脳卒中後に生じる反張膝の改善トレーニングを紹介

脳卒中後のリハビリテーションに携わっている方であれば、一度は経験したことがあるであろう反張膝(back knee)

この現象は、脳卒中後に生じる歩行障害の一つであり、改善したいと願う患者様やセラピストの皆さんはとても多いのではないでしょうか?

今回は、この反張膝に対する介入方法について海外の知見をベースにしながら解説していきます。

この記事を最後まで読めば、早速明日の臨床から反張膝に対する介入方法のバリエーションが一つ増えるのではないかと思いますので、ぜひ最後までご覧ください。

目次

脳卒中後に生じる反張膝の改善トレーニングを紹介

反張膝に対するトレーニングの目的(対象)

実際のトレーニング内容をお見せする前に、まずは…

どういう人にこのトレーニングが有効なのか?

という点を抑えておきたいと思います。

今回ご紹介する反張膝のトレーニングは何らかの機器を用いるわけではなく、患者様の身体一つでやっていただくものになります。

そして、セラピストが他動で動かして何かするということでもなく、患者様自身に動いて頂く必要があります。

よって、この後紹介するトレーニングは…

継続的に反張膝(棒の様になる)状態が続くことで、CKCにおいて膝の曲げ方(運動イメージ)が分からなくなった方におすすめの方法

であると個人的には思っています。

つまり、立位場面における膝関節の動きを再学習するためのトレーニングという位置付けですね。

では、これを踏まえた上で実際のトレーニングを紹介していきます。

反張膝の改善トレーニングの実際

以下の写真をご覧ください。

参考文献

Effectiveness of prowling with proprioceptive training on knee hyperextension among stroke subjects using videographic observation- a randomised controlled trial.Dalal KK,2018

以下、内容を明記していきますので上に添付している写真を見ながら擦り合わせてください。

トレーニング内容
  1. ハーフスクワット(軽く膝を曲げる)
  2. 片脚立ち※1人で行う場合は何かに掴まってもOK
  3. 片脚立ちのままハーフスクワット
  4. 両膝を軽く曲げたままその場で一周回る

以上、この4段階が反張膝に対するトレーニングになります。

それでは次に、実際にこのトレーニングには効果があるのか否かについてご説明します。

反張膝に対するトレーニングの効果

結論から言いますと、効果はあったようです。(Dalal.2018)

対象となった患者様は脳卒中後急性期〜慢性期の方32名で、このうち一般的な運動療法を実施する群本トレーニングを実施する群にランダムに割り振られ実施しました。

その結果、本トレーニングを実施した群において以下のような部分にて改善が見られました。

3つの改善ポイント

  1. 膝関節過伸展の減少
  2. 歩行立脚期における足関節背屈角度の増加
    →立脚期に足関節の背屈角度が増加するということは膝関節の屈曲角度が増加しているということ=反張膝が減少
  3. WGSスコアの改善
    →本研究で用いられた歩行の質的要素を分析する評価

なお、「どれくらい本トレーニングを実施すると反張膝の軽減が得られるのか?」ということですが、これに関しては以下のような結果でした。

一日約20分間トレーニングを行い、これを6日間〜10日間継続して行うことで反張膝が軽減した。(Dalal.2018)

反張膝改善トレーニングを用いる際の注意点

それでは、最後に本トレーニングを用いる際の注意点について触れておきたいと思います。

注意点は大きく2つです。

①内反が強い患者様は除外されていることに留意する必要がある

本研究の除外基準の一つに、『足関節の痙縮が強い患者様は対象から除外する』という記載がありました。

つまり、内反が強い患者様ですね。

ということは、反張膝があるからといってむやみやたらと本トレーニングを持ちれば良いというわけではなく、きちんと病態解釈を行った上で必要であれば用いるという思考が必要かと思います。

②立位に中等度以上の介助を要する方には不向きかも

先ほど添付したトレーニング実施中の写真を見てもらうとわかる通り、このトレーニングは立位でかつ片脚立位その場で回るといった動作を必要とします。

よって歩行時に反張膝はあるが、そもそも1人で立つことにも大きな介助を要する状態であれば、まだこのトレーニングは難易度が高いかと思いますので、おすすめできません。

そのような場合は、まずは立位がある程度安定し介助量が減ってから実施したほうが良いかもしれません。

以上、今回紹介した方法は特別な道具も必要なくコストもかからないので、比較的やりやすいと思います。

ただし、実施する場合には、2つの留意点を考慮することを必ず忘れないよう確認をお願い致します。

それでは、皆さんの明日の臨床が少しでも前に進むこと祈っております。

参考文献

Effectiveness of prowling with proprioceptive training on knee hyperextension among stroke subjects using videographic observation- a randomised controlled trial.Dalal KK,2018

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次