日々現場で働いていると、多くの患者様と関わる機会があると思いますが、おそらくその中でも最も多い症状それが『痛み』だと思います。
整形外科疾患であろうと、中枢&末梢神経疾患であろうと多くの患者様が『痛み』を患っており、それをどうにかしてほしいというニーズを聞く場面も沢山あるのではないでしょうか?
そこで、本日はこれまで痛みに関する参考書を大量に読み漁り勉強してきた僕がおすすめする「痛みについて勉強したいなら、とりあえずこの本を読めばOK!」というものを、数ある書籍の中から2冊ご紹介したいと思います。
【セラピスト向け】“痛み”に関する本ならこの2冊!
①ペインリハビリテーション
数ある痛みに関する本の中で迷った時に、手に取っておいてまず間違いない鉄板なのがこの本です。僕自身、「痛みに関して書かれているおすすめの本1冊だけ教えてください。」と言われたら、必ずこの本を紹介すると思います。
だからこそ、一番最初にこの本を挙げたというのもあります。
おすすめポイント① 基礎から評価・実践まで網羅的に解説
この本の目次をざっと紹介するとこんな感じです。
- 第一章
1.痛みの基礎
2.痛みと末梢組織
3.痛みの神経科学 - 第二章
1.痛みの発生メカニズム(末梢組織)
2.痛みの発生メカニズム(中枢組織)
3.難治性疼痛 - 第三章
1.基礎研究で活用されている痛みの評価
2.臨床で活用されている痛みの評価
3.脳機能イメージング法による痛みの評価 - 第四章
1.末梢組織に対するリハビリテーション
2.脳のリハビリテーション〜新たな潮流〜
3.ペインリハビリテーションの現状
4.リハビリテーションに必要な薬剤の基礎知識
目次を見るだけで、すごくワクワクするのですが…
ご覧いただくとわかる通り、第一章&第二章は主に痛みの基礎知識を中心に解説がされています。そのため、解剖学や生理学といった学問を中心とした構成となっています。
また、加えて後ほどお伝えするのですが、この本では『神経科学』の分野も含めて痛みの基礎知識とメカニズムも解説してくれているので、これまで筋骨格系のみで痛みを考えてきた方にとっては非常に新鮮なものとなっていると思います。
第三章と第四章では、主に痛みに対する『評価』と『リハビリテーションの実践』についての内容となっています。このペインリハビリテーションという本は、よく巷である「◯◯をすれば一発で痛み解消!」などと謳った系の本では一切なく、全ての解説が、世界中もしくは著者の皆様ご自身が行われてきた研究がベースになっています。
より信頼感が高く、根拠のあるリハビリテーションを提供しようと考えた時には、このようなアカデミックに振り切った本というのは非常に有益であると思います。
おすすめポイント② 神経科学の視点から痛みを考える
従来の痛み系の本というのは、どちらかといえば『筋肉』や『関節』といった筋-骨格系の切り口から解説されていることが多かったです。
しかし、このペインリハビリテーションに関しては目次を見ていただくと分かりますが、『神経科学』の視点が随所に詰め込まれています。特に、ぼく自身が一番の見どころであると考えているのは、第二章にある『痛みの発生メカニズム(中枢組織)』です。
これまで、脳機能から痛みのメカニズムを考察している本というのはほとんどありませんでした。しかし、これは周知の事実ですが“痛み”というのは最終的には『大脳皮質』に至った末に感じるものになります。
そうすると、筋肉や関節といった末梢組織の知識だけではなく、脳機能の分野からも痛みの発生メカニズムなどを考えていく必要があると思います。
痛みを神経系の分野から考えても臨床に活かすの難しくね?
だからこそ、第二章まででインプットした(神経科学的視点から見た)痛みに関する基礎知識を第三章にて実際に臨床で行える評価方法に落とし込み、第四章においてリハビリテーション実践に活かす考え方を学ぶのです。
これから、痛みについて勉強しようと考えている方は絶対に手元に置いて頂きたい。
そんな一冊となっております。
②ペインリハビリテーション入門
次にご紹介する本は、『ペインリハビリテーション入門』です。先ほどご紹介したペインリハビリテーションの著者である、沖田実先生と松原貴子先生が執筆されている本になります。
『入門』と書いているので、「こっちを先の読んだ方がいいの?」と思われるかもしれませんが決してそういうわけではありません。
時系列的に言えば、ペインリハビリテーション(黒本)が出版されたのが2011年、このペインリハビリテーション入門(白本)が出版されたのが2019年となっています。
じゃあ『入門』の意味は?さっきの本とどんな違いがあるの?
