【脳卒中評価法】Functional Assessment for Control of Trunk:FACTについて分かりやすく解説!

a man wearing a prosthetic leg

脳卒後遺症患者様に対して体幹機能を評価をする場面ってよくあるかと思います。

その際、用いる評価バッテリーには『Stroke Impairment Assessment Set:SIAS』や『Trunk Control Test:TCT』、『Trunk Impairment Scale:TIS』などがあります。

これらの評価は海外のシステマティック・レビュー等においてもよく用いられており、その有効性や信頼性も非常に高いです。

が、一方でこれら優秀な評価バッテリーにもいくつか限界点というかカバーできない点というのが実はあり、これら問題点をリカバリーしようぜということで作られた体幹機能検査が『『Functional Assessment for Control of Trunk:FACT』という評価バッテリーです。

今回は、このFACTについて『方法』や『カットオフ値』、『実施する際のポイント』などについて分かりやすく解説していきたいと思います。

こんな人におすすめ
  • 現在『脳卒中リハビリテーション』に携わっている
  • 脳卒中後遺症患者様の体幹機能を評価する方法を知りたい
  • 他の体幹機能評価との違いを知りたい

※評価項目を全てご覧になりたい方は、以下目次から「評価項目一覧」をタップしてください。

目次

【脳卒中評価法】Functional Assessment for Control of Trunk:FACTについて分かりやすく解説!

FACTとは

FACTとは『Functional Assessment for Control of Trunk』の略で、主に脳卒中後遺症患者様を対象に奥田らによって作られた体幹機能検査法です。

全10項目20点満点で構成され、得点が高いほど体幹の運動機能が高いと解釈することができます。

なお、FACTと歩行の自立度には相関があるとされていてそのカットオフ値は14点となっています。

FACTの点数が14点を超えることが歩行自立の目安になる

また補足として、急性期脳卒中後遺症患者様において、約3週間の理学療法介入を行い4点以上の変化があった場合は、「体幹機能が改善した」とすることを明らかにした先行研究が行わています。

FACTと他の体幹機能評価の関係

体幹機能検査法の中でFACTはそこそこ後発の評価バッテリーなんです。

というのが、冒頭でもお伝えしたように体幹機能の評価バッテリーには元々『SIAS』や『TCT』、『TIS』というのが先にあったんですね。

ただ、これら評価にはそれぞれ欠けている部分というのがいくつかあり、いくつかその例をご紹介します。

SIASの欠点

例えば、SIASは『脳卒中の機能障害を定量化するための総合評価セット』ですが、SIASで可能な体幹機能の評価って『腹筋力』と『体幹の垂直性』の2つしかないんです。

人は、手を伸ばしたり足を動かしたり様々な運動を行いますが、その際に必ず先行的に働くのが『体幹』です。

要は、「腹筋の強さだけ」が「真っ直ぐ体を起こすだけ」が体幹の機能ではないんですね。

つまり、この2つのみだと機能的に備わっている体幹筋力を評価することができないわけです。

TCTの欠点

TCTは「患側への寝返り」、「健側への寝返り」、「起き上がり」、「座位保持」という4つの基本動作からなる評価法です。

介助や代償動作の有無等で点数が決まるのですが、ここでのポイントは「そこそこ能力の高い方であればサクッと満点が取れてしまう」という問題です。

そうすると、きちんと体幹機能の問題を見定めることができないので、TCTのみだと精査が困難な場合があったりするわけです。

TCTは、ベッド上にて麻痺側や非麻痺側への寝返りや起き上がりなどの動作能力を評価するものであり、理学療法場面で広く使用されている。しかし、能力の高い対象者では天井効果が得られやすいなどの問題点も指摘されてい
る。

急性期脳卒中患者におけるFunctional Assessment for Control of Trunk(FACT)の反応性および臨床的に意義のある最小変化量の検討

TISの欠点

TISも体幹機能検査として海外でもよく用いられていますが、この評価法の問題点。

それは、SIASやTCTとは打って変わって今度は「評価項目が多すぎる」という点です。

TISは『静的座位バランス』、『動的座位バランス』、『 体幹の協調性』という3つの要素を詳細に評価することが可能な一方で、その量は全17項目もあるのです。

しかも、体幹機能評価は脳卒中後遺症患者様にとって簡単かと言われると全然そんなことはなくって、全身運動なので結構きついんですね。

だからこそ、TISは詳細に評価できるというメリットがある一方、臨床では使いにくいという問題点を孕んでいるのです。

FACTはそれら欠点を全て解決した評価バッテリー

で、ここまでいくつか紹介した体幹機能評価法における欠点を補い解決した評価法が『FACT』なんです。

“単純な体幹の運動機能”のみではなく、四肢の随意運動を含めた機能的な体幹の運動を評価することが可能です。

しかし、かといってその評価項目が莫大かというとそうでもなく、全部で10項目に厳選されており全ての評価を行っても5分以内に終えるような仕様になっています。

FACTのここがスゴイ!

