【これで鑑別可能!】仙腸関節障害を見分けるための6つのテスト

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整形外科クリニックや、治療院、整骨院などで腰痛患者様が来院されることって物凄く多いと思うのですがその際に…

セラピスト

この腰痛の原因って一体なんだろう…?

という疑問もしくは悩みを持たれたことってないですか?

もちろん、医療機関に勤務している方とかであればドクターからの診断名が下りてるはずなので『疾患名』から痛みの原因を考えることはできます。

ただ一方で、「診断された疾患名が症状を反映しないケースもある」という事実もあります。

例えば以下の研究では、「腰部脊柱管狭窄症を有していながらもほとんどの人は無症状だった。」みたいな報告もあるので、診断名がついているからといって盲信的に鵜呑みにしてしまうと思ったような改善が見られないということもあります。

この論文の詳細解説記事はこちら

で、それを踏まえた上で腰痛患者様のリハビリテーションないしは施術を進めていく際に、よく「これが問題なんじゃないか?」と、原因の一つとして挙げられるが『仙腸関節障害』です。

ただ問題なのは、仙腸関節障害による痛みってその他の原因との鑑別がまぁまぁムズイという。

それこそ、仙腸関節障害と腰部脊柱管狭窄症、腰椎椎間板ヘルニアって腰痛はもちろんですが、これに下肢症状も伴うという共通項があるので尚更鑑別が難しいんですね。

ちなみに、国際疼痛学会が発表している仙腸関節痛の定義がこちら。

仙腸関節痛とは、仙腸関節領域の痛みを指す。その痛みは、特異的な疼痛誘発試験を行ったときに再現性があり、局所麻酔薬の仙腸関節関節内注射によって完全に緩和される必要があります。しかし、仙腸関節痛を診断することは困難である。

Classification of chronic pain: Descriptions of chronic pain syndromes and definitions of pain terms.IASP,

ほら、IASPだってこう言ってる。難しいんですよね、鑑別。

ただ、これで「じゃあわかりません無理」って丸投げしてたら元も子もないというか、臨床しんどいじゃないですか。

なので、今回は先行研究を参考に『仙腸関節由来の痛みだと鑑別するために絶対行うべき6つのテスト』と題して、日々腰痛のリハビリテーションや施術に挑んでいるセラピストの皆さんの一助となる情報をお届けできたらと思います。

目次

【これで鑑別可能!】仙腸関節障害を見分けるための6つのテスト

仙腸関節障害を診断することが難しい理由

腰殿部痛における仙腸関節障害の割合は15~30%と言われていますが(黒澤,2021)、その中で「仙腸関節障害だ」と診断するのは先ほども言ったように難しいとされています。

その理由の一つとされているのが、仙腸関節障害で用いられる誘発テストの特異度が低いことです。(Karolina M,2009)

仙腸関節の誘発テストとしてよく用いられるものとして、ゲンスレンテストパトリックテストなどがありますが、実はこれらのテストは感度こそ高い一方、特異度が低いとされています。

感度とは

感度とは、ある疾患を持つ人が正しくその疾患であると判断される確率のことです。

つまり、感度が高いテストというのは「その疾患を患っているにも関わらず誤って陰性にしてしまう」ということを防ぐことができます。

特異度とは

特異度とは、ある疾患を持たない人が正しくその疾患ではないと判断される確率のことです。

特異度が高いテストというのは、その疾患ではない人を「間違って陽性にしてしまうことが少ない」といえます。

これを踏まえた上で、仙腸関節障害の誘発テストで用いられるゲンスレンテストやパトリックテスト等を見ていくと、これらは「感度が高く特異度が低い」とされているわけです。

つまり、“仙腸関節障害の人にテストを行うと陽性になる確率は極めて高い(感度)一方、仙腸関節障害ではない人に誘発テストを行っても陽性になる可能性が高い(特異度)。”ということです。

なので、極端なことをいうと椎間関節障害由来の腰痛の人にゲンスレンテストやパトリックテストを行っても陽性になる可能性があるということですね。

これ、普通にやばいじゃないですか?

