日々治療に携わっているセラピストの皆さんであれば、『オステオパシー』という治療手技を一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?
オステオパシーとは、1874年にアンドリュー・テイラー・スティル(A・T・スティル)というお医者様が創った手技による治療法です。
現在では、治療院をはじめとする多くの現場でこのオステオパシーが利用されており、いまこの記事をご覧になっている方の中にも「実際に治療でオステオパシーを用いている」もしくは「オステオパシーに興味があり、これから勉強しようと思っている。」と考えている方がいるのではないかと思います。
それだけ、国内でも広く浸透してきているオステオパシーですが、一方で…
オステオパシーを手技として用いていく中で一つだけ注意しておかなければならない点というのがあります。
それは、『エビデンス』に関してです。要は…
オステオパシーって本当に効果あんの?
という部分でして…オステオパシー自体素晴らしい手技である一方、科学的にその効果を検証している報告というのは国内においてはあまり多くありません。
だからこそ、「興味はあるものの、オステオパシーって本当に効果があるんだろうか?」というところに対して少なからず疑問を抱いている方も中にはいらっしゃるのではないかと思います。
実は、海外で『back pain osteopathy(腰痛 オステオパシー)』と検索をしたところ、なんと約18000件ほどの論文がヒットしました。
つまり、海外の研究をくまなく紐解いていけばオステオパシーのエビデンスもきちんと導き出せるのではないかと僕は思っています。
そこで本記事では…
- オステオパシーがどのような腰痛患者に有効な手段なのか?
という点について、海外の研究論文をもとに解説していきます。
それでは、はじめていきましょう!
【科学的根拠あり】腰痛に対するオステオパシーの効果とは?
腰痛に対するオステオパシーの効果を調べた研究の概要
今回ご紹介する論文はこちら。
Targeting Patient Subgroups With Chronic Low Back Pain for Osteopathic Manipulative Treatment: Responder Analyses From a Randomized Controlled Trial.jhon 2016
オステオパシーという手技は腰痛をはじめとする様々な疼痛治療の一つとして用いられていますが、 ただ一口に「痛み」と言っても幅が広く弱い痛みから強い痛みまであるため、このうちオステオパシーは一体どの程度の痛みの状態に著効するのでしょうか?
この論文は、それを調査した研究になります。
- 対象者
21歳〜69歳までの腰痛を持つ男女455人 - 研究デザイン
オステオパシーを実施する群と実施しない群にランダムで振り分け - 評価項目
・Visual Analog Scale(VAS)
・Roland-Morris Disability Questionnaire(RDQ)
※RDQとは、腰痛疾患特異的な活動能力をみる評価スケールのことです。
研究方法ですが、治療内容はオステオパシーによる手技を一回15分間にて実施しています。
オステオパシー手技の内容ですが、この研究で用いられたのは『軟部組織テクニック』、『関節手技』、『高速低振幅手技』の3つです。
治療期間は0週目、1週目、2週目、4週目、6週目、8週目の計6回行われ、オステオパシー治療開始から12週目に最初(0週目)よりも50%以上腰痛が軽減した状態を『改善』と定義しました。
研究の結果から明らかになったこと
それでは、以下からは今回の研究にて明らかになった「腰痛に対するオステオパシーの効果」について解説していきます。
①オステオパシーは中等度以上の腰痛を軽減する効果がある
この研究から分かったことの一つ。
それは、オステオパシーは慢性腰痛患者の疼痛強度を中等度または大幅に改善する効果が期待できました。中でも特にVASスコアが35㎜以上の患者に著効するということがこの研究から明らかになりました。
※ただし、VASスコアが35㎜以下の患者では中等度の改善効果であった。
RDQに関する結果においては、初期のRDQスコアが7以上の患者では中程度の効果が得られ、初期のRDQスコアが16以上の患者では大きな効果があったことがわかりました。
RDQは、24点満点の評価で、この得点が大きくなればなるほど活動量が低いと評価できる。
②オステオパシーは腰部の運動機能を改善するわけではない
腰痛そのものに関して、オステオパシー手技は一定の効果を示すことが明らかになったい方で、腰部固有の運動機能を解決するには至らなかったことも、また一つこの研究で明らかになりました。
腰部固有の運動機能とは、腰椎の運動学的側面のことです。
痛みは改善できたとしても腰椎の運動機能までもを改善するには至らないため、この辺りを変化させていこうと考える場合には、オステオパシー以外の手技(例えば運動療法など)を併用して介入していく必要がありそうです。
腰痛に対するオステオパシーの効果まとめ
それでは、以上を踏まえポイントをまとめていきたいと思います。
- オステオパシーは中等度以上の腰痛には著効する可能性がある。
- 一方で、痛みの強度が弱い(35㎜以下)腰痛患者にはオステオパシーは不向きかもしれない可能性がある。
- オステオパシーは活動量が低い患者に著効する可能性がある。(RDQスコアより)
- オステオパシー手技は腰部の運動機能を改善するわけではない。
最後に、オステオパシーで用いられる手技は今回研究で用いられた手技以外にも様々なものがあります。(筋膜リリースなどはその代表かも)
以下の記事では、それをを含めオステオパシー手技を網羅的に学べる書籍を紹介しているので、ご興味ある方はこちらをご覧ください。
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