【CRPS治療の最前線】 意識的・無意識的な運動連携の秘密

CRPS(Complex Regional Pain Syndrome:複合性局所疼痛症候群)は、外傷や手術後に発生することが多い慢性的な疼痛と感覚・自律神経・運動機能の障害を特徴とする症状群です。

CRPSは主に以下2つのタイプに分類されます。

  1. CRPSタイプⅠ:明確な神経損傷が認められない場合に診断される。外傷や骨折などが要因となることが多い。
  2. CRPSタイプⅡ:明確な末梢神経損傷が認められる場合に診断される。神経を直接損傷する外傷や手術が原因となることが多い

今回は、過去の先行研究からCRPSの治療法として有効性が示唆される方法を一つご紹介していきたいと思います。

現在、CRPSを含む難治性の慢性疼痛のリハビリテーションに携わっている方はぜひ最後までご覧ください。

目次

【CRPS治療の最前線】 意識的・無意識的な運動連携の秘密

今回、参考にさせていただいた論文はこちらです。

研究の背景

CRPSは、慢性疼痛を伴う疾患で運動機能にも影響を与えます。

特に片側性上肢のCRPS患者における運動障害というのは、両手の意識的or無意識的な運動連携に関わる神経回路の機能不全が関連しているとされています。

この研究では、片方の腕に痛みがあるCRPS患者の人たちが、両手を使うときに問題が起こることを調べています。

研究内容

20人のCRPS患者と40人の健常者を対象に、両手の運動連携に関する課題を行いました。

具体的には、片方の腕に痛みがあるCRPS患者と、痛みのない健康な人たちに対して、いくつかの手や腕を使う動きをしてもらいました。

運動には2パターンあって、①意識して両手を動かす運動と、②意識しないで動かす運動があります。

意識する運動では、特殊な機械を用い対象者が自分の意思で手首の動きをコントロールする運動です。

一方意識せずに動かす動きでは、患側の運動を意識から外しリズムに合わせて両手を動かす運動が挙げられます。

Intended and unintended (sensory-)motor coupling between the affected and unaffected upper limb in complex regional pain syndrome.Bank PJ,2015より引用

研究者たちは、これら課題を行っている時にCRPS患者と健康な人たちにどのような運動の違いが見られるか、そして痛みのある方の手がうまく動かせるかどうか、といった点を比較しました。

研究の結果

研究の結果、CRPS患者では、両手における意識的な運動の連携が障害されることが分かりました。

要は、患側の手を意識的に動かすと運動障害が強くなったということですね。

一方で、両手の無意識的な運動では運動障害が改善される傾向がありました。

すごく噛み砕いて解説すると…

  • CRPS患者の場合、両手を同時に動かす際、意識して動かす運動と、意識せずに動かす運動の違いがあることが分かった
  • 意識して動かす運動では、痛みのある方の手がうまく動かせなくなることがあった。しかし、意識せずに動かす運動ではそういった問題が起こりにくいことが分かった。

運動障害の原因

CRPS患者において、意識して両手を動かす運動を行うと運動障害が強くなる理由は、以下3つが問題として示唆されています。

  1. 痛み関連プロセス
  2. 感覚運動機能の障害
  3. 意図的な運動連携の障害

この3つを詳しく解説しようとすると、痛みが生じている時の脳内メカニズムを一から解説する必要があるのでここでは割愛しますが、ものすごく簡単にいうと…

「意識的に運動を行うときの運動実行回路と、痛み関連領域というのが結構被っていて、それが要因となり痛みが強くなったり運動障害がしゅおじてしまうんじゃないか?」

というのが現状の考察です。

無意識的な動作の利点

無意識的な動作が運動障害を改善する理由は、反射的な動作や自動的な動作に関連する低次の神経回路に依存している割合が高いことから、意図的な運動連携の障害が影響を与えにくいためと考えられています。

つまり、CRPS患者においては痛みや運動そのものにあまり注意を向けさせない方が意外と良い結果を呼び込むのかもしれません。

リハビリテーションへの応用

この研究の結果から、まず第一にCRPSのリハビリテーションにおいて、患側の手と健側の手を同時に動かす「両手」を組み込むことの重要性を示唆しています。

なぜならば、片手の運動だけだとどうしても意識的な課題しか実施できないからです。

よって、『両手』というのは一つ重要な課題設定になります。

そして第二に抑えるべきは、この研究で明らかになったことである『無意識的な運動』になる課題が重要という点です。

両手であれ意識的な運動の連携が障害されるCRPS患者において、無意識的な運動を活用することで運動障害の改善が期待できます。

両手+無意識で行える運動課題って何がある?

無意識的に両手を動かす課題は、主に自動的リズミカルな動作反射的な動作を含むものがあります。以下は、無意識的に両手を動かす課題の例です。

  1. バイシクル・エクササイズ:難易度☆
    両手で空中に自転車をこぐような動作を行うことで、無意識的に両手を同時に動かすことができます。
  2. ハンドタッピング:難易度☆
    リズミカルに両手でテーブルや自分の太ももなどを交互に叩く動作です。適度な速さで行うことで、無意識的に連続した動作を行うことができます。
  3. ボールパス:難易度☆☆☆
    両手でボールをキャッチしたりパスしたりする動作です。練習を重ねることで、無意識的に両手を使ってボールを操作できるようになります。
  4. ドラム演奏:難易度☆☆☆☆☆
    ドラムを叩く動作は、リズム感を持って無意識的に両手を動かすことが求められます。練習を重ねることで、無意識的な連続した動作が可能になります。
  5. ジャグリング:難易度☆☆☆☆☆
    ボールなどを使用して空中で交差させる動作を行います。ジャグリングは、無意識的に両手を使ってアイテムを操作する技術を磨くことができます。

CRPSのリハビリテーションまとめ

CRPS患者において、意識的な運動の連携が障害されることが明らかにされましたが、両手の無意識的な運動を活用することで運動障害が改善される可能性があります。

リハビリテーションを進める際は、両手を同時に動かすことで無意識的な運動連携を活用し運動機能の回復を促すことが期待できます。

ぜひ、皆さんの明日の臨床の参考になれば幸いです。

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参考文献

[1] Bank PJ, Peper CE, Marinus J, van Hilten JJ, Beek PJ. (2015) Intended and unintended (sensory-)motor coupling between the affected and unaffected upper limb in complex regional pain syndrome. Eur J Pain, 19(7):1021-34.

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