そうなんです。だから、診断が難しいんです。

仙腸関節の疼痛誘発テストを適用する場合、実際にどの構造にストレスがかかっているかを定義することはほぼ不可能である。腸腰筋や梨状筋などの構造でさえ機能的に関連しているため、この痛みの潜在的な原因として除外することはできない。その結果、誘発された痛みがもっぱら関節内なのか、靭帯に関連しているかを識別することは非常に困難である。

Diagnostic Validity of Criteria for Sacroiliac Joint Pain: A Systematic Review.Karolina M,2009

加えて、仙腸関節障害の診断の一つに関節内注射というのもありますが、これに関しても関節周囲の靭帯から生じる痛みを考慮できないので仙腸関節障害の診断には限界があると言われています。(kurosawa,2017)

仙腸関節障害は、関節と後靭帯部の両方に由来する痛みを含み、腰や臀部だけでなく鼠径部や下肢にも生じることがあり、他の疾患に続発する痛みと見分けがつかないことがある。さらに、仙腸関節由来の痛みは単独、あるいは他の腰部疾患に伴って起こることもある。よって医師は、腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症などの腰部疾患の正確な診断と治療を促進するために仙腸関節の痛みには特に注意を払う必要がある。

A Diagnostic Scoring System for Sacroiliac Joint Pain Originating from the Posterior Ligament.kurosawa,2017

なんだか益々「やっぱ鑑別無理ゲーじゃん」と思われた方ごめんなさい。

でも安心してください、本題はここからです。

仙腸関節の鑑別を可能にする6つのテスト

もう前置きとして色々話しすぎて、「そろそろ早く出せよ」と思っている人がそこそこいそうな気がするので、早速テストを一覧で示します。

こちらです、どん。

仙腸関節障害に用いたい6テスト
  1. one finger test
  2. 鼠径部痛の有無
  3. 椅子座位痛の有無
  4. Newton test変法
  5. PSIS圧痛
  6. 仙結節靭帯圧痛
one finger testとは

患者が人差し指で上後腸骨棘(PSIS)を示した場合陽性となり、他の部位の指示は陰性となる。

Newton test変法とは

通常のニュートンテストは仙骨中央を圧迫するが、変法では患側の仙腸関節部に圧迫を加える。これによって、疼痛が誘発されれば陽性となる。

ニュートンテスト変法
A Diagnostic Scoring System for Sacroiliac Joint Pain Originating from the Posterior Ligament.kurosawa,2017より引用

さて、この6つのテストですが、これらは適当に組み合わされたものではなくしっかり研究が行われその結果として選ばれたテストです。

ここからは評価の方法やカットオフ値など、より具体的な話しをしていきます。

なぜこの6つのテストが選ばれたのか?

仙腸関節障害の鑑別テストとして6つご紹介しましたが、「では、なぜこの6つが選ばれたのか?」という点については先ほどご紹介した研究結果の一覧表を以下に示します。

・仙腸関節障害
(62人)
・腰部脊柱管狭窄症
・腰椎椎間板ヘルニア
(合計59人)
one finger test51
(82.3%) 
6
(10.2%) 
鼠径部痛34
(54.8%)
5
(8.5%)
椅子に座る44
(71.0%) 
22
(37.3%) 
仰向け41
(66.1%) 
30
(50.8%) 
横向き寝32
(51.6%)
22
(37.3%)
Newton test変法46
(74.2%)
15
(25.4%) 
PSIS圧痛51
(82.3%) 
13
(22.0%) 
LPSL圧痛43
(69.4%) 
12
(20.3%) 
STL圧痛32
(51.6%) 
8
(13.6%)
腸腰筋圧痛38
(61.3%) 
20
(33.9%) 

