さて、前回【痛みの伝導路シリーズ①】という事で、痛みのメカニズムについて触れてきましたが、今回はその第二弾です。
前回お話ししたように、痛みの伝導路はリレー形式で考えた方が理解しやすいです。
そこで今回も、痛みの伝導路についてをリレー形式で順に解説していきたいと思います。
今回は、自由神経終末に侵害刺激情報がタッチし末梢神経(Aδ線維とC線維)が脊髄後角に到達したた、そのあとからですね。その点を詳しく解説していきます。
【痛みの伝導路シリーズ2】二次侵害受容ニューロン編
伝導路③ 二次侵害受容ニューロン
前回の復習になりますが、身体に痛み刺激(侵害刺激)が加わると、それぞれの受容器が反応し第一走者である『Aδ線維』と『C線維』がその情報を脊髄まで伝達します。
Aδ線維とC線維によって痛み情報が脊髄の後角に伝達されると、ここで第二走者である二次侵害受容ニューロンにバトンパスをします。
二次侵害受容ニューロンは、特異的侵害受容(NS)ニューロンと広作動域(WDR)ニューロンという2種類の神経があります。
特異的侵害受容(NS)ニューロンとは
この神経は第一走者のうち主にAδ線維からバトンをもらいます。神経学的にいうと、『シナプス』ですね。
NSニューロンの特徴としては、前回出てきた高閾値機械受容器と似ていて侵害性の強い機械刺激のみに反応し、弱い刺激には反応を示さないという特徴があります。
だからこそ、強い痛み刺激情報を伝達するAδ線維からバトンをもらうのです。
広作動域(WDR)ニューロンとは
WDRニューロンは、痛みの第一走者のうち主にC線維からバトンをもらいます。この神経の特徴は、やはり前回出てきたポリモーダル受容器とよく似ています。
というのも、WDRニューロンは侵害刺激だけでなく非侵害刺激にも幅広く反応する特徴を持っているからです。
ただ、WDRニューロン特有の特徴として挙げられるものも実はあり、それが‟繰り返される刺激に対して感受性が高まる”という特徴です。
これは、以前話したことのある中枢性感作というものに大きく関与しており、そのメカニズムである『ワインドアップ現象』や『長期増強現象』はこのWDRニューロンの感作作用よって引き起こされるといわれています。
第三走者の待つ『視床』へ
このようにして、脊髄にて第一走者からバトンパスをもらった第二走者が向かう場所は『視床』です。
ただ、ここがポイントになってくるのですがNSニューロンとWDRニューロンでは、視床に向かうということは共通していますが、その行き着く場所は異なるのです。
実はこの部分こそが、痛みの感覚的側面と情動&認知的側面を生み出す1つのメカニズムになっています。
少し、話は変わりますが痛みの伝導路は主に2種類存在していて外側系(感覚)と内側系(情動&認知系)とがあります。
なぜ、痛みの伝導路は外側系と内側系に分かれるのか
その答えは、この第二走者の中にあります。
外側系
外側系といわれる所以は、第二走者の中でもNSニューロンが行き着く場所というのが視床の外側核群だからです。
外側核群とは、別名『腹側基底核群』や『後腹側核』とも言われ、後外側腹側核(VPL)や後内側腹側核(VPM)を含む場所です。
NSニューロンはここで第三走者にバトンパスをします。一般的にこの伝導路のことを、外側脊髄視床路といいます。
内側系
内側系は、第二走者であるWDRニューロンが視床の内側核群で第三走者にバトンパスをすることからこのように呼ばれます。
内側核群というのは、視床内髄板の内側を占める核群です。
脊髄後角から視床内側核群に至るこの伝導路は一般的に、内側脊髄視床路と呼ばれます。
痛みの伝導路は一つじゃない
ここまでくると、なんとなくお気づきの方もいるかもしれませんが‥
従来、痛みの伝導路を養成校などで習う時は、多くが『外側脊髄視床路』だけではないかと思います。
しかしここまで見てきたとおり、痛みの伝導路というのは実はそれだけではありません。
外側脊髄視床路の他に内側脊髄視床路というのも存在しています。
では、この2つは一体何が違うのか。
これについては次回、痛みの伝導路シリーズ③でお伝えしようと思います。
というわけで本日はここまでです。
痛みの伝導路第二弾まとめ
それでは、ひとまず今回お伝えした内容のポイントを以下にまとめていきます。
- 痛みの第二走者にはNSニューロンとWDRニューロンがあり、脊髄後角で第一走者からバトンパスを受ける
- 第二走者(NSニューロン&WDRニューロン)は視床で第三走者にバトンパスするがその場所は異なる
- 痛みの伝導路は外側脊髄視床路だけでなく内側脊髄視床路というのも存在する
痛みに関するオススメ書籍
最後に、痛みに関して勉強したいとき間違いなく読んでおいた方がいい書籍を2冊ご紹介しておきます。
ぜひ、この機会に手に取ってみてください。
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