はじめに、みなさんは『システマティック・レビュー』という種類の論文をご存知でしょうか?
論文には、『原著論文』と言われるものや今回お話しする『システマティック・レビュー』というものなどがあり、そこに書かれているよう内容は種類によって異なります。
今回は、このシステマティック・レビュー論文を読むときに注意すべき点というテーマで一つお話ししたいと思います。
結構『システマティック・レビュー is KING』というような感じで、「システマティック・レビューに書いてある内容は全部正しい」と思い込んじゃう人が多いんですが、実は「ここ見落としたらまずいよ」っていうところもちょいちょいあるので、この記事ではその辺りを解説します。
日頃、論文を読んでいる方もこれから頑張って論文を読んでいこうと意気込んでいる方も、必ず一度目を通していただけるとうれしいです。
システマティック・レビューを読む時に必ず注意すること
システマティック・レビューとは
『システマティック・レビュー』とはざっくりいうと、あるテーマに関して世界中で書かれた既存の論文を網羅的に調べ、臨床で生じる疑問に答えるための論文です。
エビデンスピラミッドでいうと、一番上に位置付けられている論文の種類です。
※個人的にエビデンスピラミッドの概念自体があまり好きではないので、ひとまず「こんなもん」で覚えていただけたらと思います。
システマティック・レビューのメリット&デメリット
エビデンスピラミッドの一番上に位置すると、なんとなく「システマティック・レビュー最強!」「システマティック・レビューしか勝たん!」という思考に陥りがちなんですが、これにもきちんとメリットとデメリットがあるので、この辺りはきっちり抑えておきたいところです。
まず、メリットとして挙げられること。
それは、情報収集の手間が少なくて済むことです。というのも、システマティック・レビューは同じ種類の論文を片っぱしから集め、それらから総じて言えることを述べているので、1本1本論文を時間をかけて論文を読まなくても大体の傾向はシステマティック・レビューを読めば掴むことができます。
一方で、デメリットとして挙げられること。
それは、『システマティック・レビューに含まれている研究自体に質の低いものが混在している可能性がある』ということです。
質の低いものとは、例えばよくあるケースは『ランダム割り付け(RCT)』ができておらず、偏った結論を導き出している研究などです。
そうすると、繰り返しですが「システマティック・レビュー最強!」と思っている人からすれば、システマティック・レビューに書いてあることは全て正解であるという風に誤った解釈が行われる可能性があるため、ここは注意が必要です。
というわけで、システマティック・レビューの概要的な部分はざっとですがこんな感じです。
それでは、本題である『システマティック・レビューを読むときに必ず注意すること』について解説していきます。
システマティック・レビューを読む時の注意点
対象者を必ずみること
実例を交えて解説した方がしっくりきやすいと思うので、実際の論文を見ながらこれを紐解いていきます。
例えば 「発症から2年経過した脳卒中後遺症患者様の痙縮に対して振動刺激を行うと、普通の理学療法と比較して筋緊張の改善は図れるか?」 ということを調べるために論文を検索したとします。
そうすると、以下の論文がヒットしました。
この論文の概要をかなりざっくりまとめると…
2012年から2019年の間で”痙縮に対する振動刺激”について発表された8つの論文(合計268名の脳卒中後患者)をまとめ、”痙縮に対する振動刺激の効果の有無”について述べた。
Alashram AR.2019
です。 で、この論文の最終的な結論だけ見ると 「振動刺激は慢性脳卒中患者の上肢における痙縮軽減に効果があることがわかりました」 となっています。 そうすると…
よし!痙縮に振動刺激は効くんだな!早速担当患者さんに試してみよう!
というように解釈しやすいんですが、ここでちょっと一旦立ち止まりましょう。
というのが、このレビューが行われている8つの論文を詳細に見てみると1つ注意すべき点があるからです。それがこちら。
続きは『はじまりのまち』で!
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