【痛みの伝導路シリーズ①】一次侵害受容ニューロン編

さて、皆さんは「痛みの伝導路を説明しなさい!」と言われたらきちんと自分の言葉で言語化することができますか?

ちなみに、後ほど話しますがこの時に『それって外側脊髄視床路のことでしょ?』と、これだけの説明だと必要ではある一方十分ではないんです。

そこで、今回から連載で『痛みの伝導路』についてお話ししていきたいと思います。これを機に、痛みの伝導路について細かく自分の言葉で説明できるようになりましょう!

こんな人におすすめ
  • 日々のリハビリテーションで痛みのリハビリに関わっている
  • 痛みのメカニズムを説明することができない
  • 痛みについて網羅的に勉強していきたい
目次

【痛みの伝導路シリーズ1】一次侵害受容ニューロン編

早速ですが痛みの伝導路を考える場合、養成校ではおおよそ以下の流れで習うと思います。

STEP
侵害刺激が加わる

皮膚や筋肉など、効果器となる患部に対して痛みの元となる刺激が加わる

STEP
自由神経終末がキャッチ

侵害刺激を受容体である自由神経終末が痛み情報をキャッチする

STEP
外側脊髄視床路を上行

痛みの情報は外側脊髄視床路を通して大脳皮質に伝達される

STEP
一次体性感覚野へ到達

痛み情報は大脳皮質の一次体性感覚野へ到達し痛みを『知覚』する

この流れ、一見すると正解のように見えますが、結論これだけだと痛みの伝導路としては不十分です。

なぜならば、人が実際に痛みを感じた時というのは、このようなシンプルに一本化されたものではないからです。

本来『痛み』というのは一言でバクっと表すことは出来ず、『急性疼痛』『慢性疼痛』というふうに種類の異なる痛みが存在しています。

加えて、実はこのように2つに分かれる痛み(急性疼痛or慢性疼痛)は伝導路も異なった機序となっているので、痛みの伝導路を解説していく上では少なくともこの2つの伝導路それぞれについてお話ししていく必要があります。

今回出来るだけ分かりやすくするために、痛みの伝導路を『リレー』という形式に置き換え、かつ情報量が多くなり過ぎないように各走者(伝導路)ごとに記事も分けて解説していこうと思います。(イメージは下の図のような感じ)

きんたろーInstagramより引用

ひとまず今回は、侵害刺激から第一走者『一次侵害受容ニューロン』のところまで解説していきます。

伝導路① 痛み刺激をキャッチする受容器

痛みの伝導路について話していく前にまず押さえておきたいのはその‟スタート地点”であり、それは痛み信号がスタートする地点を把握しておかなければその後に続く伝導路(リレー)も始まらないからです。

痛みの伝導路のスタート地点というのは、痛み刺激(侵害刺激)が痛みスイッチ(受容器)を押すことによって始まります。

要は、身体の多くの組織に存在する受容器が侵害刺激をキャッチすることによって、その信号が脳まで上がり「痛い!」と感じるのです。

では、ここで問題です。

侵害刺激をキャッチする受容器といえばなんでしょうか?

はい、この答えは先ほどちらっと出てきた『自由神経終末』です。

これは、皆さんお分かりですよね。

ただ、ここからはあまり聞きなれない部分かもしれませんが、実はこの自由神経終末には2つの受容器が存在しています。

それが、『ポリモーダル受容器』『高閾値機械受容器』です。

身体に機械的なストレスや様々な外力などが加わることによってそれが侵害刺激となり、これらの受容器がその情報をキャッチすることによって痛みの伝導路がスタートします。

では、この2つの受容器の違いをそれぞれ具体的に解説していきます。

ポリモーダル受容器とは

ポリモーダル受容器の『ポリモーダル』とは『多様な』という意味があり、その名の通りこの受容器は多くの刺激(機械的刺激・熱刺激・化学的刺激)に反応します。

また、その反応閾値も低く侵害刺激に加えて非侵害刺激にも反応します。

高閾値機械受容器とは

逆に、高閾値機械受容器はポリモーダル受容器のように、様々な刺激には応答せず機械的刺激のみにしか反応しないという特徴があります。

さらに、その刺激強度も弱い刺激ではなく強いものに限ります。

つまり、この情報から言えることはポリモーダル受容器は比較的強い痛み情報も弱い痛み情報も拾い上げる一方で、高閾値機械受容器は強い機械的刺激のみに反応するため、いわゆる急性痛の多くは高閾値機械受容器が反応していると考えられます。

伝導路② 一次侵害受容ニューロン

では、これらを踏まえた上で痛みの伝導路の第一走者である、『一次侵害受容ニューロン』について解説していきたいと思います。

ポリモーダル受容器や高閾値機械受容器でキャッチした痛み刺激は一次侵害受容ニューロン(Aδ・C線維)を通して脊髄後角まで伝導されます。

実は、この一次侵害受容ニューロンも先ほど話した受容器同様2種類存在していて、それが『Aδ線維』『C線維』です。

この2つは国家試験でもよく出てくるものになるので、名前は聞いたことがあるのではないでしょうか。忘れている方ももしかしたらいるかもしれないので、改めて少しおさらいをします。

Aδ線維

Aδ線維は神経線維に髄鞘を持っており(有髄神経)、それにより伝導速度が速いのが特徴です。(跳躍伝導)

伝導速度が速いということから、Aδ線維が伝える侵害刺激は身体にとって緊急を要する刺激、つまり一次痛に関与していると言われています。

C線維

C線維は、神経線維に髄鞘を持っていないことから(無髄線維)、その伝導速度はAδ線維に比べると遅いです。

そのため、C線維が伝導する情報というのは急性痛の後にじわじわ生じてくる二次痛に関与していると言われています。

この2つの神経が脊髄後角まで痛み刺激を伝導し、第二走者である神経にバトンパスを行う仕組みとなっています。

痛みの伝導路①のまとめ

では、ここまで話してきた内容を簡単にまとめます。

本日のまとめ
  • 自由神経終末は2つの種類が存在する
  • 『痛みの伝導路』は、痛み刺激(侵害刺激)が身体に無数に存在する受容器(ポリモーダル受容器&高閾値機械受容器)にキャッチするのを起因として始まる
  • 痛みの伝導路の第一走者である一次侵害受容ニューロンには『Aδ線維』と『C線維』がある
  • 痛みと一言でいっても、その中には一次痛(急性疼痛)と二次痛(慢性疼痛)があり、これら痛みの種類によって痛み刺激をキャッチする受容器も運ぶ神経線維も異なる
きんたろーInstagramより引用

次回は、痛みの伝導路の第二走者である『特異的侵害受容ニューロン』と『広作動域ニューロン』について解説していきます。

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コメント

コメント一覧 (2件)

  • 失礼します。
    いつもブログ拝見し勉強させてもらってます。
    痛みの勉強会をしようと思ってまして、一部お借りしたいイラストがあるのですが、よろしいでしょうか?

    個人で行なっているオンライン勉強会があるのですが、そこでスライドを用いて行う勉強会です!

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