力を抜くコツを科学的に解説してみた

力を抜くコツを科学的に解説してみた

力が抜けない患者さん

今日のテーマはずばり…

「力を抜いている時の脳の働き」です!

なぜ、今回このテーマをチョイスしたかというと・・・

臨床の中で”力を抜いているつもりなのに全然力を抜けていない患者さん”って非常に多くはないでしょうか?

僕は、この現象に結構遭遇する場面が多いと感じるのですが皆さんはいかがですか?

もし同じような疑問を持たれている方がいましたら、今日はその解明にわずかにでもご参考になれば幸いです。

『力を抜く』時に働く脳領域

力を抜く時に働く脳領域について解説させていただくにあたって、今回参考にさせていただいた論文はこちらです。

Activities of the Primary and Supplementary  Motor Areas Increase in Preparations and Execution of Voluntary Muscle Relaxation:An Event-Related fMRI Study.toma,1999

この論文は、「随意的に筋を弛緩している時にどこの脳が活動しているのか?」というのを磁気共鳴機能画像法(fMRI)を用いて観察した研究です。

磁気共鳴機能画像法(fMRI)とは

磁気共鳴機能画像法(fMRI)というのは、MRI装置を用いて脳を侵襲せずに脳活動を調べる方法です。近年このfMRIを用いることで、「さまざまな運動中に一体どこの脳領域が活動しているのか?」というのが明らかになってきています。

詳細に関しては、こちらの記事で分かりやすく解説してくれているのでご興味ある方はご覧ください。

東北福祉大学

東北福祉大学の「社会的・職業能力育成プログラムに資する認知・脳科学的エビデンス情報提供基盤の構築」について掲載しています…

研究方法

今回の研究の対象者は健常成人8名で、対象部位と課題は『右前腕筋群の収縮と弛緩を60秒間繰り返す』というものでした。

なお、この収縮・弛緩の運動のタイミングは被験者の好きなタイミングで行いました。そして、この運動中にfMRIで脳活動を記録することで、収縮時と弛緩時の脳領域を確かめていきました。

結果

では早速ですが、結果の方をみていこうと思います。

Activities of the Primary and Supplementary  Motor Areas Increase in Preparations and Execution of Voluntary Muscle Relaxation:An Event-Related fMRI Study.toma,1999より引用

ここに示す図は運動課題実行中の脳活動を表したものになります。

この脳活動を見ると、発火している領域は・・・

『一次運動野』『補足運動野』です。

M1というのは「Primary motor cortex:一次運動野」の略称です。

SMAというのは「supplementary motor area:補足運動野」の略称です。

 

筋収縮と弛緩の際には、M1とSMAが関与する。

おそらく養成校等で「筋肉に対して収縮するよう運動指令を出すのが一次運動野である」と習ったかと思うので、“筋収縮” であればなんとなく一次運動野が関与するのをイメージしやすい方は多いのではないでしょうか?

しかし、実際には“弛緩”の際にも一次運動野は活動するようです。そして一次運動野に加えて同時に働く脳領域というのが『補足運動野(SMA)』と言われる脳領域です。

そして、より筋弛緩の時より強く働いていた脳領域というのがあって、それが『presupplementary motor area:前補足運動野』と言われる部位です。

※略称:pre-SMA

この前補足運動野ですが、この脳領域は1995年にLudersという人が大脳皮質に電極を用いて電気刺激を行った研究があるのですが、その際に随意運動が停止するような“陰性運動野”というのが補足運動野の前方で発見されているのです。

そのため、今回pre-SMAが弛緩時に活性化した理由としてもこの知見が関係しているのではないかということが本論文の考察にて述べられていました。

力を抜く脳領域をまとめ

今回、『筋弛緩時はどの領域の脳が働くか』といったテーマで話しを進めてきましたが、結論としては前頭葉にある一次運動野補足運動野といった脳領域であることが明らかになりました。

ただ、この中でも最も筋弛緩に関与する領域は前補足運動野という領域でした。

力を抜くためにできるリハビリのコツ

では、最後に…

ここまで見てきた知見を一体どうやって臨床応用するか。ここが最も大切なところですよね。

僕らはセラピストであり、最終的には患者様に対してこのような研究から分かったことを応用していかなければなりません。そのためには、ここまで得た知見をどのようにしたら臨床に繋がるのか、この部分を強烈に考える必要があると思っています。

一つだけ、参考程度ではありますが今回の知見を臨床に応用する方法論をご紹介して締めたいと思います。

その方法論とは…『運動イメージ』です。

なぜならば、近年運動イメージを行う時に最も働く脳領域が『補足運動野』であるということが明らかになってきているからです。

つまり、運動イメージを用いることによって補足運動野がきちんと活動している状態をつくることができれば、あくまで仮説レベルではありますが、力を抜く練習として利用できるのではないかと思います。

最後に

今回、論文を読んでみて思ったことは「力を抜く」って結構難しいスキルである。ということです。

現に臨床でも、どんなに力を抜くように指示しても抜けない方は沢山いますから、やはり「力を出す」ことも難しいですが、同様に「力を抜く」というのも、同じように僕らは考えていかないといけないテーマだと思います。

セラピスト
◯◯さん、力を抜いて下さいねー!

このような指示を私たちは安易にしがちですが、実は患者様にとってこの指示というのは、案外難易度の高いものである可能性があります。

この辺りにも想像力を膨らませながら、リハビリテーションをデザインできると素敵だと思います。

 

スポンサーリンク