理学療法士や作業療法士学生の皆さんが一度はぶつかる壁、それが『症例発表(報告)』ではないかと思います。
そして、この症例発表を行う過程の中で必ずといっていいほど実施するのが『統合と解釈』と言われるものです。
ところが、多く方(学生はもちろん指導する療法士も)が…
統合と解釈ってどんなことをすればいいの?というより、そもそも『統合と解釈』ってなに…?
このように、統合と解釈に対して苦手意識を持っていたり、進めていく上で悩みを抱えている方が非常に多いのが現状です。
そこで、本記事を書くにあたって狙いたい成果は2つです。
- 統合と解釈とは何かを言語化できるようになる
- 統合と解釈において見るべきところが分かるようになる
最後まで読み終えた際には、上記2点が確実に抑えられている状態になっていると思いますので、現在『統合と解釈』でお悩みを持たれている方はぜひ最後までご覧ください。
『統合と解釈』とは何かを超分かりやすく解説してみた
統合と解釈を行うときに必ず失敗するパターン
「統合と解釈とは何か」を説明する前に、はじめにとても大切なことをお伝えします。
まず、統合と解釈を行う際に躓くポイントというのは人によっていくつかパターンあるのですが、その中で再現性高く「これをやると確実に失敗するかも」という失敗パターンが一つだけあります。
それが、『検査測定』と『評価』を同じレベル感で取り扱ってしまうことです。
『検査測定』と『評価』の違いが分かれば統合と解釈はできる
検査測定とは
検査測定というのは、様々なデバイスや機器を用いることで対象者の能力などを測ることです。代表例で言うならば筋力の状態を測る『MMT』や関節可動域の状態を測る『ROM-T』、あとは歩行の検査である『6分間歩行テスト』、『Time up & go test』などが挙げられます。
これら検査測定の特徴は、基本的に『状態のみ』=『ファクト(事実)』を表し、これが良いか悪いかなどは別問題になります。
評価とは
検査測定に対して『評価』とは何かというと、上記で見てきた様々な検査測定の結果と、対象者の方固有の問題(生活環境など)を組み合わせて「判断を下すこと=解釈すること」に値します。
『検査測定』と『評価』の2つが臨床では結構混同されがちなんですが、ここがごちゃ混ぜになってしまうと確実と言っていいほど統合と解釈で躓くことになります。
なぜならば、この後詳しく述べていきますが…
統合と解釈は、検査測定を『統合』して、それら情報から導き出せる結論が『解釈=評価』だからです。
統合と解釈を行う時はロジックツリーを作ると分かりやすい
『統合と解釈』というワードは、それ自体がものすごくざっくりしており抽象度が高いので、このまま取り扱うと大体思考が迷宮入りしてしまいます。
よって、統合と解釈を行うときの最大のポイント。それは、「何を統合して何を解釈するか?」という問いに答えることです。そして、この問いに対する答えというのが先ほど述べた『検査測定』と『評価』になるわけです。
統合と解釈でいるべきポイントが分かったら、次に行うべきが『分別』です。つまり、いま自分が見ている情報は『事実(検査測定)』なのか『解釈(評価)』なのかというのを分けていく作業です。
統合と解釈で失敗するパターンの多くはこの時に…
- 事実の中に自分の解釈を混ぜてしまう
- 事実(根拠)がないのに飛躍した解釈を行ってしまう
といったように、事実と解釈がごちゃごちゃになってしまうケースが多いです。
そこで、これら分別作業をやりやすくするためにおすすめの方法が『ロジックツリーを作ること』です。
ロジックツリーとは主に、ロジカルシンキング(論理的思考力)などを行う際によく用いられるツールで、『主張』と『根拠』を丁寧に順序立てて説明するときに使われる方法です。
実は統合と解釈を行う時は、このロジックツリーが大いに役立ちます。というのも、解釈の部分で述べている『評価』は、具体化していくと必ず根拠となる『検査測定』がそこには羅列されるはずだからです。
逆に、様々な検査測定を複数集めていくと「そこから何が言えそうか?」という解釈ができるのですがこれを抽象化といって、つまるところこの作業が『評価』になるわけです。
よって、『統合と解釈』を行う際に必ずロジックツリーを作成していけば、自ずと『検査測定』と『評価』を分けられるようになり、「気づいたら統合と解釈ができている」といった状態をつくることが可能になると思います。
統合と解釈の例を出すとこんな感じ
最後に、ここまで話してきた内容を応用し『統合と解釈』の例文を作ってみたいと思います。
まず、あなたの解釈(評価)はこうです。
〜さんの症状の原因は◯◯であると考えます!
そうすると、一部の人からこんな疑問が飛んでくるはずです。
なぜそう思ったの?その根拠は?
この質問に対してあなたは、このように答えました。
理由は、検査①が陽性だったこと、2つ目にMRIで△△の所見が見つかったこと、最後に×テストが陽性だったこと。この3つの検査が根拠だと考え、〜さんの症状の原因は◯◯であると思いました。
この一連の流れというのが『統合と解釈』になります。(分かりやすくするためにとてもざっくりしていますが)
このように統合と解釈を行う際は、一塊でこのワードを扱うのではなく…
「検査測定を統合して、そこから何が言えるかを解釈するんだな」
というように変換して考えていくと、スムーズに統合と解釈に取り組むことができるようになると思います。
統合と解釈のまとめ
それでは、最後に本記事でポイントとなった部分をまとめていきたいと思います。
- 『検査測定』と『評価』を同じものとして取り扱うと『統合と解釈』で確実に躓く。
- 『検査測定』で得られた結果はファクト(事実)であり、それら複数のファクト情報を統合したものが『解釈(評価)』になる。(事実と解釈は必ず分ける癖をつける)
- 『統合と解釈』はロジックツリーを作りながら行うと思考がクリアになりとても進めやすくなる。
- 『解釈(評価)』を具体化すれば検査測定の結果がそこには必ずあるはずだし、複数の検査結果を抽象化すればそれが評価になるはずである。
- 『ファクト情報』は誰がどう見ても絶対に変わることがない“事実”だが、『評価』は見る人によって主張は異なる。なぜならそれは”解釈”だからである。
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