この記事では腕神経叢について一覧でまとめています。
腕神経叢とは、主に上肢・体幹に繋がる神経が複数合わさっているものを指します。
できる限り覚えやすいように、分かりやすくまとめていますのでぜひご活用ください。
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また、腕神経叢に関連するものとして腰-仙骨神経叢というものがありますが、これに関しても別の記事で紹介していますので興味がある方はそちらもご覧ください。
腕神経叢一覧~分節、支配筋、皮枝まとめ~
【腕神経叢は全部で16個】覚えやすくなる2つのステップ
腕神経叢は全部で16個あります。
- 肩甲背神経
- 肩甲上神経
- 長胸神経
- 鎖骨下筋神経
- 肩甲下神経
- 胸背神経
- 内側胸筋神経
- 外側胸筋神経
- 内側上腕皮神経
- 内側前腕皮神経
- 肋間上腕神経
- 筋皮神経
- 腋窩神経
- 橈骨神経
- 正中神経
- 尺骨神経
16個もあるとパッと見せられても頭に入ってこないという方が多いかと思います。
そこで!
そんな時に以下2つのステップを踏むと覚えやすいので、ぜひ参考にしてみてください。ポイントは『鎖骨』です。
- 鎖骨のどこから出る神経なのかを分ける
- 鎖骨の下から出る神経を短枝と長枝に分ける
①鎖骨のどこから出る神経なのかを分ける
まず、腕神経叢のうち上肢・体幹へ繋がる神経が鎖骨の上から出るのか下から出る(派生する)のかで分けます。
具体的には、腕神経叢という神経の束が鎖骨の上から出ているというのをまず覚えます。
そして、それら神経が下行していくと鎖骨の下でさらに細かく派生するのですが、一旦はこの2つのグループに分けて覚えると理解しやすいです。
ちなみに、鎖骨の上から出る神経は4個、鎖骨の下で派生する神経は12個あります。
- 肩甲背神経
- 長胸神経
- 肩甲上神経
- 鎖骨下筋神経
鎖骨の上から出ていく上記4つの神経のみであれば覚えやすいですが、鎖骨の下から出たり派生する神経は全部で12個もあってこれだとまだ覚えにくいですよね。
そんな時に2つ目のステップへ移ります。
②鎖骨の下から出る神経を短枝と長枝に分ける
鎖骨の下から出る神経は短枝と長枝に分けることができます。
短枝には7つあり以下に神経を一覧で示します。
- 肩甲下神経
- 胸背神経
- 内側胸筋神経
- 外側胸筋神経
- 内側上腕皮神経
- 内側前腕皮神経
- 肋間上腕神経
一方で長枝には5つあり、それが以下です。
- 筋皮神経
- 腋窩神経
- 橈骨神経
- 正中神経
- 尺骨神経
イメージとしては、いわゆる『肩甲骨や体幹』に伸びていくのが短枝、『上肢』に伸びていくのが長枝と覚えると理解しやすいかと思います。
腕神経叢の分節、支配筋、皮枝
鎖骨の上から出る神経
①肩甲背神経
分節 | 支配筋 | 皮枝 |
第3-5頸神経 | 肩甲挙筋、大菱形筋、小菱形筋 | – |
②肩甲上神経
分節 | 支配筋 | 皮枝 |
第4-6頸神経 | 棘上筋、棘下筋 | – |
③長胸神経
分節 | 支配筋 | 皮枝 |
第5-7頸神経 | 前鋸筋 | – |
④鎖骨下筋神経
分節 | 支配筋 | 皮枝 |
第5-6頸神経 | 鎖骨下筋 | – |
筋肉を支配している末梢神経を筋枝と言い、皮膚を支配している末梢神経を皮枝と言います。
鎖骨の下から出る短枝
①肩甲下神経
分節 | 支配筋 | 皮枝 |
