RDQとは、 Roland-Morris Disability Questionnaireの略で、腰痛によってどれくらい日常生活活動が障害されているかを患者自身が評価する方法です。
Roland-Morris(ローランド・モリス)機能障害質問表
RDQは国際的に最も使用されている腰痛特異的な身体活動評価で、評価する内容は「立つ」、「歩く」、「家事をする」といった基本的な日常生活活動の動作になります。
また、腰痛における『理学療法診療ガイドライン』においても、RDQは推奨グレードAとなっており国内でもその有効性は確認されています。
日本語版RDQの再現性を示す級内相関係数は0.91、内的整合性を示すクロンバックのα係数は0.85であり信頼性が示されている。
背部痛 理学療法診療ガイドラインより引用
そこで今回は、このRDQについてカットオフ値や評価項目、実施する際の注意点などについて詳しく解説していきます。
現在、腰痛のリハビリテーションに携わっているセラピストの皆さんはぜひ最後までご覧ください。
【腰痛の理学療法】RDQって知ってる?腰痛特異的な活動量の評価方法を抑えよう!
なぜ、痛みのリハビリに活動量が大事なの?
痛み(特に慢性疼痛)のリハビリテーションを進めていく上で身体活動量を追うことが大事な理由。
それは、活動量が増える(=運動を行う)ことによって痛み(特に慢性疼痛)が緩和するという報告が数多く挙がっており、活動量の増加と痛みの緩和に相関関係があるからです。
慢性疼痛患者において、処方された運動はほとんどの疼痛に対して有効な治療法であり、運動と理学療法の利用は障害と医療費の削減に有効であることが長い間認識されている。
Exercise-induced pain and analgesia? Underlying mechanisms and clinical translation.Sluka KA,2019
逆に、「慢性疼痛患者が健常者と比較してどれだけ活動量が少ないのか?」というのも明らかになっており、それを表しているのが以下の図になります。
- FM=線維筋痛症
- HC=健常対照者
- PF=身体的疲労
Bの図は、1週間における線維筋痛症患者と健常者のエネルギー消費量の違いを表している図。
線維筋痛症患者は健常者に比べてエネルギー消費量が著しく少ないことが分かる。
Cの図は、線維筋痛症患者と健常者の一日の運動量の違いを表している図。
線維筋痛症患者は健常者に比べて1日の運動量が少ないことが分かる。
このように、慢性腰痛を患っている人の多くは日常的に身体を動かすという機会が少ないことが分かるかと思います。
だからこそ、一つのアウトカムとして『身体活動量』を評価することによって、痛みのリハビリテーションを前に進めることが可能となるわけです。
RDQの基準値(カットオフ値)
それでは、今回の本題に戻ります。
腰痛特異的な身体活動評価法であるRDQは全24項目からなり、24点満点で評価します。
回答は、「はい」もしくは「いいえ」のみであり「はい」を1点としてカウントします。
以下に、腰痛患者におけるRDQのカットオフ値を性・年代別に記します。
男性 | 女性 | |
平均値/標準偏差 | 平均値/標準偏差 | |
20代 | 2.12/3.19 | 2.39/3.33 |
30代 | 3.72/4.82 | 2.05/2.86 |
40代 | 2.10/3.40 | 3.62/5.05 |
50代 | 2.77/4.03 | 3.30/4.13 |
60代 | 5.27/5.88 | 4.82/5.08 |
70代 | 5.83/5.24 | 7.90/6.39 |
これを見ると、若年層ほどカットオフ値が低く、高齢者になるほどカットオフ値が高くなる傾向にあることがわかります。
つまり、それだけ活動量が下がっているということですね。
RDQのメリット〜比較がしやすい〜
RDQのメリットの一つ、それはこのように性・年代別でカットオフ値が明らかになっていることから、自分自身が担当している患者様との比較がしやすいという点です。
仮に、自分自身が担当している患者様が50歳代の男性でRDQの結果が12点だった場合、50歳代男性の平均値は2.77、標準偏差は4.03なので、担当している患者様の活動量はかなり低下しているんだということが分かります。
このように、カットオフ値が性・年代別で詳しく明らかになっていることにより評価結果の解釈が行いやすくなるという点はRDQならではだと思います。
評価項目一覧
それでは、以下にRDQの評価項目を一覧で示します。
腰が痛いと、普段やっていることがなかなかできなくなることがあります。以下の項目は、腰が痛いときに起こることを表したものです。この中に、あなたの「今日」の状態に当てはまるものがあるかもしれません。項目を読みながら、今日のあなたの状態を考えてみてください。あなたの状態に当てはまる場合には「はい」に、当てはまらない場合には「いいえ」に◯をつけてください。
今日、腰痛のために
- 腰痛のため、大半の時間、家にいる。
- 腰痛を和らげるために、何回も姿勢を変える。
- 腰痛のため、いつもよりゆっくり歩く。
- 腰痛のため、普段している家の仕事を全くしていない
- 腰痛のため、手すりを使って階段を上る。
- 腰痛のため、いつもより横になって休むことが多い。
- 腰痛のため、何かにつかまらないと、安楽椅子(体を傾けて楽に座れる椅子、深く腰掛けた姿勢)から立ち上がれない。
- 腰痛のため、人に何かしてもらうよう頼むことがある。
- 腰痛のため、服を着るのにいつもより時間がかかる。
- 腰痛のため、短時間しか立たないようにしている。
- 腰痛のため、膝を曲げたりひざまずいたりしないようにしている。
- 腰痛のため、椅子からなかなか立ち上がれない。
- ほとんどいつも腰が痛い。
- 腰痛のため、寝返りがうちにくい。
- 腰痛のため、あまり食欲がない。
- 腰痛のため、靴下やストッキングを履くときに苦労する。
- 腰痛のため、短い距離しか歩かないようにしている。
- 腰痛のため、あまりよく眠れない。
(痛みのために睡眠薬を飲んでいる場合は「はい」を選択してください) - 腰痛のため、服を着るのを誰かに手伝ってもらう。
- 腰痛のため、一日の大半を、座って過ごす。
- 腰痛のため、家の仕事をするとき力仕事をしないようにしている
- 腰痛のため、いつもより人に対してイライラしたり腹が立ったりする。
- 腰痛のため、いつもよりゆっくり階段を上る。
- 腰痛のため、大半の時間、ベッド(布団)の中にいる。
RDQを実施するときの注意点
最後に、臨床現場でRDQを実施する時の注意点として抑えておきたいこと。
それは、「腰痛が生じる前から活動量が著しく低かった場合があり、それが大きく反映されているケースがある。」ことです。
要するに、腰痛の有無は関係なくシンプルにライフスタイルが評価結果に反映されているということですね。
だからこそ、ここで大切なのはほとんどの質問の枕詞に「腰痛のため」という記載があることです。
RDQは患者様本人に記載してもらう評価法であるため、セラピストは説明を行う際必ず「以前からのライフスタイルではなく腰痛によってどうなっているかを教えてください」という旨を伝えた方が良いかと思います。
参考文献
1)背部痛 理学療法診療ガイドライン
2)Exercise-induced pain and analgesia? Underlying mechanisms and clinical translation.Sluka KA,2019
3)ペインリハビリテーション入門.沖田実,松原貴子
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