定義上”一年間にどれだけ引用されたか”であるため、その点数は一年おきに必ず変化します。当然、引用数が少なければIFが上がっていくことはありません。
よって、前年度かなり高いIFを誇っていたのに今年度は低くなっている。なんてことも全然起きるのでIFを見る際は年代に注意しましょう。
②IFは雑誌の評価であり、論文そのものの評価ではない
これは、よくある誤解釈であるためよく覚えておきましょう。IFというのは、論文雑誌のレベルを表すものであって、その中に掲載されている全ての論文の質の高さを評価しているわけではありません。
よって、IFの点数が高い雑誌だからといって、その中に掲載されている論文そのもののレベルが高いとは限らないことに注意しましょう。ただ、便宜上はこのように理解する必要がありますが…
一方で個人的には、IFの高い論文雑誌はアクセプトをもらうまでのハードルは当然高くなるので、そこに掲載されるという事はある程度は質の方も担保出来るのではないかと個人的には思っています。(混乱させてすみません。これはあくまで僕の意見です)
impact factorの調べ方
では、最後にIFの調べ方で代表的な方法を2つお伝えします。
これを使って、ご自身が読まれている論文雑誌のIFを調べてみるのも良いと思います。
①『調べたい論文』『impact factor』で検索
手順の詳細は以下の図の通りです。
ご自身の調べたい論文雑誌を入れて、その後『impact factor』と入れると、検索ページの一番上にその論文のIFが出てきます。注意点としては、この調べ方をするとよく前年のIFが表示されることがあります。
IFの下に必ず小さく年代が表示されているので、そのIFが今年のものであるかをきちんと見ておきましょう。
②『academic Accelerator』で検索
僕はこの方法でIFを調べることが多いです。手順も図の通りで、IFも前年比などが算出されるため非常に分かりやすいです。
是非一度試してみてください。
※使用した図は全て『きんたろーブログ@Instagram』から引用しています。
おまけ
さて、以上が今回お伝えしたかった『impact factor』についてです。日頃読んでいる自分の論文雑誌のレベル感が一体どの程度なのか。
一度調べてみるのも面白いと思いますので、是非活用してみてください。ちなみに、今回の内容についてまとめたものをInstagramにアップしています。
もし、IFの調べ方など思い出したい時はこちらから見てみてください。
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