『身体図式』の図解とリハビリに活かす考え方

きんたろー
みなさん、こんにちは。理学療法士のきんたろーです。

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日々、リハビリテーションに携わっている方であれば一度は聞いたことがあるであろう単語の一つに『身体図式』というものがあります。

『身体図式』が主に使われる場面を考えてみると、よくあるケースは神経疾患のリハビリテーションを進めていく際に、臨床推論の材料の一つとして議論の中に用いられたりすることが多いかと思います。

類似語として『身体イメージ』なんかもよく使われますが、この両者の違いについては以下の記事にまとめていますので、ご興味ある方はご覧ください。

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本記事においては…

・『身体図式』とはそもそもどんなものなのか?
・『身体図式』の特徴とは何か?
・『身体図式』を臨床場面にどのように活かせるか?

以上大きく3つの論点について解説していこうと思います。

これから、神経系について勉強を始めていこうと思っている方向けに書いておりますので、ぜひ最後までご覧ください。

『身体図式』の図解とリハビリに活かす考え方

身体図式の起源と機能局在

『身体図式』という言葉を最初に提唱したのはヘッドさんとホームズさんという2人の人物です。これが1911年のことです。

ただし、実はこの身体図式という言葉が提唱したその背景には、それ以前にカナダの脳神経外科医であるペンフィールドさんが、てんかん患者様の脳に電気刺激を行う中で「脳には、身体部位に対応した機能局在があるよ!」という発見に起因しています。

『身体部位に対応した機能局在』とは、要は脳内の一次運動野や一次体性感覚野に手や足、顔などの身体部位に応じて反応する脳領域が存在するということです。

 

 

 

身体図式を取り扱った知見から分かった事実

教科書や参考書を見てみると、上記のように身体図式は、「身体部位と対応するように配列されている」という旨の記載が書かれてあることがほとんどですが、これはあくまで正常であればという話しです。

実は、身体図式にはもう一つ特徴があります。

答えは後ほど述べるとして、まずはそれを示した研究を一つご紹介します。

Massive cortical reorganization after sensory deafferentation in adult macaques.pons,1991

PubMed

After limited sensory deafferentations in adult primates, so…

どのような研究かと言いますと…

マカクザルの感覚神経遮断を故意的に遮断し、その11年後に大脳皮質の機能局在を調べたのです。

これによって、身体状態がいわゆる正常ではなくなった場合に、身体図式がどのように変化するのかを知ることができるのです。

 

 

詳しい研究方法等はここでは割愛させて頂き、早速結論から述べると…

こんなことが起きました。↓

 

恐らく、多くの方がこんな反応になったのではないでしょうか?(僕も始めてこの論文を見たときはこうなりました)

最大の「は?」ポイントは…

なぜ、上肢に刺激を入れた時ではなく『顔面』に刺激を入れた時に、脳内の上肢領域が反応したのか?だと思います。

身体図式は常に変化し続けている

なぜ、顔面を触れると麻痺した上肢領域の体性感覚野が反応したかは正直わかりませんが、この事実からわかることとしてここで抑えていただきたいこと。

それは、私たち生物の身体図式というものは身体状況に合わせて、常に変化し続けている可能性があるということです。

 

よって、身体図式について学ぶ際には、「身体図式は、どのような状況においても綺麗に配列されているものなのだ。」という理解をするのではなく、「身体状況に合わせて図式そのものも変わる可能性がある」ということを前提に学んでいく必要があるかもしれません。

 

身体図式の知識をリハビリに活かす

それでは、最後にここまでお話ししてきた身体図式の知見を臨床に活かしていくための考え方についてお話ししていきたいと思います。

まず結論から言うと…

私たちが見ている患者様の“物理的な身体状況”と、患者様本人が“感じている身体”にはズレが生じることがあります。

例を出すと、例えば脳卒中後遺症患者様のリハビリにおいて、荷重訓練という名のもとに立位でトレーニングを行う場面をよく見かけます。

この時、セラピストの意図としては麻痺側の足底が床に接地されることで麻痺側下肢全体に荷重がかかり感覚のトレーニングになると考えていたとします。

確かに、物理的には麻痺側の足底が床に接地しているので“なんとなく”外側から見たら感覚が入っているような気がします。

ところが、実際の患者様はどう感じているかというと、麻痺側の足底がそもそも床についているかどうかがあまりピンときていない』みたいなことはよくあります。

これがセラピストが外側から見た状態と、患者様本人が感じていることがズレている場面の一例です。

 

 

では、どのようにしたらこのズレを解消することができるのか?

という問いに対する答えは、『患者様の言葉を拾うことである』と僕は考えています。

なぜならば、患者様本人がどのように感じているかと言うのは、外から見てもわかるものではなく、本人から出てくる言葉にしか答えを知る術がないからです。

リハビリテーションを進めていく際に、セラピストが一方的に患者様の筋肉や関節を動かしたりする場面を多く見かけますが、もし余裕があれば…

 

セラピスト
どのように感じているだろうか?

 

という部分に想いを馳せ、時にはそれを実際に聞き、相互にコミュニケーションを取りながらリハビリテーションを進めていけると良いのではないかと考えています。

 

 

以上が、『身体図式の基礎的な話しと臨床へ活かすための考え方』でした。

この話しがみなさんの明日の臨床の一助になれば幸いです。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

参考文献

・Massive cortical reorganization after sensory deafferentation in adult macaques.pons,1991