補足ポイント

  • ( )はそれぞれのテストの陽性率を示す
  • PSIS:上後腸骨棘
  • LPSL:長後仙腸靭帯
  • STL:仙結節靭帯

この研究では、疼痛部位、疼痛増強体位、疼痛誘発試験、圧痛点など10項目を仙腸関節障害グループと腰部脊柱管狭窄症+腰椎椎間板ヘルニアグループで比較しました。

その結果、分かったことが仙腸関節障害グループでは、one finger test、椅子に座る、Newton test変法、PSISの圧痛が高い陽性率を示しました。

  • one finger test:82.3%
  • 椅子に座る:71.0%
  • Newton test変法:74.2%
  • PSISの圧痛:82.3%

加えて、仙腸関節障害グループでは『鼠径部痛』を呈していた人が54%だったのに対しもう一方のグループ8.5%、『仙結節靭帯の圧痛』が51%だったのに対し、もう一方のグループは13%とその陽性率に大きな差が見られました。

これにより、仙腸関節障害とその他の腰部疾患との鑑別がある程度可能だということでこの6つが採用されたわけです。

満点は9点(カットオフ値は4点)

ご紹介した6つこれら評価にはそれぞれ、点数が振り分けられていてそれ込みの表が以下になります。

仙腸関節テスト点数
one finger test3点
鼠径部痛2点
椅子座位痛1点
Newton test変法1点
PSIS圧痛1点
仙結節靭帯圧痛1点

これら全て合計すると9点満点となり、このうち4点以上で仙腸関節障害が疑われそのほかの腰椎疾患との鑑別が可能になります。

ちなみに、カットオフ値を4点とした場合の感度は90.3%、特異度は86.4%となったのですが、カットオフ値を5点にした場合は感度が85.4%、特異度は93.2%に変化します。

配点の根拠についてですが、振り分けられた点数は『リスクスコア』といって、先ほど示した陽性率、加えてここでは解説していませんが『有意差』などを参考に振り分けられています。

陽性率とオッズ比を考慮し、10項目のうち、one finger test、鼠径部痛、椅子に座る、Newton test変法、PSISの圧痛、仙結節靭帯圧痛の6項目を選択した。各項目の仙腸関節障害グループにおける陽性率、特に回帰係数を用いて、各項目について同定されたリスクファクターに整数点を割り当てた。

A Diagnostic Scoring System for Sacroiliac Joint Pain Originating from the Posterior Ligament.kurosawa,2017より引用

全てのテストを実施してもせいぜい5分

臨床だとせいぜい20~30分しかないのに、6つもテストやってたらそれだけで時間なくなっちゃうんじゃない?

そんなことはありません。

なぜならば、one finger test(どこが痛いか)と鼠径部の痛み、椅子に座っている時の痛みは患者様本人に聞けば分かります。

つまり、問診の時点で既に3つのテストはスクリーニングできているんです。

そこから実際にセラピストがなんらか手を加えるのは、残り3つ(Newton test変法、PSIS&仙結節靭帯の圧痛)のみです。

これに関しても、それほど時間がかかるテストなわけでもないため全て含めたとしても5分見ておけば問題なく終わると思います。

いかがでしたでしょうか?

以上が仙腸関節障害を鑑別するために必要な6つのテストでした。

今回の記事でグッと興味が増した方はぜひ原著論文の方も読んで頂き、さらに精度を高め明日からの臨床に活かして頂けると嬉しいです。

それでは、明日もいい仕事しましょう!

参考文献

1)Associations between radiographic lumbar spinal stenosis and clinical symptoms in the general population: the Wakayama Spine Study.Y ishimoto,2013

2)Classification of chronic pain: Descriptions of chronic pain syndromes and definitions of pain terms.IASP,

3)仙腸関節痛の発生・慢性化のメカニズム.黒澤大輔,村上栄一,2021

4)Diagnostic Validity of Criteria for Sacroiliac Joint Pain: A Systematic Review.Karolina M,2009

5)A Diagnostic Scoring System for Sacroiliac Joint Pain Originating from the Posterior Ligament.kurosawa,2017

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