【SPINによる誤読】論文を読むときに絶対やっちゃダメなこと

論文の読み方

医療の現場に携わる医師や看護師、理学療法士や作業療法士といった多くの医療従事者が日々行っていること。

その一つに「論文を読む」というのはないでしょうか?

論文には、世界中で行われた基礎研究や臨床研究の結果が記されており、これは年々常に更新され続けています。

そして、私たち医療従事者はこの論文に書かれている内容を参考にしながら臨床現場にて意思決定しているので、論文こそまさに『知の宝庫』といっても過言ではありません。

しかし一方で、論文を読んでいく場合にはいくつか注意しておかなければならない点というのもあり、ここを見逃したまま論文を読み進めていくと、結論とは違う解釈をしてしまったり、自分にとって都合の良い情報だけが残ってしまいやすくなります。

というわけで今回は、数ある注意ポイントの中でも、「特に一定数の方がやってしまいがちな、誤った論文の読み方。」について解説していきたいと思います。

ぜひ、最後までご覧いただき明日からの論文の読み方に活かして頂けると嬉しいです。

こんな人に読んで欲しい

・論文の『要約(abstract)』だけを読み、症例発表等において参考文献として利用してしまった経験がある。

・そして、その行為自体に対して特に問題意識がない。

目次

【SPINによる誤読】論文を読むときに絶対やっちゃダメなこと

要約(abstract)だけを読み理解したつもりになること

今回は注意ポイントを一つしか取り上げないので、早速結論から言うと…

論文の要約部分(abstract)だけを読んで、その論文に書かれてあることを理解したつもりにならないことです。

これは絶対にやってはダメで、なんならこの要約部分に書かれてあることを参考文献として症例発表等で引用するのは完全にアウトです。

要約だけ読んじゃダメな理由

要約だけを読んじゃダメな理由を話す前に、まず前提として、「ひとまず、この論文の概要をざっくり見てみて大枠を捉えよう。」とか「どんな研究なんだろう?」というように、本文に入る前にその論文の全体像を掴む目的で要約を読むのはもちろんOKです。

「何がダメなのか」というと、繰り返しですが…

「本文を読まずに要約だけでその論文を理解したつもりになること」

これがアウトなのです。

その理由は、要約で書かれている内容(結果や考察)と、本文に記載されているデータから読み取れる結論が異なっていることがあるからです。

つまり、仮に要約だけを読んでしまうと、その論文の結論に対して誤った解釈をしてしまう可能性が出てくるのです。

だからこそ、論文を読んでいく際には要約だけでなく本文にもきちんと目を通さなければいけません。

要約には『SPIN』が存在する

『SPIN』とは、試験の結果が有利に見えるように都合よく解釈し、読者に誤解を与えるある種の印象操作のことを言います。(Care Net,2019)

限られた時間のなかで論文を読むために、抄録や結論を鵜呑みにする傾向も示されていることから、論文にSPINがみられることは、論文の読者を誤った治療の意思決定に導く可能性がある。(藤本ら,2018)

SPINの定義
  • 研究結果の表現や解釈をゆがめた報告や、まぎらわしい解釈を創作している。
  • 結果と解釈が一致しておらず、解釈では良好であると示されているがデータや結果が伴っていない。
  • 因果関係を試験デザインから導き出せない。
  • 結果の過剰解釈や不適切な外挿が認められる。

↓引用元↓
https://www.carenet.com/news/journal/carenet/49285

もう少し、身近な場面に引き寄せるとこういうSPINがよくあるかなと思います。

統計学的に有意ではなかったにも関わらず、有益性を見せたいがために要約で考察を盛ってしまう。

客観的な結果だけ見ると、どうやってもその解釈にはならないのに著者の意図で要約の考察を歪めてしまう。

リハビリテーション分野におけるSPINの実態

リハビリテーション分野においてSPINがどれくらい存在しているのか?

これに関しては、藤本らによる報告で明らかになっているので、詳細気になる方は以下の論文をご覧ください。

参考文献

リハビリテーション分野における論文報告の質 ─ランダム化比較試験を対象とした文献調査─.藤本ら,2018

リハビリテーション分野のランダム化比較試験では、抄録の結論は本文の結果と比較して約80%がSPINであり、抄録の結果を読んでもその多くが結果を歪めて筆者の都合に合わせて記載されている。

著;リハに役立つ論文の読み方・捉え方.藤本ら,2020より引用

論文の読み方まとめ

というわけで、以上が「論文を読むときに絶対やっちゃダメなこと」でした。

SPINによる論文の誤った解釈はアカデミックな学会はもちろん、院内の症例発表会、そして自己研鑽の一環として勉強するときにもよくやってしまいがちな点です。

特に、時間がなく急いで論文を探している時などは往々にして要約に書かれてあることだけを切り取って解釈してしまいやすいです。

論文を誤って解釈し、それを広めてしまうと最終的に被害が及ぶのは患者様です。

だからこそ「知識は正しく入手すること」

これを日々心がけて論文を読んで頂けたらと思います。

なお、【論文の読み方シリーズ】として、もう一つ「システマティック・レビューを読むときの注意点」についても過去の記事で解説しているので、よければこちらの記事もご覧ください。

そして、今回ご紹介したSPIN以外にもう一つ要約だけを読んじゃダメな理由があるので、ご興味あればこちらも合わせてご覧ください。

それでは、今日も良い仕事していきましょう!

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