OKです。では、その違いについて説明しますね。
おすすめポイント① とにかく分かりやすい!
この本の最大の特徴、それは「とにかく分かりやすい」ことです。
前作のペインリハビリテーションは、文字数もページいっぱいに詰められ、研究報告が多めの内容となっており、どちらかといえば論文や教科書を日頃から読む方にとって読みやすいものになっているかもしれません。
しかし、このペインリハビリテーション入門では、『入門』という名の通りとにかく分かりやすさに振り切っています。そのため、前作よりも文字数がグッと絞られ、その分イラストや図解が多く添付されています。
この本の序章にも…
『ペインリハビリテーション入門』と題した初学者向けの書籍を上梓することとなった。
とあり、難しいものをより分かりやすく伝えるという『入門編』の意図が伝わってきます。
ただ、『分かりやすい』や『初学者向け』なんてキーワードを全面に押し出すと、こういう疑問を持たれる方もいるかもしれません。
なら、内容が薄いんじゃない?
いいえ、全くそんなことはないんです。
2冊とも持っている僕から言わせると、「この2冊は使用用途が多少異なる」と思っています。
おすすめポイント② より実践向きな本である
ペインリハビリテーション入門の目次をざっと紹介するとこんな感じです。
- Chapter1
1.痛みの定義・概念
2.痛みの神経生理学
3.痛みの発生メカニズム - Chapter2
1.痛みのリハビリテーション評価の考え方
2.感覚評価
3.身体機能・活動評価
4.情動・認知評価
5.社会的・QOL評価 - Chapter3
1.急性痛に対するリハビリテーション
2.慢性疼痛に対するリハビリテーション
3.その他のマネジメント - 付録
痛みのリハビリテーションで使用する評価票
この本は『入門』といえど、その内容は非常に濃いのが特徴です。
特に、Chapter2以降はより痛みのリハビリテーションを実践する際に必要な評価の考え方や方法を分かりやすく学ぶことができるので、非常に読み応えがあります。
方法論に関して、ここまで分かりやすく解説してくれている痛み関連の本はあまりないと思うので、先ほどご紹介した黒本で基本的な部分の詳しい知識を学び、そしてこの白本で臨床実践の進め方を学ぶことでより良いリハビリテーションが提供できるようになると思います。
この本は、ページの最後に『付録』がついており、この付録には何があるかというと…
臨床で用いる評価用紙です!
評価の方法とかはネットで調べればいくつかヒットしたりするんですが、『評価用紙』って意外と調べても見つからないんですよね…そんな悩みを一気に解決してくれるのがこの本です。
臨床において痛みの評価を行う際に用いる評価用紙が網羅的に添付されているので、欲しいと時はそれをコピーすれば現場で利用することが可能です。そのため、手元に置いておくと非常に心強いです。
何の評価用紙があるの?
というご質問をいただきそうな気がしたので、最後にどの評価用紙が添付されているかを一覧にまとめましたのでご覧ください。
- 感覚(痛みの性質)評価
・MPQ
・SF-MPQ
・SF-MPQ-2 - 身体機能・活動評価
・PADS
・BPI
・JOACMEQ
・NDI(痛みと痺れ版)
・NDI(痛み版)
・JOABPEQ
・ODI
・WOMAC Osteoarthritis Index
・JHEQ
・JKOM
・FIQ
・HAQ
・IPAQ - 情動・認知評価
・HADS
・BS-POP
・PCS
・FABQ
・TSK
・PSEQ - 社会的・QOL評価
・EQ-5D
・EQ-5D-5L
・SIP
上記に列挙している各種評価については、以下の記事にて解説しています。
ピンと来なかった方は、ぜひこの機会に勉強されてみてください!
コメント