【2023年最新】ペンフィールドの脳内一次運動野におけるホムンクルスの概念が刷新!

ホムンクルス

「脳内には綺麗にマッピングされたホムンクルスがあるよね」

これは、おそらく殆どのセラピストの皆さんの中である程度一致する見解だと思います。

用語解説『ホムンクルス』

ホムンクルスとは、大脳皮質一次運動野(M1)と一次体性感覚野(S1)において、身体の各部位がどのように表現されているかを示す概念です。

ホムンクルスは「小さな人」という意味で、脳の中に描かれた身体の縮小版のように考えることができます。

ホムンクルスの概念そのものは、1948年にカナダの神経科学者ウィルダー・ペンフィールドによって発見されました。ペンフィールドは、てんかん患者への手術中に、脳の運動野と感覚野を直接刺激して、患者が感じる反応を観察しました。これにより、彼は大脳皮質において身体の各部位が表現されている領域を特定することができました。

ホムンクルスモデルは、養成校における授業やセミナーなどの講義においても頻繁に使われる概念で、運動制御の話しだったり、痛みの話しだったりでよく登場しますよね。

で、これまでホムンクルスといえば「ここが手で、ここが足で、ここが指で…」というように綺麗に配列されているという印象が強かったと思います。

なんですが、実は今年2023年。

この概念がそろそろひっくり返りそうだという事実が発表されました。

この研究では、成人をはじめ、子ども、乳児、新生児、サルなどの画像データを用いて一次運動野を精緻にマッピングしました。

その結果わかったことをものすごーく簡単にまとめると…

「ホムンクルスって綺麗に配列されてるわけじゃないっぽい。円だよ、円。」

はい、こんな感じです。

要は、これまでのホムンクルスでイメージするあの並びですね。(上図)

今後はあの概念を少し刷新する必要があるようでして、そうなるといま現在特に教鞭を取られている先生方やセミナーに登壇される先生方は、この辺り確実にグリップしておいた方が良いです。

というわけでこの記事では、「ホムンクルスの概念が変わったというけど具体的にどんな風に変化したのか?」この辺りを3つのポイントに絞って解説していきたいと思います。

ぜひ、最後までご覧ください。

目次

【2023年最新】ペンフィールドの脳内一次運動野におけるホムンクルスの概念が刷新!

先ほどご紹介した論文を全文読みましたが、その中で重要なポイントになってくるのは以下の3点かなと思いました。

  • ホムンクルスのマッピングは縦列ではなく同心円状
  • 各領域(手や足)を強固に結びつける領域が存在すること
  • 特定の身体部位を動かす際の活動領域は1つではなく「2つ」あること

それではこの3点を一つずつ、できるだけ簡潔に説明していきます。

ポイント① ホムンクルスのマッピングは縦列ではなく同心円状

ペンフィールドが発見した脳内ホムンクルスは、運動野においても体性感覚野においても身体各部位が綺麗に配列されているような概念になっていました。

ところが、今回の研究で明らかになったこと。

それは、実はホムンクルスの配列って身体各部位が縦に並んでいるわけではなく『同心円状』になっているということです。

同心円状ってなに?

同心円状とは、ある中心点を起点に複数の円が重なっているような構造のことを指します。

図にした方がピンとくるかと思うので以下に示します。

同心円
ダーツの的とかをイメージすると分かりやすいかも

で、ホムンクルスの配列というのはまさにこんな感じになっているというのが刷新された概念になります。

具体的に、どのような感じになっているのかというと…

こちらです。

足の指が中心にあって、その周りを足関節や膝関節、股関節が取り巻いているような、そんなマッピングのされ方をしているというのがこの研究で明らかになりました。

実際に、従来のホムンクルスモデルと刷新されたホムンクルスモデルを並べた図がこちらです。

A somato-cognitive action network alternates with effector regions in motor cortex.Gordon EM et al.2023より引用

大きな違いは2点。

一つ目は、従来のホムンクルスは身体各部位が一つずつ配列されているのに対し、刷新されたバージョンでは、『足趾』・『手指』・『舌』は1つだが、それ以外の身体部位は2つずつあるということです。

