リハビリテーション(rehabilitation)と一言でいっても、その中には大きく5つの分野があることをご存知でしょうか?
5つの分野とは、『教育的リハビリテーション』、『職業的リハビリテーション』、『社会的リハビリテーション』、『医学的リハビリテーション』、『地域リハビリテーション』です。
理学療法士や作業療法士の学生さんであれば、おそらく『リハビリテーション概論』等の教科を通して一度は聞いたことがあるのではないでしょうか?
名称だけは知ってるけど、その中身って意外と知らないかも…
と感じている方も一定数いるかと思いますので、今回は改めこれら5つのリハビリテーション領域を一つずつ解説していきます。
【全て説明できる?】リハビリテーションの5つの分野を正しく理解しよう!
1)教育的リハビリテーション
教育的リハビリテーションの目的
教育的リハビリテーションは、年齢に関係なく障がい者の方の総合的能力を発達、向上させ、結果的に障がい者自身の自己実現達成のために支援してくことを目的としています。
教育的リハビリテーションにおける具体的な支援
教育的リハビリテーションにおける具体的な支援の方法としては、学齢期教育や高等学校などでの養護教育・特殊教育が含まれます。
2)職業的リハビリテーション
職業的リハビリテーションの目的
職業的リハビリテーションとは、障害によって就労が困難になった方に対して、就労復帰を目的とした専門的指導や訓練を提供するリハビリテーションの分野です。
職業的リハビリテーションは、1987年改正の『障害者の雇用の促進等に関する法律』における第二章にもしっかり項目が設けられていて、以下のように定められています。
職業リハビリテーションの原則
- 職業リハビリテーションの措置は、障害者各人の障害の種類及び程度並びに希望、適性、職業経験等の条件に応じ、総合的かつ効果的に実施されなければならない。
- 職業リハビリテーションの措置は、必要に応じ医学的リハビリテーション及び社会的リハビリテーションの措置との適切な連携の下に実施されるものとする。
職業的リハビリテーションにおける具体的な支援
職業的リハビリテーションに関係する施設を以下に列挙します。
- リハビリテーションセンター
- 障害者授産施設
- 福祉工場
- 共同作業所
- グループホーム
- 地域障害者職業センター
- 障害者職業能力開発校
- 職業訓練校
- 障害者雇用情報センター
- ハローワーク
- 障害者雇用支援センター
ソース:PT・OTビジュアルテキスト|理学療法概論 課題・動画を使ってエッセンスを学びとる.第一版,庄本康治
3)社会的リハビリテーション
社会的リハビリテーションの目的
国際リハビリテーション協会が1986年に示した、社会的リハビリテーションの定義がこちらです。
社会的リハビリテーションとは、社会生活能力(social functioning ability)を高めることを目的としたプロセスである。社会生活能力とは、さまざまな社会的状況のなかで自分のニーズを満たし、一人ひとりに可能な最も豊かな社会生活を実現する権利を行使する力を意味する。
厚生労働省平成22年度障害者総合福祉推進事業報告書.第8章第4節:リハビリテーションと社会リハビリテーション
社会的リハビリテーションにおける具体的な支援
職業的リハビリテーションに関係する支援と施設を以下に列挙します。
- 経済的支援
- 福祉用具の支給
- 家庭介護
- 社会参加への機会提供など
- 国または地方自治体
- 福祉事務所
- 児童相談所
- 更生相談所
- 病院またはリハビリテーションセンター
- 介護老人保健施設またはデイサービス
- 社会福祉施設
- 社会福祉協議会
- 在宅介護支援センターなど
ソース:PT・OTビジュアルテキスト|理学療法概論 課題・動画を使ってエッセンスを学びとる.第一版,庄本康治
4)医学的リハビリテーション
医学的リハビリテーションの目的
1949年、WHOは医学的リハビリテーションを…
予防医学、治療医学に次いで第三相の医学ともよばれ、疾病や事故による後遺症、慢性疾患、老人症など治療期間が長引きやすい患者の潜在能力に働きかけて、自然治癒を積極的に促進させる技術であり、内科的・外科的治療の応用とともにあらゆる物理的・心理的手段を補足的に併用させる一連の医学的措置である。
これは、単に治療のための医学的看護措置だけでなく、理学療法・作業療法・言語療法・補装具の処置と訓練・医療ソーシャルワーカーによる援助なども含み、医療の可能性を最大限に拡大させようとする積極的な厚生援護である
と定義しています。
また、その20年後にあたる1969年にWHOは医学的リハビリテーションを…
障害者自身の身体的、心理的能力、そして必要に応じて代償的機能を医学的手段で発展させる介入方法である
と定義しています。
医学的リハビリテーションにおける具体的な支援
医学的リハビリテーションが主に提供される場所といえば、病院や診療所といった医療機関が主となります。
5)地域リハビリテーション
医学的リハビリテーションの目的
日本リハビリテーショ病院・施設協会による地域リハビリテーションの定義(1191年)
障害のある子供や成人・高齢者とその家族が、住み慣れたところで一生安全に、その人らしくいきいきとした生活ができるよう、保健 ・医療・福祉・介護及び地域住民を含め生活にかかわるあらゆる人々や機関・組織がリハビリテーションの立場から協力し合って行なう活動のすべてを言う。
つまり地域リハビリテーションとは、これまで医療機関等がメインであったリハビリテーションが、退院後にしっかり地域でも継続できるようつくられた仕組みです。
医学的リハビリテーションにおける具体的な支援
主なものは『訪問サービス』・『通所サービス』・『入所サービス』が挙げられます。
- 訪問サービス
訪問リハビリテーションなど - 通所サービス
デイケア・デイサービスなど - 入所サービス
介護老人保健施設など
5つのリハビリテーションの分野まとめ
以上が、リハビリテーションにおける5つの分野になります。
社会的リハビリテーション、教育的リハビリテーション、職業的リハビリテーション、医学的リハビリテーション、地域リハビリテーション、どれも言葉自体は聞いたことがあるとは思いますが、具体的にどんなもを指しているのか。
この辺り、少しは解像度が高まりましたか?
これを機に、それぞれのリハビリテーション分野にどういった役割があるのかそれらを把握して頂けたら幸いです。
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