本日は、非特異的慢性腰痛のリハビリテーションを進めていく際に必要な『評価』の話しをしていきたいと思います。
キーワードは「痛みの3つの側面」
痛みには感覚・情動・認知とい3つの側面がありますが、現場においてこの3つの側面が綺麗に切り取られて病態がつくられているなんてことは稀です。
実際は、3つの側面にグラデーションがあります。
ただし、「どの要素が強いのか?」ということはある程度把握することができ、それを知るための手掛かりになるのが『評価』で、今回ご紹介する評価もその一つです。
特に痛みの認知的側面、つまり『身体イメージの変化』等を主症状とする身体知覚の問題を抱えている方の評価を行うのはそこそこ苦手意識がある人が多いかと思います。
今回、ご紹介する評価はまさにそこです。
昨年発表された研究をもとに解説していきます。
この記事がただの読み物になっては意味がないと思っています。
大切なのは、この記事一本がセミナーと同じ、またはそれ以上の価値になるよう目標としては「明日から皆さんが臨床ですぐに使えること」としました。
使えなかったら言ってください。
皆さんがもれなく「使えそうです」と言えるまでリライトし続けます。
それじゃ、はじめていきましょう!
【痛みの認知的側面】非特異的慢性腰痛の感覚-運動および身体知覚評価
病態が筋骨格系だけの問題から神経系の問題へ
ひと昔前は、痛みの原因の多くは『筋骨格系』に全て着地させる傾向がありました。
よって、痛みの病態を紐解いていく際には筋肉なのか姿勢アライメントなのか…そういった外側から見えるところで勝負するといったケースが多かったです。
しかし、近年脳機能イメージングや神経生理学研究が発達し、特に慢性疼痛などにおいては中枢神経系(脳-脊髄)や末梢神経系の関与が病態にすごく関わっていることが明らかになってきました。
慢性腰痛患者において、一次体性感覚野の神経学的、構造的、機能的変化が証明されている。
Sensorimotor and body perception assessments of nonspecific chronic low back pain: a cross-sectional study.meier,2021
これらの知見は、中枢神経系も慢性腰痛に寄与しているという新たな証拠を裏付けている。慢性的な痛みは、脊髄と大脳皮質における感度を高め末梢神経系の侵害刺激入力の増幅につながる可能性がある。
このように、痛みの病態を考えていくときは外側から観察できる筋骨格系だけにフォーカスせず、不安・恐怖といった情動的側面や、身体イメージや体の使い方といった認知的側面といった患者様本人の内に潜む問題にも目を向けていく必要があるわけです。
痛みの情動的側面に対する評価方法
現在、情動的側面側面に対する評価方法は既にいくつかコンセンサスがとれている方法があって、いくつか例を挙げると以下のようなものがあります。
- 不安&抑うつの評価
Hospital Anxiety and Depression Scale(HADS) - 不安のみの評価
State-Trait Anxiety Inventory(STAI)
痛みの認知的側面に対する評価方法
痛みの認知的側面の評価方法には、痛みに対する破局的思考の状態を把握するPain Catastrophizing Scale(PCS)や運動恐怖心の程度を把握するTampa Scale for Kinesiophobia(TSK)などがあります。
これらの評価は、「痛みをどのように捉えているか=認知」というところを主に把握するものになりますが、一方で『認知』にはもう一つの意味があります。
それが、身体イメージを代表とするような身体知覚的な意味での『認知』です。
痛みに伴う身体知覚的評価方法
身体知覚的評価の代表的なものといえば、2008年にオーストラリアのPTであるMoseley氏が研究し、発表した「身体描画法と二点識別覚の組み合わせ」があります。
この評価方法もかなり精度としては高いので臨床でよく使われますが、一方で臨床の時間というのは思った以上に短く、できる限りその時間内でより早く評価できるに越したことはありません。
『身体描画法と二点識別覚の組み合わせ』も非常に良い評価ではあるのですが、2つの検査を組み合わせないといけない以上、どうしてもそこそこ時間を要します。
そこで、昨年発表された“Sensorimotor and body perception assessments of nonspecific chronic low back pain: a cross-sectional study.meier,2021”という論文では、後ほどご紹介する3つの評価方法のうちどれが最も身体知覚異常の識別に優れているのかを明らかにしました。
身体知覚評価に用いられる3つの評価方法
この論文で行われた研究方法をご紹介すると…まず、身体知覚の評価に採用された評価は以下の3つのです。
- two-point discrimination (TPD)
- back-photo assessment (BPA)
- movement control tests (MCT)
back-photo assessment (BPA)とはどんな評価か?
BPAは身体知覚と知覚された身体イメージをテストすることができる視覚的アプローチ評価法になります。
このテストは、身体描画法の上位互換的なテストとして位置付けられています。
具体的な方法論ですが、(腰痛であれば)まずは患者様本人の背中の写真を撮影し、腰部の部分を何枚か編集した写真を作ります。
そして本人にそれら写真を見せ、編集前の写真、つまり自分自身の腰部の形として正しいのはどれかを選ばなければなりません。
この方法は、これまで複合性局所疼痛症候群(CRPS)患者の手足にのみ用いられ、一次体性感覚野の表現を反映してると考えられている。
Sensorimotor and body perception assessments of nonspecific chronic low back pain: a cross-sectional study.meier,2021
movement control test (MCT)とはどんな評価か?
MCTは、腰部の運動制御を確認するために設計された6つのテストからなる評価バッテリーです。
慢性腰痛患者様が示す脊柱の知覚低下に対応するもので、中枢神経系が制御する動きに影響を与えると考えられています。
MCTは、運動制御障害の可能性を特定する際によく用いられていて慢性腰痛患者と健常対照者の識別をすることができると言われています。
ちなみに、運動制御障害(MCI)と二点識別覚のアウトカムには関連があると言われているので、MCTと二点識別覚を組み合わせるというのも一つ重要な評価になるかもしれません。
3つの方法のうち最も身体異常知覚の識別能力が高いのこれ!
この研究では、二点識別覚、BPA、MCTを比較し身体異常知覚を識別する上でどの評価が最も優れているかを評価したのですが、結論この中で最も効果が高いのは…
続きは『はじまりのまち』で
この続きで書かれていること
- 身体異常知覚を識別するために最も効果的な評価法
- movement control test(MCT)の実際の進め方(図解付き)
- MCTのアウトカムの設定方法
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