第5-6頸神経 | 肩甲下筋、大円筋 | – |
②胸背神経
分節 | 支配筋 | 皮枝 |
第6-8頸神経 | 広背筋 | – |
③内側胸筋神経
神経 | 支配筋 | 皮枝 |
第5頸神経-第1胸神経 | 大胸筋、小胸筋 | – |
④外側胸筋神経
神経 | 支配筋 | 皮枝 |
第5頸神経-第1胸神経 | 大胸筋、小胸筋 | – |
⑤内側上腕皮神経
分節 | 支配筋 | 皮枝 |
第1胸神経 | – | 内側上腕皮神経 |
⑥内側前腕皮神経
分節 | 支配筋 | 皮枝 |
第8頸神経、第1胸神経 | – | 内側前腕皮神経 |
皮神経とは、筋肉を収縮させたりするような神経ではなく純粋に皮膚にだけ分布している末梢神経です。
よって支配している筋はありません。また、皮神経と皮枝は同じ意味で使われます。
⑦肋間上腕神経
分節 | 支配筋 | 皮枝 |
第1,2胸神経 | – | 外側皮枝 |
鎖骨の下から出る長枝
①筋皮神経
分節 | 支配筋 | 皮枝 |
第5-7頸神経 | 烏口腕筋、上腕二頭筋、上腕筋 | 外側前腕皮神経 |
②腋窩神経
分節 | 支配筋 | 皮枝 |
第5.6頸神経 | 三角筋、小円筋 | 上外側上腕皮神経 |
③橈骨神経
分節 | 支配筋 | 皮枝 |
第5頸神経-第1胸神経 | 上腕筋(補助)、上腕三頭筋、肘筋、棘筋、腕橈骨筋、長橈側手根伸筋、短橈側手根伸筋、指伸筋、小指伸筋、尺側手根伸筋、長母指伸筋、短母指伸筋、示指伸筋、超母指外転筋 | 下外側上腕皮神経 後上腕皮神経 後前腕皮神経 橈骨神経の浅枝 |
④正中神経
分節 | 支配筋 | 皮枝 |
第6頸神経-第1胸神経 | 円回内筋、方形回内筋、長掌筋、橈側手根屈筋、長母指屈筋、深指屈筋(1/2)、浅指屈筋、短母指外転筋、母指対立筋、短母指屈筋(浅頭)、第1・2虫様筋 | 正中神経の掌枝 総・固有掌側指神経 |
⑤尺骨神経
分節 | 支配筋 | 皮枝 |
第8頸神経.第1胸神経 | 尺側手根屈筋、深指屈筋(1/2)、短掌筋、小指屈筋、小指外転筋、小指対立筋、母指内転筋、短母指屈筋(深頭)、掌側・背側骨間筋、第3・4虫様筋 | 尺骨神経の掌枝 尺骨神経の背枝 背側指神経 総・固有掌側指神経 |
深指屈筋は正中神経と尺骨神経の二重神経支配で、上腕筋は筋皮神経と橈骨神経の二重神経支配なので間違えないようにしましょう!
内側胸筋神経と外側胸筋神経の違いとは?
内側胸筋神経と外側胸筋神経が支配神経、支配筋、皮枝は一緒で教科書によってはまとめて記載してあります。
では、この二つは具体的にどのような違いがあるのでしょうか?
結論から言うと、「神経の通り道」に違いがあります。
鎖骨の下へ伸びた神経は前後に分かれます。その後ろから出た神経は内側と外側と後方へ分かれます。
分かれたそれぞれの神経を「内側神経束」、「外側神経束」、「後神経束」と呼びます。
内側胸筋神経は内側神経束から出ていて外側胸筋神経は外側神経束から出ています。
このように内側と外側の神経束というそれぞれ違う道を通って最終的には同じ領域を支配しています。
そのため、支配神経、支配筋、皮枝は一緒であるが神経の名称が2つ存在します。
また、大胸筋と小胸筋は内側胸筋神経と外側胸筋神経の二重神経支配となりますので、ここも併せて抑えておきましょう。
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