これは、先ほどダーツの的で例えたようにホムンクルスのマッピングが『同心円状』になっているからこそ、中心部(足趾・手指・舌)を囲む身体部位は複数存在することになるんです。

二つ目の違いは、従来のホムンクルスには存在しない『Action body』と書かれてある領域が刷新バージョンにはあることです。

先生

操り人形の絵で示しているやつじゃ

実は、これこそが重要となる2つ目のポイントになります。

ポイント② 各領域(手や足)を強固に結びつける領域が存在すること

この研究では、参加者の脳内を分析し一次運動野のつながりを調べました。

その結果、足、手、口を制御する部分(1,3,5)と、それらの間に強くつながっている領域(2,4,6)が見つかったのです。

この発見は、従来のホムンクルスには表記がされていなかったものです。

A somato-cognitive action network alternates with effector regions in motor cortex.Gordon EM et al.2023より引用
補足

1:足の領域

3:手の領域

5:口の領域

この3領域(2,4,6)は、個々の大人のデータでも見られましたが、なんと11か月の乳児から見られ、9歳の子供になるとほぼ大人と同じようにな構造になっていました。

加えて、運動機能が維持されている人でも、重度の脳卒中によって一次運動野の大部分が損傷した場合でもこれらの領域を特定できました。

また、3つの領域は互いにつながっているだけでなく、認知制御に重要な役割を果たすとされるCONのいくつかの部分とも機能的につながっていることが明らかになりました。

用語解説『CON』

CONとは、“Cingulo-Opercular Network”の略で、『シングルオペキュラーネットワーク』とも呼ばれる。

これは、脳内の認知制御や注意、エラー検出、そして課題に関連する情報の処理に関与しているとされる機能的なネットワークの一つとされている。

CONは、前帯状回、後帯状回、前頭前皮質、前頭下皮質などの領域から構成されている。

要するに、先ほど図で見た操り人形の絵が示すものこそが『2,4,6』領域であり、ここは身体各部位の情報をつなげ、かつ運動制御に関する身体内部の状態を常に検知する役割を担っているということです。

先生

これが意味することは何かというと、脳内ホムンクルスの中にいわゆる『身体イメージ』のようなものが存在しているということを示しておるわけじゃ。

それでは、最後のポイントの解説です。

ポイント③ 特定の身体部位を動かす際の活動領域は1つではなく「2つ」あること

これに関しては、ポイント①が理解できていれば結構スッと入りやすいと思います。

従来のホムンクルスの概念では、例えば「膝を曲げる」という運動指令を出した場合、ホムンクルスでいう「膝の領域」が賦活することになります。

そして重要なのはここで、改めて以下の図を見ていただければわかるかと思いますが膝の領域は一つしかありません。

左:従来のホムンクルスモデルの概念でいくと『膝』は一つしかない

ところが、刷新されたホムンクルスモデルをご覧ください。

見ると、膝の領域は2箇所あるんです。

なぜ、刷新されたホムンクルスモデルには身体部位が2箇所あるのか?

はい、もうお分かりですね。繰り返しですが、それはホムンクルスのマッピングが同心円状だからです。

身体各部位が縦列に並べられているだけだと確実に一つしかないですが、刷新されたホムンクルスモデルでは(下肢であれば)足趾を中心に膝関節や股関節が同心円状に取り巻いている形になるので「一つ」ではないのです。

ホムンクルス2023まとめ

このように、ペンフィールドが提唱した従来のホムンクルスとはそこそこ大きな違いというのがいくつか発見されました。

改めて今回お伝えした中で、おそらくこれまでの常識と最も異なるのは『①ホムンクルスのマッピングは縦列ではなく同心円状』という部分ではなかろうかと思います。

要は、ただ身体各部位を並べりゃあいいってわけでもなさそうだということですね。

また、この発見によっておそらく今後ホムンクルスの人形も少し形が変わってくるんじゃないだろうかと個人的には思っています。

これまで当たり前だと思っていた知見は、今回のように世界中の偉い人たちによってどんどん刷新されていきます。

情報に乗り遅れないようしっかりアンテナを張っていきましょう!

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参考文献

1)A somato-cognitive action network alternates with effector regions in motor cortex.Gordon EM et al.2023

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