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ピノキオ錯覚とリハビリテーション

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きんたろー
こんにちわ!きんたろーブログです!

 

 

以前、振動刺激による運動錯覚がリハビリテーションに応用できるという記事を書きましたが、今回はそのメカニズムについて『ピノキオ錯覚』を用いてお話ししていこうと思います。

 

☆合わせて読みたい☆
運動錯覚と痛みのリハビリテーション~慢性疼痛を運動錯覚で予防できる!?~

 

運動錯覚による身体意識の変化

関節が『動く』から動いたと感じるのか?

筋肉や関節内に散りばめられた筋紡錘や腱紡錘は、身体意識、特に動きに関する感覚の生起に重要な役割を果たしている。

『身体運動学~知覚・認知からのメッセージ~ 著:樋口貴広.森岡周』

 

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関節運動には様々な運動があり、それに伴って関連する筋肉は縮んだり伸ばされたりします。

(例えば上腕二頭筋が収縮すると肘は屈曲、伸張されると肘は伸展する)

 

このように円滑な関節運動を担う役割として存在するのが‟筋紡錘”です。

 

筋紡錘の役割は、『筋の伸張度合い(長さ)を感知する』ことであり、滑らかな関節運動を可能とするように常に筋肉の監視役を担っています。

 

私達が目を閉じても関節の位置覚や運動覚が鮮明に分かる理由には、この筋紡錘が筋肉の状態を常に脳に送り続けてくれているからです。

 

しかし、実は…

 

仮に、関節運動が生じていなくても筋紡錘が筋の伸張度合いをキャッチすれば、容易に人は『関節が動いた』と身体意識の変化を感じることが出来ます。

 

その例が以前ご紹介した橈骨遠位端骨折術後患者に対して行った振動刺激です。

上腕二頭筋の振動刺激による運動錯覚

1972年Goodwinらはある実験を行いました。

 

Goodwin
眼を閉じて上腕二頭筋に振動刺激を与えると何が起きるじゃろうか? 

 

生徒
え…腕が…震える…ですか?…

 

実際に行ったところ…

 

‟肘関節が屈曲”しました。

 

これは、“緊張性振動反射(TVR)”と言われるもので、振動刺激に対して筋紡錘は敏感に反応するためこのような現象が生じます。

 

Goodwin
では次じゃ。このように肘関節が屈曲しないように固定した上で、上腕二頭筋に振動刺激を与えると何が起きるじゃろうか?

 

生徒
さっきと同じように肘が曲がって本が持ち上がる。ですか?

 

Goodwin
うむ、では答えをみてみよう。

 

 

Goodwin
このように、肘が伸展する錯覚が生じるんじゃ。 

 

この図のように、実際には動いていませんが本人の意識経験では肘が伸展したような運動錯覚が生じるのです。

 

なぜでしょうか?

①上腕二頭筋が本来収縮しなければならないにも関わらず、固定されていることで振動刺激自体が筋の伸張刺激になる。

②すると『上腕二頭筋が伸張されている』と筋紡錘がその情報をIa求心性ニューロンを通して脳に送る。

③結果、実際の肘関節は動いていないにも関わらず『上腕二頭筋が伸張されているということは=肘が伸びている』と、身体意識としては肘が伸びているといった運動錯覚が生じる。

 

 

ピノキオ錯覚

先ほど行った運動錯覚の実験。

 

Lacknerは先ほどの実験を、少しアレンジして行いました。

 

Lackner
 振動刺激を行う方の手で鼻をつまむと一体どうなると思いますか?

 

『知覚・認知と運動支援~リハビリテーションへの応用を目指して~ 樋口貴広』より引用

 

生徒
肘の屈曲は鼻をつまんでいるので出来ないから…さっきと同じで肘が伸びる錯覚が起きると思います!

 

Lackner
ふふふ…正解はこのようになりました。

 

➪つまんだ鼻が伸びるような運動錯覚が生じるのです。

 

これが『ピノキオ錯覚』です。

 

ただ、生徒の子がいうように鼻をつまむことで肘関節が屈曲することは出来なくなるため、先ほどの実験と同じように、伸展するような運動錯覚が起きるのでは?

 

と思うのですが、この実験の参加者全員は「鼻をつまんでいることはわかっているので、腕が動かないことは直感的に理解できています。

 

つまり、肘が伸展しているなんて思わないのです。

 

また、実験参加者は全員健常者であり、自分の鼻が物理的に伸びないことは分かっているにも関わらず、でも鼻が伸びたという運動錯覚が生じた…

 

なぜ、このような錯覚が生じるのでしょうか…

 

一つ一つ順を追って説明していきます。

①上腕二頭筋の振動刺激により肘は屈曲する。(これは緊張性振動反射によるもの)

②しかし、振動刺激を行う腕は指先で鼻をつまんでいるから実際には屈曲できない。

③となれば最初の実験のように『肘が伸びた』という運動錯覚が生じるはず。

④ところが、鼻をつまんでいるため指先の体性感覚情報から指先が鼻から動いていないことは分かる。(つまり肘は伸展していない)

⑤また、頚部の体性感覚情報などから頭部全体が動いていないことも分かる。(もし肘が伸展したのなら頭部は前方に引っ張られる)

 

 

こういった感覚が同時に起きた時、人の脳はどうするかというと…

 

矛盾が生じないように解釈します。

 

つまり・・・・

 

『鼻をつまんだ状態であるにも関わらず肘が伸展していくということは、鼻が物理的に伸びたに違いない』

 

と解釈してしその結果、『鼻が伸びる』という運動錯覚が生じることになるのです。

 

ピノキオ錯覚の現象は、脳が感覚入力情報に対して論理的、総合的な解釈を加えた産物として身体意識を生起させていることを分かりやすい形で示している。

『知覚・認知と運動支援~リハビリテーションへの応用を目指して~ 樋口貴広』

 

これが運動錯覚の正体です。

 

ではこれを踏まえて、前回の記事に書きました、橈骨遠位端骨折術後患者に対して行った振動刺激を見ていきましょう。

①総指伸筋に振動刺激を与えると総指伸筋が伸張され、その伸張刺激により掌屈する錯覚が生じる。

②しかし両手を合わせているため掌屈すると罹患側の手掌とぶつかってしまう。

③非罹患側が掌屈するということは罹患側は背屈しなければ成立しないので、何もされていない罹患側に背屈という運動錯覚が生じる。

 

このようなメカニズムになります。

 

以上が、振動刺激を利用した運動錯覚のメカニズムになります。

 

もし、ご興味あれば以下の教科書を読んでみてください(^^)

 

運動錯覚について書いていますよ(^^)

 

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