痛みのリハビリテーション〜患者教育の実践方法〜

きんたろー
皆さん、こんにちは。理学療法士のきんたろーです。

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さて、今日お話ししたい内容は『痛みのリハビリテーション』についてです。

“痛み”は理学療法士、作業療法士をはじめトレーナーや柔整、鍼灸師といった多くの職業の皆さんにとってとても馴染み深い症状の一つであるかと思います。

そこで今回は、痛みのリハビリテーションを進めていく上で近年トピックになっている『患者教育』について、そのやり方含めて解説していきます。

明日から使える方法となっていますので、ぜひ最後まで読んでいただき日々の臨床に活かして頂けたらと思います。 それでは、はじめていきます。

痛みのリハビリテーション〜患者教育の実践方法〜

痛み(腰痛)のリハビリ=体幹トレーニング一択はもう古い

本題に入っていく前に、まずは大切な前提となるお話しから詰めていきますね。

近年、疼痛のメカニズムが神経科学の視点から徐々に明らかになってきています。

ここで大事なポイントは、急性疼痛の場合は病態の原因が患部(感覚的側面)にあることが多いが、慢性疼痛に移行すればするほどその原因の所在が情動的側面認知的側面に移行していくという点です。 痛みの3つの側面 この痛みの3つの側面がピンとこない方は、先にこちら記事を読んでおきましょう。

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で、本題に戻ると… 痛みそのものが複雑なものであることが明らかになっているいま、『痛み』そのものを一括りに捉えてもあまり良い結果は出せず、きちんと病態によってやるべきことを変えていくというのが、これからの痛みのリハビリテーションを進めていく上で重要になってくるわけです。

例えば、「以前は当たり前のように行われていたが今はもう古いかも。」と唱えられ始めている理論の一つが『筋肉の弱化による痛み』です。

もちろん、「この側面が全くの的外れだ」というつもりは毛頭ないのですが、こと慢性腰痛に限った話しでいうと、この理論を反証する結果がいくつも出てきています。 例えば以下の論文の中では…

腰椎の安定化を目的とした体幹プログラムは、腰椎安定化筋群の特定の障害にもかかわらず、一般的な運動療法アプローチよりも効果がない。腰椎安定化運動は、他のどの形態の積極的な運動よりも効果的ではないという強力な証拠がある。
An update of stabilisation exercises for low back pain: a systematic review with meta-analysis.Smith 2014

これ、すごくざっくり解説すると… 「腰椎の安定化トレーニング自体、多少なり腰痛の改善に寄与することはあっても長期的に見た時、他のアプローチと比較してこれといって優れている点は特にないよ。」ということで、要は「腰痛あるならひとまず体幹トレーニングやっとけ」みたいな考えはもう通用しない。 そんな世界観になってきてるわけです。

実はこういった類の論文はこれ以外にも既にちらほら出てきて、今まさに腰痛含め痛みのリハビリテーションの考え方に変革が起き始めているといっても良いと思います。

では、1990年代〜2000年代前半まで「体幹筋と腰痛には相関がある」といった報告が山のように上がっていたのに、なぜここ最近になってこの報告が覆るような結果が出始めているのか。

それは、以前の研究では対象となる腰痛患者に『慢性疼痛ではない人』がかなり混じってしまっていたことがその要因として考えられています。

先ほど話したように、痛みの情動や認知的側面の割合は慢性化すればするほど多くなっていくのですが、急性期や慢性化に至る前というのはそれこそ『感覚的側面』の一つである効果器(筋-関節)の問題も当然あります。

ただ、慢性疼痛に神経系の関与が深く関わっているかもと周知されてきた近年は痛みを伴っている患者のサンプリングがかなり精緻化され、以前のように慢性疼痛である人とそうでない人が混じってしまうという事例がかなり減ってきたことが解明の糸口になってきているわけです。

痛みのリハビリテーションに必要な2つのこと

では、それらを踏まえた上で…

痛みのリハビリテーションを進めていく上で大切なことは一体何なのか?

