この記事では、腰-仙骨神経叢に関連する筋肉や支配神経について一覧でまとめています。
腰-仙骨神経叢とは、腰神経叢と仙骨神経叢を合わせたもの。
『神経叢』とは神経が複数に合わさっているものを指す。つまり、腰-仙骨神経叢とは腰髄と仙髄から出ている神経をまとめたものをいう。
腰-仙骨神経叢に含まれる大腿神経や坐骨神経は腰痛と鑑別が必要なものが多いので、慢性腰痛のリハビリテーションに携わっているセラピストの皆さんの知識の補填にして頂けると嬉しいです。
ちなみに、このあたりは国家試験でもよく問われる部分でもあるため、ぜひ今年国家試験を受ける理学療法士学生や作業療法士学生の皆さんも復習としてご活用ください。
【一覧で分かりやすい】腰-仙骨神経叢に関連する筋肉と支配神経まとめ
まずは、サクッと全体像を抑えていきましょう。
腰-仙骨神経叢のうち、腰神経叢は6個、仙骨神経叢は5個あります。
- 腸骨下腹神経
- 腸骨鼠径神経
- 陰部大腿神経
- 外側大腿皮神経
- 閉鎖神経
- 大腿神経
- 上殿神経
- 下殿神経
- 後大腿皮神経
- 坐骨神経
- 陰部神経
腰神経叢の分節、支配筋、皮枝
①腸骨下腹神経
分節 | 支配する筋肉 | 皮枝 |
Th12-L1 | 腹横筋 内腹斜筋 | 前皮枝 外側皮枝 |
筋肉を支配している末梢神経を筋枝と言い、皮膚を支配している末梢神経を皮枝と言います。
②腸骨鼠径神経
分節 | 支配する筋肉 | 皮枝 |
L1 | 腹横筋 内腹斜筋 | 男性の前陰嚢神経 女性の前陰唇神経 |
③陰部大腿神経
分節 | 支配する筋肉 | 皮枝 |
L1-2 | 男性の精巣挙筋 | 陰部枝 大腿枝 |
④外側大腿皮神経
分節 | 支配する筋肉 | 皮枝 |
L2-3 | – | 外側大腿皮神経 |
外側大腿皮神経は筋肉を収縮させたりするような神経ではなく、純粋に皮膚にだけ分布している末梢神経なんじゃな!
⑤閉鎖神経
分節 | 支配する筋肉 | 皮枝 |
L2-4 | 外閉鎖筋 前枝:長内転筋・短内転筋・薄筋・恥骨筋 後枝:大内転筋 | 皮枝 |
外閉鎖筋は閉鎖神経(腰神経叢)、内閉鎖筋は仙骨神経叢の支配を受けるんじゃ!
⑥大腿神経
分節 | 支配する筋肉 | 皮枝 |
L2-4 | 腸腰筋 恥骨筋 縫工筋 大腿方形筋 | 前皮枝 伏在神経 |
仙骨神経叢の分節、支配筋、皮枝
①上殿神経
分節 | 支配する筋肉 | 皮枝 |
L4-S1 | 中殿筋 小殿筋 大腿筋膜張筋 | – |
②下殿神経
分節 | 支配する筋肉 | 皮枝 |
L5-S2 | 大殿筋 | – |
中殿筋と小殿筋は上殿神経支配、大殿筋は下殿神経支配なんじゃ。
ここは結構間違えやすいところなのでしっかり押さえておこう!
③後大腿皮神経
分節 | 支配する筋肉 | 皮枝 |
L1-S3 | – | 後大腿皮神経 -下臀皮神経 -会陰枝 |
後大腿皮神経は筋肉への投射はなく、純粋に皮膚感覚を司どる神経なんじゃ。
④坐骨神経
分節 | 支配する筋肉 | 皮枝 |
L4-S3 | 半腱様筋 半膜様筋 大腿二頭筋(長頭・短頭) | – |
⑤陰部神経
分節 | 支配する筋肉 | 皮枝 |
S2-S4 | 骨盤底筋群 -肛門挙筋 -浅会陰横筋 -深会陰横筋 -球海錦体筋 -外肛門括約筋 -尿道括約筋 | 下直腸神経 会陰神経 -後陰唇神経(女性) -後陰嚢神経(男性) -陰核背神経(女性) -陰茎背神経(男性) |
仙骨神経叢の主要分枝である陰部神経は、骨盤底、会陰、外陰部の皮膚と筋へ分布するぞ。
支配神経が『仙骨神経叢』となっている筋肉とそのワケ
国家試験勉強などを行っていると、支配神経として『仙骨神経叢』と明記されている筋肉を見たことがありませんか?
ちなみに、その筋肉とは以下5筋です。
- 梨状筋
- 内閉鎖筋
- 大腿方形筋
- 上双子筋
- 下双子筋
これはどういうことかと言いますと、仙骨神経叢を形成している筋枝(例えば坐骨神経)は通常、仙骨神経叢から出た後に複数の筋肉に対して投射していきます。
しかし、仙骨神経叢から出ていく神経の中には「名称がついていないほど短く小さな筋枝」というのがいくつかあり、それらに支配されている筋肉というのが梨状筋・内閉鎖筋・大腿方形筋・上双子筋・下双子筋です。
そして名称がないからこそ、これら筋肉の支配神経は『仙骨神経叢』ということになるのです。
ちなみに、これは腰神経叢でも同じことが言えます。
腰神経叢の中でも大腿神経等のような名称がつかない、短く小さな筋枝に支配されている筋肉は以下です。
- 大腰筋
- 腰方形筋
- 腸骨筋
- 腰横突間筋
これら4つの筋肉は腰神経叢からも(短く小さな神経)支配を受けています。
腰仙骨神経叢損傷の原因
ここまで解剖学の知識をお伝えしてきましたが、最後にこれら腰-仙骨神経叢由来の末梢神経が損傷される際の原因について解説したいと思います。
結論からいうと、外傷・圧迫・牽引・絞扼などが起因となって損傷されることが多いです。
ちなみに原因の一つである外傷は、急性外傷と慢性外傷に分類されるのですが、急性外傷による末梢神経損傷では交通事故やボディコンタクトが多いスポーツなど大きな外力が身体に加わることで損傷することが多いです。
一方で、慢性外傷による末梢神経損傷ではスポーツや仕事における反復的な小さな外傷、ギプスや装具の不適合など繰り返しの微細な外力で生じることが多いです。
また、慢性外傷による末梢神経損傷が出現しやすい特徴として、後脛骨神経などのように神経そのものが筋膜や靭帯などの組織に包まれているところで生じやすいです。
これを絞扼性神経障害といいます。
このように、解剖学の知識と一緒に臨床像も含めて覚えられると、知識が定着しやすくなるのでぜひ押さえておいてください。
参考文献
1)プロメテウス解剖学アトラス
2)標準理学療法学・作業療法学 解剖学
3)機能障害科学入門
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