【きんたろー流】ケースノートの作り方

みなさんは、日々臨床を行っていく際に『ケースノート』を作成されているでしょうか?

僕は、理学療法士になった1年目の頃から現在まで、臨床を行う際は必ず担当患者様一人ひとりのケースノートを作成しています。

その理由は、以前僕はどちらかと言えば思い込んだら直感的に結論を出してしまう癖があり、バイアスを多く含む臨床推論をしてしまいがちになっていたからです。

これによって、「患者様に必要なリハビリではなく自分がやりたいリハビリ」がかなり先行している感を強烈に感じ、この問題を防ぐために頭の中で考えていることを書き出し、できる限りバイアスがかからないよう臨床を行う目的でケースノートを作り始めました。

そこで、本日お伝えする内容は僕が実際に臨床で活用しているケースノートの作り方をご紹介したいと思います。(2017〜2018)

ちなみに、ノートを作る上で参考にさせていただいている書籍があって、それがSHOWROOM社長の前田裕二さんが著者の、『メモの魔力』という書籍です。

すごく面白いので、ぜひ一度読んでみてください。

目次

【きんたろー流】ケースノートの作り方

では、さっそくケースノートの作り方の手順を以下に示します。

ケースノートの作り方①『テーマを決める』

まず、何よりも最初に行うのがこれです。

その理由は、以前書いた『クリティカルシンキングを用いたリハビリテーション戦略』でも話したように、テーマ(イシュー)が明確になっていなければ、情報が溢れすぎてしまいパニックに陥ることがあるからです。

そのため、まずは最初に『対象者のどの行為の改善を図りたいのか』といったテーマを明確にするところからスタートします。

この図の赤い丸がある辺りにテーマを記載します。

テーマを書く時も、抽象度の高いものにしていてはダメです。

具体的に、その問いに答えられるようなものでなければ思考がフリーズしやすいので注意しましょう。

ケースノートの作り方②『ファクト(事実)を集める』

テーマを決めたら次に行うのが、この作業です。

まず、大学ノートを開き左側のページにファクトを書き出します。

※使うノートは何でもいいですが、書く量がどうしても多くなってしまうため僕はA4の大学ノートを使用しています。

この時の『ファクト』とは何を示しているかというと、これは対象者に生じている現象評価結果対象者の方が経験している一人称の感覚(主に言語として表出されたもの)を表します。

また、このファクトを書き出す際、押さえておきたい大事なポイントがあるため以下に記載しています。

ここがポイント
  • 自分の解釈を含ませないこと(事実と解釈を混同させない)
  • 目の前で起こっていることを着色せずありのままを書き出す

もう一点、ファクトを書き出す時はノートに直接書くのではなく付箋を使うことをおすすめします。

理由は、付箋の方が並べ替えが出来るので思考を整理しやすいからです。

あと、ファクトを書き出すときに当然多すぎて左半分だけでは足りないことがあると思います。

そんな時は、左のページを身体的所見、右のページを対象者の一人称の経験と言う風に分けて書くのもありだと思います。

こんな感じです。

頭に残っているファクト情報だけだと、どうしても自分にとって都合の良い情報が残りがちになりますが、このように書き出すことによって、客観的に対象者の病態を探ることができます。

ケースノートの作り方③『仮説を書き出す』

ノートの左側にファクトを書き出したら、次に行うのが仮説の立案です。

ノートの左側に書いてあるファクトを見ながら、ノートの右側のページに仮説を立てていきます。

この仮説は、多ければ多い方が良いと思います。(理由は後から述べます)

ケースノートの作り方④仮説を検証するための方法論を書き出す

仮説を書き出した後に行うのは、この仮説を検証する手段、いわゆる方法論です。

方法論を書いていく場合のポイントは、あくまでも仮説を検証するための方法論であり、決して『自分のやりたいこと』にしないようにすることです。

もし、検証していくための方法論がスキル不足で出来ないのであれば、先輩セラピストに相談し、時間が取れれば介入を手伝ってもらうなんてこともアリだと思います。

ケースノートの作り方⑤反証作業を行う

さて、ファクトを集め仮説を立案し、検証まで進みましたが、実はこれで終わりではありません。

ここからがケースノートの最も大切な部分になります。

検証を終えた後にしなければならないことは、もう一度仮説を書き出したページを見返し、仮説が外れたもの、すなわち、反証された仮説については斜線を引いて消していきます。

反証作業を行う理由は、対象者の病態解釈を表面的な形で決め打ちしないようにするためです。

この作業を行うことで、さらに思考を整理することができ、問題点を絞っていくことが出来ます。

また、この作業の中で最も大切なことが1つあります。

それは、立案した仮説が全て反証される場合があることです。(つまり、仮説が全て外れる)

仮説の量が少なければ少ないほどこれは生じやすいため、できる限り仮説の量は沢山考えていた方が良いです。

ただ、僕自身もこのように仮説が全て外れる場合というのは頻繁に起きます。

では、こんな時どうするか。

潔く認めることです。

自分が立てた仮説が全て外れた事を認めた上でその後は、検証作業によって得られた新たなファクトも加え、思考を整理し直します。(次のページに書く)

時々、自分の臨床が思い通りにならないからと、抄録の考察やデータを都合の良いように改ざんする人がいると聞きますが、それではその時は良くても、臨床思考力は一向に成長しません。

『上手くいかない』という事実を素直に認め、思考を繰り返していく姿勢が必要ではないでしょうか。

ケースノートの作り方まとめ

さて、ざっとですが以上が僕が使用しているケースノートの作り方です。

僕はこのような形で自分の思考をまとめ、毎日臨床を行っています。

このケースノートを書く際にいつも意識していることは以下の3つです。

きんたろーが意識しているポイント3つ
  • 自分の好きな方向・得意な方向に思考を誘導していないか?
  • 事実を着色・改ざんしていないか(解釈を含んでいないか)?
  • 反証作業がきちんと行えたか?

この3点は、必ず意識しながらノートを作成しています。

また、反証作業のところでも書きましたが立てた仮説が全て反証されることは実際の所めちゃめちゃあります。

必死に考えた仮説が全て反証されると、凹まないと言えば嘘になりますが、一方で「これが臨床なんだろうなあ…」と、どこか臨床はこのくらい難しくて当たり前だと思っている自分もいます。

思考を振り出しに戻すのは多少苦しいことではありますが、この地道なトレーニングの繰り返しがいつか実を結ぶのではないかと僕は信じています。

臨床推論のトレーニングをしたい方へ

また、このような臨床推論プロセスについて体系的に学べるコラムをオンラインサロン『はじまりのまち』というところで作成しています。

ご興味ある方は、こちらもチェックしてみてください!

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コメント

コメント一覧 (1件)

  • コメント失礼します。
    PT2年目なのでこういった思考系の内容はほんとに為になります。

    1のテーマを決めるという項目についてなのですが、
    左開きのファクトの部分には例えば、
    「歩行中に体幹が前傾してくる」などの現象を一つだけピックアップして、それについて右開きで仮説検証を行なっていくという解釈でよろしかったでしょうか。

    もし解釈が間違っているのであれば教えて頂ければ幸いです。

藤田悠斗 へ返信する コメントをキャンセル

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