痛みのリハビリを進めていく際に必要な身体活動量の評価項目まとめ

みなさんは、痛みに対するリハビリテーションは日頃の臨床でどのように行っていますか?

実は、痛みに対するリハビリテーションを行う際には、痛みそのものに対するアプローチに加え、痛み自体がもっている多角的な側面(感覚・情動・認知)を含めた包括的なアプローチも必要になってくる場合があります。

特に、慢性疼痛では恐怖-回避モデルに示すように最初は末梢の効果器を原因とした痛みが、破局的思考や回避行動、不活動などにより痛みの側面が拡大していくことが分かっています。

また少し違う角度から捉えると、痛みを有する患者様の中には…

疼痛患者様

動くから痛みが強くなるんだ!

というように、『痛み』と『運動』を結びつけるような誤った認知が存在する場合があります。

このような思考が定着すると、不活動がさらに進行し痛みの慢性化に拍車がかかってしまいかねません。

そのためにも、やはり先ほど述べたように、『痛みそのものの改善(感覚的側面)』をする一方で、それにより障害されたADLやQOLに目を向ける事で誤った認知の歪みを是正し身体内部(情動・認知)から疼痛に対峙していく介入も必要になってくるのではないかと思います。

※局所に対するアプローチ(感覚的側面)も当然ですがかなり大事になってくるので「痛みは情動・認知だ!」と偏った解釈・推論にならないようよろしくお願いします。全て大事です。

今回は、以下の図に示す中の『身体機能』に着目し、疾患特異的な身体活動評価にフォーカスして、評価の種類を挙げていこうと思います。

『ペインリハビリテーション 入門』より引用

ペインリハビリテーション入門

痛みによって、どの程度身体活動が制限されているのかを把握することに加え、治療の客観的な効果判定のツールとしても利用価値があるのでぜひ参考にしてみてください。

目次

痛みのリハビリを進めていく際に必要な身体活動量の評価項目まとめ

脊椎(腰痛)疾患における活動量評価

Roland-morris Disability Questionaire(RDQ)

  • 腰痛特異的QOL尺度で国際的にも広く使用されている
  • 日常生活の動作における、腰痛の状態について「はい」「いいえ」の二択で解答する
  • 全24項目からなっており、得点が高い程腰痛によって日常生活の障害度合いが高い。

※年齢と性別によって平均点に違いがあるため、以下に詳細を示す。

男性女性
平均値/標準偏差平均値/標準偏差
20代2.12/3.192.39/3.33
30代3.72/4.822.05/2.86
40代2.10/3.403.62/5.05
50代2.77/4.033.30/4.13
60代5.27/5.884.82/5.08
70代5.83/5.247.90/6.39
著 ペインリハビリテーション入門.沖田実,松原貴子より引用

Oswestry low back pain disability index(ODI)

  • 慢性腰痛患者のADL障害の程度を評価する
  • 痛みの強さ、日常生活動作障害の程度に関する10項目の質問からなる(各項目6段階評価)
  • 50点満点で100%表示に算出し、点数が高い程状態が悪い。

※補足※

  • RDQとODIは相関関係にあるが、RDQの方が多く使われている
  • 軽症例ではRDQが、重症度の高い症例ではODIの使用が勧められている。

Japan Low Back Pain Evaluation Questionnaire(JLEQ)

  • 慢性腰痛の評価法
  • 『RDQ』と『ODI』を参考につくられている腰痛における身体活動評価。
  • 数日間の腰痛の状態について、「痛み」「生活上の問題」「健康・精神状態」を全30問で解答してもらう。
  • 各項目は5段階あり、点数が高い程悪い状態を示す。

Japanese Orthopaedic Association Back Pain Evaluation Questionnaire(JOABPEQ)

  • 日本整形外科学会が作成した腰痛疾患の評価法
  • QOLの評価法である『SF-36』と、先ほど紹介した『RDQ』を原型にして作成されている。
  • 最近1週間の腰痛の状態、5因子(社会生活障害・心理的障害・腰痛機能障害・歩行機能障害)25項目に対して、自己記入式で回答する。
  • 因子ごとに0~100点の幅があり、値が大きい程良好であることを示す。
ここがポイント

最大のメリットは5つの因子を合わせて点数化するのではなく、5因子がそれぞれ独立しているので、個別評価が可能となる。

例えば、AさんとBさんはVASは同程度であっても、Aさんは腰椎機能障害が、Bさんは心理的障害が強い。

というように、腰痛に隠れている個別性が客観的に評価できる。

実際には…

『痛みを有する患者の活動評価法 関口ら』より引用

こんな感じになります。

※個人的には「JOABPEQが最も腰痛を定量化しやすいのでは?」と思っていますが、ただ、これらを点数化するにはエクセルを用いた専用計算ソフトが必要になってくるのでやや手間がかかります。

脊椎(頚部痛)疾患における活動量評価

neck disability index(NDI)

  • 頚部疼痛障害によるADL・QOL障害評価法
  • 『痛みの強さ』『頭痛の有無』『自己管理』『運搬』『仕事』『運転』『読書』『集中力』『睡眠』『レクリエーション』の10項目からなる。
  • 各項目0~5点で評価し、合計は50点満点である。
点数結果の解釈
  • 0~4点:障害なし
  • 5~14点:軽度障害
  • 15~24点:中等度障害
  • 25~34点:重度障害
  • 35~50点:完全な障害

股関節疾患における活動量評価

Japanese Orthopaedic Association Hip Disease Evaluation Questionnaire(JHEO)

  • 最近3カ月以内の股関節の状況について、21項目に対して自己記入式で回答する
  • 84点満点で、点数が高い程良好な状態を示す
ここがポイント

左右股関節で行う場合は、痛みの強い側の点数を採用する

膝関節(変形性膝関節症)疾患における活動量評価

Japanese Knee Osteoarthritis Measure(JKOM)

  • 変形性膝関節症に特異的な尺度として作成された評価法
  • 25項目に対して、自己記入式で回答する
  • 解答の選択肢は5段階評価になっており、点数が高いほど悪い

その他の活動量評価

pain disability assessment scale(PDAS)

  • 痛みによるADLの障害度を評価する。
  • 家事やセルフケア、移動に関する20項目からなり、各項目0~3点で、合計60点満点で評価する

【健常者と慢性疼痛患者のPDAS得点の比較研究】

⇒慢性疼痛患者が有意に高値を示すことが明らかになっている

痛みに関するオススメ書籍

最後に、痛みに関して勉強したいとき間違いなく読んでおいた方がいい書籍を2冊ご紹介しておきます。

ぜひ、この機会に手に取ってみてください。

ペインリハビリテーション

ペインリハビリテーション入門

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