スパインダイナミクス理論から『筋力』を紐解く

「片麻痺の病態って筋力低下なの??」

以前この辺りに対して問題提起を行いました。

☆合わせて読みたい☆
問題点=筋力低下を考える

そこで、その一つの解決策として「スパインダイナミクス理論」をご提案させて頂きました。

今日は、このスパインダイナミクス理論で用いられる「%MV」「WBI」この2つを用いて『筋力』の本質を考えていこうと思います。

目次

スパインダイナミクス理論から『筋力』を紐解く

スパインダイナミクス理論とは

スパインダイナミクス理論をお話ししていく上で最も大事な考えは…

「地球上のルールに基づいて運動を考える」

というのが大前提としてなければなりません。

地球という重力環境化の中で生きる私たちヒトは物理的な生物であるため、必ず地球上のルールに従って運動が遂行されます。

そのルールというのが「ニュートンの運動3法則」です。

重力✕運動

ヒトを含め、生物は必ず動きます。つまり“運動”を起こします。

しかし、地球上で物質が運動をする際には、必ず『重力』の影響を受けます。

この重力環境化で運動を行なわなければならないのですが、それには必要な原理原則があります。

それが今からお話しするニュートンの運動3法則ですが、これは以下の3つがあります。

1.慣性の法則

2.運動の法則

3.作用・反作用の法則

これら全ての法則における詳しい説明は専門書に譲りますが、今回はその内の1つである運動の第2法則「運動の法則」を見ていこうとおもいます。

「運動の法則」

物体に力が働くとき、物体には力と同じ向きの加速度が生じ、
その加速度の大きさは力の大きさに比例し、物体の質量に反比例する。

これが運動の法則の定義でありますが、少し詳しく表すとこのようになります。

質量mの物体に力Fが加わると、力のかかった方向に加速度aが生じる。

つまり…

【運動の方程式】F=ma

というものになります。

さて、ではこれをヒトにおける身体に置き換えるとどのようになるでしょうか。

F=力

力と言えば、ヒトに置き換えるなら「筋力」がこれに当たります。

そして、力を測るものと言えば、臨床でよく用いられるものは徒手筋力検査法(MMT)ですが、より数値として客観性を求めるにはどのようにしたらよいでしょうか?

スパインダイナミクス理論ではこの測定を「体重支持指数(WBI)」で評価しています。

m=質量

運動の発生には絶対的に「力」が必要です。

ヒトにおいてこの力の効果器といえば「筋肉」です。

しかし、力を発揮する筋肉の量がそもそも少なければ力は発揮できません。

『筋力は筋断面積の大きさに比例する』

さて、これは筋生理学に基く事実であり、筋力を発揮するためには‟筋断面積”、つまり筋質量(筋肉の量)が担保されていなければ発揮できません。

逆に言えば、「筋肉の量」を評価すれば発揮できる最大の筋力は分かるということです。

スパインダイナミクス理論ではこの『筋肉の量』の評価に身体総蛋白質量(%MV)を用いています。

WBIと%MVの関係性

では以下にWBIと%MVの関係性を見てみたいと思います。

『Spaindynamics療法』より引用

この表は本来のWBIと%MVの関係性が示されています。

例えば%MVが82%であればWBIは130出力されると考えてよいでしょう。

(筋肉の量が82%あるなら、筋力は130発揮できますよ~ってこと)

しかしここで問題になるのが

筋量(%MV)は担保されているにもかかわらず、筋力(WBI)が発揮できない場合です。

事実このような人って沢山存在していて…

例えば%MVは82%あるにもかかわらず、WBIは94だったりするわけです。

なぜこういった両者間に解離が生じるのか。

この答えの一つとしてスパインダイナミクス理論では「身体における衝撃吸収耐応能の障害」を挙げています。

今回は割愛させていただきますので、詳しく知りたい方は論文や専門書などをご覧ください。

WBIと%MVの計測方法

では次にこのWBIと%MVを一体どうやって計測するのか。

論文などを読むと

●WBIはBIODEX(バイオデックス)

●%MVはInBody(インボディ)

と言われる機械で計測していますが、機器がない場合でも代替え方法はいくつかあるようです。

WBIと%MVの臨床応用

さて前置きが長くなってしまいましたが、今回のテーマである『片麻痺と筋力低下』についてお話しします。

例えば

➪片麻痺患者様の%MVを計測したとしましょう。

その際に、“筋量”を表す%MVが仮にかなり低い値であった場合。

これだと、そもそも筋肉量が少ないので「筋力低下である」と言うことが可能かもしれませんが、逆に%MVが高い数値であった場合。

これは、本来その人の筋肉の量自体は担保されているということになり、脳卒中になったことによってコーディネーションが欠落し、筋力が発揮されないといった問題と考えられます。

つまり、こういった場合に筋力増強訓練を実施するというのは筋量はあるのにひたすらさらに筋量を増やす訓練を行っていることになるのではないかと考えています。

%MVは高いのにWBIが低い(筋肉量はあるのに力が発揮されない)

となれば、仮に片麻痺を呈していても筋肉の量自体は担保されているので、筋肉量を向上する介入ではなく、コーディネーションを促進するような介入した方が良いのではないかと思います。

廃用の評価

また、これは廃用症候群の評価にも有用ではないかと僕は考えているのですが、よく

「廃用の影響で・・・」

なんていう言葉を聞きますが、%MVを計測すれば本当に廃用かどうかは数値を確認すれば分かります

臨床応用の課題

さてここまで、WBIや%MVを利用して筋力低下や廃用症候群を明確にしていくための評価法としてお伝えしてきましたが、臨床において片麻痺患者様を評価するにあたりこれらを実現するための課題を考えたいと思います。

【課題】

・インボディのレバーを片麻痺患者様がそもそも握れない(痙縮や弛緩性麻痺のため)

・姿勢制御コントロールが困難でインボディの上に乗れない

・WBIを図る際に、麻痺側と非麻痺側での出力の違いが大きいためどちらに合わせるのかという問題

考えていくと、上記のような課題が浮かんできました。

※一番上の片麻痺患者様がインボディのレバーを握れない問題は、現在背臥位でも測定できる機器があるそうです。

まとめ

現在、筋力低下や廃用といった言葉が沢山でてくる時代に、スパインダイナミクス理論で用いられているWBIや%MVは筋力や筋量といったものを数値化し可視化できるものとして大変有用であると個人的には思っています。

よくよくは、入院直後にどの患者様もまず%MVとWBIを計測し、入院時と退院時の効果判定の指標としてとても利用できるのでは?と思っています。

目に見えない筋力を出来るだけ可視化し、病態を『筋力低下』という一言で片づけないようにしたいものですね。

参考文献

・Spaindynamics療法

・姿勢制御アプローチ.Spaindynamics理論による慢性疼痛の捉え方

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