というわけで、近年痛みのリハビリテーションを進めていく上で大切であるとされている考え方が…

『運動療法』と『患者教育』を組み合わせることです。

この背景には、(繰り返しですが)痛みには『感覚的側面』だけでなく『情動的側面』や『認知的側面』といった側面も広く混じっているため、単に痛みの感覚的側面にフォーカスした方法だけではなく、患者様本人の『痛みに対する捉え方』も変えていく必要があるからです。

だからこそ、『患者教育』というのが設けられており、この痛みに対する患者教育的な介入方法を『疼痛神経科学的教育:pain neurophysiology education(PNE)』といいます。 Pain Neurophysiology Education and Therapeutic Exercise for Patients With Chronic Low Back Pain: A Single-Blind Randomized Controlled Trial.2018

運動療法とPNEの組み合わせによる効果は近年少しずつ報告が上がってきており、今後痛みのリハビリテーションにおいては、これが主流になってくるのではないかと考えられます。

それでは、次項ではPNEの実際のやり方やそのポイントについて一例も交えながら解説していきたいと思います。

疼痛神経科学的教育:pain neurophysiology education(PNE)の進め方

ポイント①『心理学ではなく生理学で説明する』

急性期であれ、慢性期であれ痛みを伴う患者様に対して『患者教育』を行う上で大事なことは、患者様が抱く「正体不明の痛みに対する漠然とした不安と破局化を取り除く」ことです。

というのも、痛みが生じている一部の患者様というのは… 「なぜ、痛みが生じているのか?」 「一向に緩和しないこの痛みは何なのか?」 というように、強烈な不安と出口が見えないことに対する恐怖感を抱いているケースがあるからです。

その結果、病態不明の痛みに対して破局化傾向が強くなり、さらに痛みが複雑化する。こういった悪循環に陥いりやすいです。

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だからこそ、セラピストがやらなくちゃいけないこと。それは… 『この複雑な痛みがなぜ起きるのか?』 『どうすれば緩和していくのか?』 これを空想論ではなく明確に「こうなると痛みは慢性化しやすいですよ。」といったメカニズムを教えてあげる必要があります。

で、この教え方にも一つポイントがあって、ぞれが…

痛みの教育を行う場合は、心理学ではなく生理学の言葉で説明する。
Reconciling movement and exercise with pain neuroscience education: A case for consistent education.2016

です。 要は…

セラピスト
ネガティブな感情は痛みの慢性化につながりますよー。だからポジティブな気持ちで!さぁ!運動頑張りましょう!!

なんていう精神論で片付けてしまってはダメで、これは心理学で相手を教育しようとしているわけです。

そうではなく、ネガティブな感情痛みの慢性化の関係性は既にさまざまな生理学研究によって説明がつくので、ここを丁寧に教育する必要があるんです。

つまり、痛みに対してマイナスな感情が働くと下降性疼痛抑制系が機能しにくくなり、その結果痛み刺激を拾いやすい身体になってしまう。よって、これらの事実からマイナスな感情は痛みと関連しやすいので多少痛みがあってもしっかり動いていきましょう。

みたいなことを教えてあげなくちゃいけません。

ただ、当然ですが言葉は分かりやすくです。 「下降性疼痛抑制系がー」なんていう専門用語を多用したり、難しい内容をそのまま伝えても相手は理解できないので、ここの伝え方に関してはセラピストが工夫する必要があります。

このように考えると、これからはセラピスト自身が痛みの知識を熟知しておくのは当たり前とした上で、それら知識を患者様に分かりやすく伝えられるレベルまで知識の質を高めなければなりません。

皆さんは、今持っている知識量で痛みの患者様と対峙できそうですか?

もし、足りないと感じたのでればしっかりと基礎から痛みの勉強を始めていきましょう。

それでは、ここからはPNEを実際に行っているケースについて、論文を交えながらさらなるポイントについて解説していきます。

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