統合と解釈の書き方でよくある間違い3選

さていきなりですが、現在臨床現場で実習中の理学療法士や作業療法士学生さんのバイザーを行っているセラピストの皆さんに一つお聞きしたいことがあります。それは…

「統合と解釈のフィードバックきちんと行えていますか?」ということでございます。

臨床実習において必ずといっていいほど行われるイベントの一つがレポート作成ですが、その中にある『統合と解釈』は実習中多くの学生のみなさんが苦労するものの一つです。

とはいえ、これって実は学生さんだけに当てはまるものではなく、レポートを毎回チェックし指導する立場にあるバイザー(療法士)にも同じことが言えたりします。

つまり、「意外と統合と解釈の指導(フィードバック)って難しくね?」と、そういう話しです。

そこで今回の記事では…

この記事で分かること
  • 統合と解釈の書き方でよくある誤りパターン3つを覚える
  • それらを踏まえた上で統合と解釈のフィードバックが適切に行えるようになる

という、2つの点を読み終えた後にガッチリ掴めるようにできる限り分かりやすく解説していきます。

現在、もしくはこれからバイザーを行う機会がある方はぜひ最後までご覧いただき、実習生のご指導にお役立ていただけると幸いです。

目次

統合と解釈の書き方でよくある間違い3選

はじめに〜統合と解釈のおさらい〜

統合と解釈の書き方における誤りパターン4つを見ていく前に、まずはこの『統合と解釈』について確実に抑えておきたいポイントを振り返っておきたいと思います。

統合と解釈の解像度を上げる

ここは統合と解釈を書き始める前に絶対に理解しておきたいところです。むしろここを丁寧に抑えないまま統合と解釈を行うと確実に躓いちゃうと思います。

統合と解釈を書き始める前に必ずやるべきこと。それは、『何を統合して何を解釈するのか?』という統合と解釈の作業自体の解像度を上げることです。

『何を統合して何を解釈するのか?』

この問いに対する答えは、以下のようになります。

何を統合するのか?

A.各種検査測定(事実)

何を解釈するのか?

A.統合した様々な検査測定(事実)

だと考えた場合、バイザーの皆さんが統合と解釈を見る際のポイントは、この2つの情報に整合性があるか否かを分析していけばいいわけです。

これに関しては以下の記事にて詳細を書いているので、この話しがピンとこない方はまずはこちらをご覧ください。

きんたろーInstagramより引用
ここがポイント

統合と解釈は、各種検査測定(ファクト情報)を統合して、それら様々なファクト情報と患者様固有の情報を踏まえた上で評価(解釈)する。

まずは、このポイントをしっかりグリップした上で、統合と解釈の書き方でよくある間違い4つをこれから見ていきたいと思います。

統合と解釈の書き方誤りパターン① ファクト情報に対する解釈に飛躍がある

学生さんもそうですが、これは新人療法士でもよくある誤りパターンの一つです。どのようなものか、というと例えばある学生さんが自分自身の主張としてこのように述べたとします。

学生

本症例はCPGが駆動していないから歩行ができていないのです!

バイザー

お、それって何か根拠がありますか?

学生

はい!この方は脳卒中で、かつ歩行が困難となっています。脳卒中後はCPGが駆動しないという風に論文に書いてあったので、この方もCPGが駆動していないことによって歩行が困難になっているのだと思います!

はい、ここまでのやりとりですが何か違和感を感じたでしょうか?

結論から言うとこれは誤りです。理由は、解釈に対するファクト情報(根拠)があまりにも不足しているからです。

統合と解釈において大切なお約束、それはファクト情報(検査測定)と解釈(評価)に整合性があることなんですが、このケースの場合『脳卒中』と『歩けない』というファクト情報だけから「CPGが駆動していない」と解釈しているのですが、これはかなり結論が飛躍してしまっています。

『脳卒中』と『歩けない』という情報だけでは『CPGが駆動していない』と決定づけることはできず、もしこれを言いたいのであればその解釈を裏付け証明するための根拠を用意しなければなりません。

きんたろーInstagramより引用

こういう方に対して指導を行う際は、「言葉の解像度が細かくなるまで質問し続ける」というのが一つポイントです。

なぜならば、飛躍した解釈を行う人の特徴として「抽象度の高い言葉で理解したつもりになっている」というのがあるからです。

バイザーが質問を投げ続けることによって、学生さんは自分自身が解釈した内容を掘って掘って掘り下げなければいけなくなるので今回の例でいくならば、「CPGってどんな時に駆動するんだっけ?」というところまで問いを掘り下げそこに対して疑問を持てるようになれば自ずと飛躍した解釈が是正されていくと思います。

統合と解釈の書き方誤りパターン② とりあえずファクトを大量に並べちゃえ思考

個人的には、統合と解釈の書き方で最も多く見られる誤りがこれではないかと思っています。簡単に言うと、実際に評価(解釈)では用いないにも関わらず、とりあえず自分が行った検査測定の情報がふんだんに記載されている状態です。

このように、大量にファクト情報を並べてしまっている人の特徴は…『とにかく文章が長い』です。

というのも、自分が行った検査測定を全て文章にしてしまうので当然結論に至るまでが冗長になり、最終的には何が言いたいのかもいまいち分からないことがあったりします。

そのため、こういう方に対してアドバイスを行う際は、「ひとまずあなたが言いたいことを伝えるために必要な情報だけを使うこと。そして、行った検査測定情報は手元に持っておく分にはOKなので聞かれた時に引き出せるよにしておこう!」というようなニュアンスの助言をしてあげると良いかもしれません。

きんたろーInstagramより引用

統合と解釈の書き方誤りパターン③ 根拠はないが主張は強調パターン

この誤りも結構多いです。要は簡単にいうと、根拠が不足もしくは何もないにも関わらず、「自分はこう思います!」と憶測だけで主張するパターンです。

このようなタイプの方に行うアドバイスとしては、ひとまず「根拠は?」と質問を投げましょう。そして、実際にこのようなロジックツリーを描いていくというのもありです。

ロジックツリーを書いていくと、自分自身が行った主張に対する根拠があまりにも不足しているという事実に気づくことができるので、変に「この解釈間違ってるよ!!」と言葉で指摘するよりも効果は絶大だと思います。

まとめ

それでは、最後にここまで話してきた内容のポイントと補足点についてまとめていきたいと思います。

  • 統合と解釈の書き方において、上記3つに加えて他にありがちな失敗は根拠に持ってきた情報が正確ではないパターンがある。これについては、検査測定のやり方がそもそも間違っているケースが大半なので、正しい方法を指導する。
  • 統合と解釈に限らず、抽象度の高い言葉を用いる際には必ず解像度を上げ、言葉の意味を理解できるレベルになるまで考える癖をつける。
  • バイザーの皆さんは、学生さんの『統合と解釈』を読んで途中から意味が分からなくなった場合は、ひとまず文章をロジックツリーに分解してみると、どこが良くてどこが誤っているかを見つけやすい。
  • バイザーの皆さんが『統合と解釈』の指導が分からず思考がフリーズした結果、学生さんの人間性の指導に走り始めるのは最悪。まずは自分がやらなければいけない仕事をきっちりすること。
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