【療法士必見】臨床推論で失敗しがちな2つの思考パターン

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理学療法士や作業療法士の皆さんが働く臨床現場では、日々患者様が抱える病態を紐解き、そしてその病態解釈に基づいた方法論を意思決定するということが常に行われています。

このような、病態解釈から方法論を意思決定するまでの一連の営みを『臨床推論』と言ったりしますが、今回はこれら臨床推論を行っていく際、理学療法士や作業療法士の方が失敗しがちな思考パターンについて解説していきたいと思います。

こんな人に見てほしい
  • 臨床推論が苦手である
  • 臨床でよく思考がフリーズする
  • 短絡的な臨床推論になっていると感じている
目次

【療法士必見】臨床推論で失敗しがちな2つの思考パターン

臨床推論を行う際に、よく誤りがちな思考パターンは大きく2つあって、それが…

  1. 具体→具体な臨床推論
  2. 抽象→抽象な臨床推論

であり、臨床推論がうまく行えない人のほとんどは大体この2つのどちらかの問題に陥っていることが多いです。

では、この2つそれぞれどういった問題なのか。それを具体的に解説していきます。

具体→具体な臨床推論

具体→具体な臨床推論というのは、「具体的な問題点を見つけた時に、その具体化された問題に対して打ち手を講じる」ことを言います。

例えば、よくあるケースとしてはこんな感じです。

具体→具体な臨床推論の例
  • 「A筋とB筋に筋力低下が見られる」という具体的な事象に対して…
  • 「A筋とB筋の筋力訓練をひたすら行う」という単純な打ち手を講じる

このような、具体→具体な臨床推論の問題点は「表面的な問題解決にしかならないことが多い」という点が挙げられます。

例えばこのケースであれば、筋力低下が生じている筋肉に対して筋トレしたところで根本的な解決にはならない、のはなんとなく想像がつくと思います。

具体的な問題は一度抽象化しなければならない

具体的な問題に目を付けるというところまではいいのですが、ここで大事なこと。

それは、具体的な問題は一度抽象化するということです。

抽象化というのは、具体的な問題の本質を考えるというふうに言い換えることもできますが、今回の『A筋とB筋に筋力低下が見られる』ケースを抽象化すると以下のようになります。

具体的な事象

A筋とB筋に筋力低下が見られる

抽象化し解釈

A筋とB筋に筋力低下が見られるということは、つまり何が起きていると考えられるか?

というような具合に、臨床推論を行っていく上で大切なことは、具体的な事象に対してそのまま打ち手を講じるのではなく、一度抽象化し具体的な問題の本質を読み取りにくことです。

抽象→抽象な臨床推論

抽象→抽象な臨床試論とは、具体→具体な臨床推論とは真逆の推論展開のことで「抽象的な問題を抽象的に解釈したまま打ち手を講じる」ことを言います。

抽象的というのは、具体的にどのような現象を表しているかわからず言葉だけが独り歩きしている状態のこと。

これも実際の例がないとピンとこないと思いますので、以下のケースで考えてみましょう。

抽象→抽象な臨床推論の例
  • 「下肢の随意性低下は体幹の安定性が低下しているからだ」と現象を抽象的に捉え…
  • 「網様体脊髄路が賦活できていないために体幹機能が低下している。今後はもっと体幹機能を高める訓練をしよう!」と抽象的な病態解釈&打ち手を講じる

例を見ると、なんとなくピンときませんか?

周りを見渡すと、おそらく周囲の療法士1人か2人くらいはこういった臨床推論を行っている人がいるのではないかと思います。

ここでいう抽象度が高いワードというのは、『体幹の安定性が低下している』や『網様体脊髄路が賦活できていない』、『体幹機能を高める訓練』などが挙げられます。

要するに、「確かにそれっぽく聞こえるが実際どういう状態(方法)を表しているかいまいちピンとこない」というようなワードですね。

抽象的な問題は一度具体化しなければならない

抽象→抽象な臨床推論の問題点。

それは、「机上の空論が先行し具体的なアクションに結びつかない」ことです。

抽象度の高いものをそのまま解釈すると打ち手もふわっとしたものになりやすい

臨床推論を行っていく上で絶対に外しちゃいけないこと。それは、「そもそも抽象度が高い状態で病態解釈を行わない」ということです。

なぜならば、抽象度が高い状態で問題を理解したとしてもそれは“理解しているつもり”になっているだけで、それがどういう状態なのかいまいち掴みきれないことがほとんどだからです。

だからこそ、抽象度の高い言葉が自分の中で出てきた場合は、必ずそれを具体化しなければなりません。

今回のケースであれば以下のような形です。(例)

抽象的な解釈

下肢の随意性低下は『体幹の安定性』が低下しているからだ

抽象化し解釈

「体幹の安定性低下って具体的にはどんな問題があるんだろう?」と考える

このように、臨床推論を進めていく際は「体幹の安定性が低下している」で思考を止めず、具体的にそれがどのような状態であるか?を考えることがとても大切なのです。

ここの解像度が上がれば、打ち手(方法論)もそれに伴って具体性を帯びてくるので「体幹機能を高める訓練」とふわっとしたものではなく、より具体的な方法が思いつくはずです。

2つの思考パターンに陥りやすい人の特徴

それでは、ここまで見てきた2つの思考パターンに陥りやすい人の特徴を抑えていきます。

これを見て、自分はどちらに当てはまりやすいのかをメタ認知して頂けたらと思います。

具体→具体な臨床推論に陥りやすい人の特徴

結論、『考えるのが苦手なタイプの人』に圧倒的に多い印象があります。

このタイプは、具体的な事象を見た時に「それってつまりどういうことなんだ?」と、一度抽象化して考える営みが苦手なので、そのまま短絡的な打ち手を講じるといった意思決定をしやすいです。

アドバイス

臨床推論を行っている最中『思考停止』になるとこのパターンにハマりやすいので、推論で行き詰まった時は放っておかず他者にアドバイスを求めるようにしましょう!

抽象→抽象な臨床推論に陥りやすい人の特徴

結論、『理論バカになりやすいタイプの人』に多い印象があります。

もっと分かりやすくいうと、すごく勉強好きなセラピストほど、この推論パターンに陥ってしまいやすいです。

なぜならば、彼(彼女)らは知識や理論を沢山知っている分、教科書や論文の知識を目の前の患者様に当てはめてしまう傾向にあるからです。

そうすると、机上の空論だけが先行し真の患者様の病態が置いていかれるといったことが生じてしまいます。

アドバイス

まずは、目の前の(患者様におきている)現象を丁寧に追い、知識だけが先行しないように心がけましょう!

臨床推論で失敗しがちな思考パターンまとめ

以上が、臨床推論を行っていく際に失敗しがちな2つの思考パターンでした。

『具体→具体な臨床推論』と『抽象→抽象な臨床推論』、両者ともよくあるケースなため、自分自身の臨床推論はもちろん、同僚の療法士の方はどうなのか?

今回お伝えした部分をヒントに観察し、仮にどちらかの思考パターンに陥っていた場合は優しく教えてあげてください。

臨床推論を一から勉強したい方へ

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