麻痺則上肢の痛みを訴える症例~新たな仮説編~

みなさんこんにちわ!

先日、麻痺側上肢の痛みを訴える患者様の仮説検証作業の一部を前回の記事にてご説明させていただきました。

 

内容としては、前回の介入で当初挙げていた仮説が外れてしまったことから、新たな仮説を構築するための材料を集める。

といった内容でしたね。

 

そしてそれら材料から、新たに挙げられた仮説が

『麻痺側上肢(特に肩関節)における身体イメージの破綻』

としてみました。

 

 

そこで今回は、このような仮説を立案したその根拠を2つの視点から述べていこうと思います。

本日もよろしくお願い致します。

目次

病態解釈の流れ

前回、上記仮説を立案するための材料として

 

①動作時の麻痺側上肢の異常な筋緊張

②二点識別覚

 

を挙げましたが、新たに前回一つ書き忘れていた要素として

 

③鎮痛薬が効かない

 

というものも挙げておきます。この部分も病態解釈を行っていくうえで非常に重要となってきます。

痛みのメカニズムのおさらい

さて、仮説立案の説明をしていく前に痛みのメカニズムについて簡単に再度おさらいしていきます。

まず、痛みの側面には3つ存在することは以前お話ししました。

痛みの3つの側面とは

・感覚的側面

・情動的側面

・認知的側面

これらがあり、これら3つの側面が関与しあって最終的に脳で知覚されます。

 

これらの詳しい内容に関してはこちらの方よりご覧ください

 

〇痛みのメカニズム①

〇痛みのメカニズム②

〇情動的側面から見る痛みのリハビリテーション

〇認知的側面から見る痛みのリハビリテーション

 

さて、僕は今回の症例が『身体イメージの破綻』という仮説を立てていますのでこの三つの側面でいうと『認知的側面』によるものが強いのではないかと推論しています。

 

なぜこのように思うのか。

 

この理由をこれからご説明していきます

なぜ『認知的側面』の可能性を考えたのか

まず、これを考えるにあたっては少なくとも立証しなければならないことが2つあります。それは

 

1.認知的側面以外の痛みの原因を反証する


2.認知的側面であるという証拠を提示する

以上の2つです。

 

まず、少なくともこの2つを抑えなければ

『痛みの原因として認知的側面が強いのではないか』

というのは言えません。

 

なぜなら根拠がないからです。

 

例えば、それを言い切る根拠や材料が何もない状態で

『きっと認知的側面が強い!!』

 

と言っても全く論理的(ロジック)な仮説の立て方ではないことはお分かりだと思います。だから

 

『認知的側面』である。

 

というためにはまずは最低上記の2つの要素を抑える必要があると言えます。

 

 

そこで、今回の例を考えるにあたりまずは

1.『認知的側面以外の痛みの原因を反証する』

というところからご説明していきます。

 

※大変申し訳ありませんが、今回はこの部分がまた長くなってしまうためこの説明だけで一旦終わろうと思います。

認知的側面である根拠を提示するというところに関しましては次回詳細に書いていこうと思います。

 

痛みの原因が体性感覚由来でないと思った理由

「認知的側面である。」

ともし考えるならば、そのほかの痛みの原因をまずは反証しなければなりません。

今回その一つとして

③鎮痛薬が効かない

といった存在がここで関与してきます。

 

というのも介入時、この方は

「リリカが全然効いてくれないくれない。痛みが引かない。」

と言っていたのです。

 

『リリカ』とは鎮痛薬の一種で神経障害性疼痛や線維筋痛症などに主に用いられる薬です。

 

これは鎮痛薬ですので、主に効果器に何らかの起因があってそれを抑える役割があります。

痛みの側面でいえば主に『体性感覚的側面』に対して本来効果を発揮するものと考えられています。

 

しかし、今回の症例では

「鎮痛薬を飲んでも痛みが治まらない」

ということを感じていました。

 

また、以前お話ししたようにこの方は「同じ動作でも痛いときと痛くない時がある」との事で痛みの再現性がとれない場面がありました。

 

仮に、もし効果器に何らかの問題があるならば、疼痛誘発動作を行うと痛みに再現性があるはずです。

 

しかしそれがない。。。

 

これら事実をふまえ解釈すると、麻痺側上肢そのものに起因する痛み。つまり

 

「体性感覚的側面」による痛みの惹起の可能性は比較的低いのではないかと考えられます。

 

よって、体性感覚的側面による痛みというのは反証されるのではないかと思います。

 

痛みの原因が情動的側面でないと思った理由

これに関しては、正直全くないとは言えないと思っているのが実際なところです。

 

というのも今回の症例自体、痛みに対して割と固執傾向であり不快情動もかなり強く抱いています。

 

現に、痛みをどのように感じているかを検査する『pain catastrophizing scale(PCS)』をとってみても、固執傾向にあるという結果が出ていました。

 

これら評価結果だけを考えると情動的側面も絡んでいる可能性は十分考えられます。

 

ですので、100%反証するということが出来ません。

 

しかし今回この部分にフォーカスを当てなかったのには理由があり、それは現時点で

 

「嬉しいことがあった時や、屋外歩行、エルゴメーターなどを行っている時に痛みの程度はどうでしょうか?」

 

と僕が質問した時に

「変わらない」

という風におっしゃられていました。

 

つまり、嬉しいこと(つまり報酬系)が働いた時や、運動療法による鎮痛(セロトニン効果)が生じていない事が考えられました。

 

※詳しくは『情動的側面から見る痛みのリハビリテーション』をご覧ください。

 

そのため、このような理由から情動的側面は根本的原因というものではなく、根本にある痛みの原因によって二次的に情動に影響が及んでいるものではないかと解釈しました。

 

さて、ここまでが

1.『認知的側面以外の痛みの原因を反証する』

に関しての部分になります。

 

痛みの3つの側面のうち、体性感覚的側面と情動的側面というのが反証されたと一旦考えます。

 

さてでは、次がいよいよ

2.認知的側面であるという証拠を提示する

という部分に入っていきたいと思います。

 

この時に、体性感覚と情動が消去法的に消えたから認知的側面と考えるのではなく、きちんと多くの材料の中から根拠立てた上で『認知的側面』だ。というふうに言えなければ話しが飛躍してしまいます。

 

ですので消去法で残ったらこれ。

ではなく、きちんとロジックに仮説を構築するために、次の記事でこの部分に触れてお話し出来たらと思います。

 

今日この辺りの解説を待たれてた方がいましたら本当に申し訳ございません。

 

本日も最後までご覧頂きありがとうございます。

 

 

 

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