FACTは体幹機能という抽象的な能力を他の体幹機能評価指標と比べ、より多くの視点から評価している。

急性期脳卒中患者におけるFunctional Assessment for Control of Trunk(FACT)の反応性および臨床的に意義のある最小変化量の検討

他の評価方法との違いをまとめるとこんな感じです。

静止座位保持能力動的座位保持能力体幹の協調性
SIAS××(筋力は◯)
TCT××
TIS
FACT
TISは三項目全て評価可能だが評価項目が多く時間と対象者の疲労が大きいというデメリットがある

FACTは脳卒中以外にも使える

最近FACTは、脳卒中後遺症患者様以外の方を対象とした研究も進んでいます。

柴らが地域在住要支援・要介護者を対象にFACTと身体機能の関係を調査した研究があるのですが、そこでは…

介護度、TUG、最大歩行速度、30秒椅子立ち上がりテスト、片脚立位、移動自立度において男女ともに(FACTと)有意な相関が認められた。

地域在住要支援・要介護高齢者における臨床的体幹機能検査(FACT)と身体機能の関連.柴 隆広,2020

TUG:Timed Up and Go Test

としており、つまりこれは…

「要支援・要介護者の体幹機能と身体運動機能には関連がある」と解釈することができます。

よって、脳卒中後遺症患者様以外の要支援・要介護といった方の体幹機能の評価にもFACTは十分活用できるかと思います。

定期的に測定する評価項目として採用し、治療に対する効果判定の一つとして考えてみてはいかがでしょうか?

FACTの評価項目一覧

  1. 上肢で手すりなどを支持して10秒以上端座位保持可能かをみる
    可能:1点 不能:0点
  2. 上肢支持なしで10秒以上端座位保持可能かをみる
    可能:1点 不能:0点
  3. 片側の手で反対側の足首を握って戻る
    可能:1点 不能:0点
  4. 両側臀部を持ち上げ左右に移動する
    可能:2点 不能:0点
  5. 片側臀部を座面から3秒以上離す
    両側:2点 片側:1点 不能:0点
  6. 片側大腿部を持ち上げ足底面を床面から3秒以上離す
    両側:2点 片側:1点 不能:0点
  7. 両側足底面を床面から3秒以上離す
    可能:2点 不能:0点
  8. 前後へのお尻歩き
    可能:3点 不能:0点
  9. 仙骨より20cm後方に置いた検者の指の本数を肩越しに見て答える
    可能:3点 不能:0点
  10. 片側上肢を最大挙上(肩関節屈曲)することで脊柱の最大伸展をみる
    可能:3点 不能:0点

FACTを実施する際の注意点

最後に、臨床でFACTを実施する際の注意点について触れておきます。

FACTを実施する際には、患者様そしてセラピストの視点でそれぞれ注意すべき点が1つずつあります。

①患者様の状態で注意すべき点

患者様に対する注意点としては、検査前の活動状態が検査結果に影響する可能性があるということです。

要するに、FACT測定前に寝ていた人と歩行練習していた人、午前中に検者した人と午後に検査した人では結果にバラツキが出やすいと考えられます。

よって、FACTを実施する際のリハビリ前にはできる限り患者様に起きてもらっておくこと。

また、「FACTを行うタイミングは毎回同じにする」といった一工夫を加えると検査の正確性が上がるでしょう。

②セラピストが注意すべき点

これは、FACTを実施する人によって判定にバラツキが生じないように、予めセラピスト間で判定についての意見をすり合わせておくということです。

1人の患者様に対して異なるセラピスト間でFACTを実施するケースは稀だとは思いますが、時折代行で介入した際にFACTの中の項目を抜粋して他のセラピストの方が評価することがあります。

この時、「これは1点だろう/0点だろう」と解釈するラインがセラピスト間でズレていると紙面上の体幹機能が変わります。

こうなると、患者様本人との実態にズレが起きてしまう可能性があるので、結果に対する解釈(ライン)は事前にセラピストの皆さんでしっかり意見交換しておきましょう。

参考文献

1)臨床的体幹機能検査(FACT)の開発と信頼性.奥田裕,2006

2)急性期脳卒中患者における Functional Assessment for Control of Trunk(FACT)の反応性および臨床的に 意義のある最小変化量の検討.菅博貴,2019

3)地域在住要支援・要介護高齢者における臨床的体幹機能検査(FACT)と身体機能の関連.柴 隆広,2020

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