屈曲反射を利用し麻痺側下肢の筋活動を起こす方法

今回は、筋出力が随意的には引き出せない病態を持つ患者様に対して有効な方法論を一つご紹介していきたいと思います。

『筋出力が随意的に引き起こせない病態』で代表的なケースといえば脳卒中などが挙げられますが、今回はそういった方に対する介入方法の一案となります。

目次

屈曲反射を利用し麻痺側下肢の筋活動を起こす方法

脊髄反射のおさらい〜伸張反射と屈曲反射〜

本題に入っていく前に、まずは神経生理学のおさらいです。

僕ら動物には、『脊髄反射』と言われる神経機構が存在しています。

この脊髄反射は大きく2種類あって、それが『伸張反射』『屈曲反射』です

伸張反射

伸張反射が生じるメカニズを表すとざっとこんな感じです。

伸張反射のメカニズム
  1. 筋肉に伸張刺激が加わる
  2. Ia感覚ニューロンが脊髄後角へ
  3. 脊髄前角にてα運動ニューロンへシナプス
  4. 当該筋(伸張した筋肉)が収縮する

屈曲反射

次に屈曲反射のメカニズムを以下に示します。

屈曲反射のメカニズム
  1. 効果器に侵害刺激が加わる
  2. 感覚ニューロンが脊髄後角へと向かい介在ニューロンへシナプスする
  3. 介在ニューロンを介し運動ニューロンへシナプスする
  4. 複数の筋が収縮し逃避反射(屈曲反射)が生じる

図にも書いていますが、伸張反射と屈曲反射のI番の違いというのは、反射が生じるときの『トリガー』です。

伸張反射のトリガーは当該筋に伸張刺激が生じることですが、屈曲反射の場合そのトリガーは『侵害刺激』になります。

侵害刺激というのは、身体に何かしら異常が生じているということを示すものになるため、屈曲反射は伸張反射に比べて反射強度が強くなるのもその特徴の一つです。

で、それらを踏まえた上で…

おそらく臨床現場で方法や病態メカニズムを説明するときに用いられるのは『伸張反射』の方だと思うんです。(痙縮とか)

一方で、今回フォーカスを当てたいのは『屈曲反射』の方でして、これをどうにか臨床で応用できないだろうか?というそんな話しをしていきたいと思います。

屈曲反射の応用〜『Reflex Receptive Fields:RRF』を利用する〜

繰り返しですが、屈曲反射は生体に何らか侵害刺激が加わったとき筋活動もしくは関節運動が生じる反射ですが、この侵害刺激を生じさせるポイントのことを『反射受容野:Reflex Receptive Fields(RRF)』といいます。(Spaich EG,2005)

このRRFは、下肢の筋活動もしくは下肢関節運動を生じさせる際、実はそのポイントが異なっています。

要は、「どのRRFを刺激するかで生じる筋活動や関節運動が変化する」ということですね。

つまり、このRRFと下肢の筋活動/関節運動の組み合わせを把握することができれば、リハビリテーションにおいて屈曲反射を応用できるのではないかという仮説が生まれるわけです。

で、実際にその組み合わせがどうなっているかを調べている研究がこちらです。

参考文献

Repetitive painful stimulation produces an expansion of withdrawal reflex receptive fields in humans. Spaich EG,2005

では、早速この研究によって明らかになったRRFと筋活動/関節運動の組み合わせについてご紹介していきますね。

RRFと下肢筋活動/関節運動の組み合わせ

結論を述べる前に、まずは簡単にこの研究で行った条件設定について触れておきます。

今回RRFのターゲットとなったのは『足底』です。

足底部の中に10箇所ポイントをつくり、各ポイントに対して電気刺激(全部で5回ずつ)を行っていきました。

そして、この各ポイントを刺激した時に「どの筋に筋活動が生じるのか、もしくはどのような関節運動(足関節/膝関節/股関節)が生じるのか」これを見ていったわけです。

Repetitive painful stimulation produces an expansion of withdrawal reflex receptive fields in humans. Spaich EG,2005より引用

ちなみに、今回発揮させたい筋活動の対象となった筋肉は以下です。

対象となった筋肉
  • 前脛骨筋(TA)
  • 外側広筋(VL)
  • 大腿二頭筋(BF)
  • 腸腰筋(IL)

それでは、足底部のRRFと上記に示すこれら筋肉の筋活動がどのような関係性になったのか。

結果に加えて臨床への応用方法、そして注意点について丁寧に解説していきます。

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